岸田首相、「法の支配の貫徹」強調 国連未来サミットで演説 分断の克服呼びかけ

【ニューヨーク=平田雄介】岸田文雄首相は22日(日本時間23日)、戦争や気候変動、デジタル技術の悪用といった地球規模の課題の解決を目指し、効果的な多国間協調を模索する国連の「未来サミット」で演説した。ウクライナ戦争や中東危機で深まった国際社会の分断と対立を乗り越えて連携するには、国連憲章を尊重し、「法の支配を貫徹することが最も重要だ」と訴えた。

「世界が歴史の転換点にある中、現在と未来の世代のため、行動を起こさなければならない」。首相は演説でこう語り、多様な価値観を持つ国々が共に行動する際、根本的な指針となるのが「法の支配だ」と説いた。

念頭にあるのは、昨年5月、地元・広島で開催した先進7カ国(G7)首脳会議での各国首脳との対話だ。ロシアのウクライナ侵略を巡り、対応に温度差のあるG7やブラジル、インド、ウクライナの各国首脳と、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序こそが、持続可能な開発を可能とし、繁栄をもたらす」との見解では一致した。

一方、国連総会は18日に、日本も賛成してイスラエルの不法なパレスチナ占領の1年以内の終結を求める決議をしたばかり。首相は未来サミットでの演説で、力による一方的な現状変更の試みは「世界のどこであれ、許されない」と述べた。名指しは避けたが、米国の同盟国に対しても筋を通す姿勢をみせた格好だ。

首相はまた、パレスチナ自治区ガザで戦闘が始まった昨年10月以降、米国とロシアが4回ずつ、中国が2回、拒否権を行使した安保理について、「信頼回復の必要性を痛感している」と発言。演説に先立ち、首脳レベルで初めて「安保理改革の緊急の必要性」を明記した成果文書「未来のための協定」が採択されたことを歓迎した。

この協定は、拒否権行使の「抑制」を促し、安保理の定数15からの「拡大」を明記。2030年までの国際機関への途上国の参加拡大を求めるSDGs(持続可能な開発目標)に「配慮」することで、改革の目標年を間接的に示している。

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