自民党総裁候補に問う 威圧強める中国にどう立ち向かうか 言葉だけでなく覚悟持つ人物を

軍事的、経済的威圧を強める中国の脅威にいかに立ち向かうか。「政治とカネ」の問題に注目が集まる自民党総裁選だが、最大のテーマとも言っていい。

「9人の候補者の討論を見ていても、どうやって日本の安全を守るかの議論が不十分だ」と語るのは自衛隊OBだ。

そうした中、中国広東省深圳市で日本人学校に通う小学生が刺殺された。林芳正官房長官や上川陽子外相は選挙運動を中断し、事件の対応にあたるべきだった。

襲撃事件はこれが初めてではない。6月にも江蘇省蘇州市で日本人学校のスクールバスが襲われた。今回も偶発的な事件ではないのだ。だが、6月の事件も含め中国側は説明すらしていない。

中国に進出している企業からは不安が高まっている。当然であろう。進出企業は社員や社員の家族の命の危険をさらしてまで中国でビジネスを続ける意義があるのかを自問自答すべきだろう。

今回の事件が起きるまでの与党の動きもおかしなものだった。8月末に超党派の日中友好議員連盟を率いて訪中した二階俊博元幹事長は王毅外相との会談で、日中間で修学旅行を推進することを提起し、王毅氏も賛同したという。

中国国内では「日本人学校の運動会は軍事訓練」「卒業後はスパイになる」などの偽情報が飛び交うが中国当局は取り締まろうともしない。なぜ二階氏は若い世代の交流より先に邦人の安全を強く求めなかったのか。

二階氏は「木を植え、種をまき、井戸を掘る」との気持ちで日中外交に尽力してきたと自負するが、習近平国家主席は会おうともしなかった。同じ時期に訪中したサリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)には会ったにも関わらずだ。

「日中間で人間関係に頼る時代は終わった。私たちは目を覚まさないといけない」と語るのは元政府高官だ。単なる強い言葉だけではなく、覚悟を持って戦略的に中国に向き合える人物に総裁になってほしい。(特別記者 有元隆志)

ジャンルで探す