反撃能力・少子化対策で結果示すも…離れる民意 岸田政権1000日、憲法改正は道半ば

29日に首相在職1000日を迎える岸田文雄首相(自民党総裁)は、日本の安全保障政策の歴史的転換となる反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を決断し、内政では「次元の異なる少子化対策」などに取り組んできた。だが、党内の不祥事などで国民の支持はむしろ離れている。総裁任期中の実現を掲げた憲法改正も道半ばだ。

「未来を切り開くための政策を進め、わが国の安全と国民の命を守り抜くために取り組んできた」。林芳正官房長官は28日の記者会見で、政権発足1000日にあたり、こう強調した。

首相は令和3年10月の就任以来、歴代政権が積み残してきた課題に対処してきた。4年末に、防衛力強化に向けて国家安全保障戦略など「安保3文書」を閣議決定。反撃能力の保有を明記し、防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に倍増する方針を打ち出した。

外交面では、中国の軍事的脅威の高まりやロシアのウクライナ侵略を受け、同盟国や同志国などとの連携を強化。議長を務めた5年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)はゼレンスキー大統領を招待し、「法の支配」に基づく国際秩序の重要性を発信した。

安倍晋三、菅義偉両政権が苦しんだ新型コロナウイルス禍に関しても、5年5月に感染症法上の位置付けを5類に引き下げ、平時への移行に取り組んだ。エネルギー政策も原子力発電所の再稼働などを進めた。

だが、身内の不祥事への対応によって政権の体力は風前のともしびだ。

4年には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題などで閣僚が次々と辞任に追い込まれた。昨年からは自民派閥の政治資金パーティー収入不記載事件が直撃。事件を受けた政治資金規正法改正も世論の評価は厳しい。

首相は改憲や安定的な皇位継承などに取り組む構えを崩していないが、求心力が低下する中、思うように進められるかは見通せない。(沢田大典)

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