静岡県知事選告示、与野党対決に 補選全敗の自民は正念場 立民「勝利を」

9日告示された静岡県知事選は与野党対決の構図となった。4月末の衆院3補欠選挙で全敗した自民党にとっては正念場の選挙となる。ただ、派閥パーティー収入不記載事件が発覚し、静岡県選出の自民議員の不祥事が相次いだ中で厳しい戦いとなることは必至だ。連敗を懸念する党内からは勝負に出た執行部の対応を疑問視する声もあがる。

知事選は川勝平太知事の辞職に伴う。自民は元副知事で無所属新人の大村慎一氏を、立憲民主党と国民民主党は元浜松市長で無所属新人の鈴木康友氏をそれぞれ推薦した。

自民は大村氏を表立って推すことに慎重だった。不記載事件の余波で大村氏が無党派層の支持を失ったり、敗戦で岸田文雄首相(自民総裁)の政権運営に支障が生じたりする懸念があった。主戦論が根強い県連が4月23日に大村氏の推薦を党本部に要請した際、茂木敏充幹事長は「よく相談しながら考えていきたい」と応じるにとどめた。

だが、その後も県連から支援要請があり、党の調査で「投開票日までに拮抗する」という情勢が判明したことから告示直前に推薦を発表した。自民幹部は「推薦を見送って負けた場合でも『自民の不戦敗』といわれる。ならば勝負するしかない」と語る。

ただ、勝利への道は険しい。鈴木氏は前回知事選で自民が擁立を検討しただけに保守層にも浸透。また、大村、鈴木両氏から推薦を求められた公明党は自主投票を決めた。塩谷立元文部科学相(衆院比例東海)が不記載事件で離党し、宮沢博行前防衛副大臣(同)が女性問題で離党・議員辞職に追い込まれるなど静岡選出議員の不祥事も重荷となる。

自民重鎮は「『負けついで』の推薦決定だ。安倍晋三政権の時はもう少し勝ちにこだわっていた。首相や茂木氏は何をしたいのかが見えない」と愚痴る。

過去には地方選の敗戦が政権崩壊につながったケースもある。菅義偉前首相は令和3年4月の衆参3補選・再選挙で不戦敗を含めて全敗し、さらに地元の横浜市長選で支援した閣僚経験者が敗れ、総裁選不出馬に追い込まれた。静岡県知事選を落とせば岸田首相も9月の総裁選を前に交代論が浮上する可能性がある。

一方、立民の長妻昭政調会長は9日の記者会見で、「まっとうな政治を実現したいと地方自治においても思っている。何としても勝利したい」と述べた。

国民民主の古川元久国対委員長は8日の会見で、知事選の結果が衆院3補選と同様、国政にも影響を及ぼすとの見方を示した。

3補選で立民の勝利に貢献した共産党は県委員長の森大介氏を擁立した。

このほか、諸派新人の政治団体代表、横山正文氏、いずれも無所属新人の自営業、村上猛氏と会社社長、浜中都己氏も立候補している。(永井大輔、深津響)

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