川勝氏、会見で替え歌も「平太のおじさん♪あなたの住まいはどこ~」 今後は「仙人生活」

数々の発言が注目を集めてきた静岡県の川勝平太知事が9日、退任の記者会見に臨んだ。今後の政治活動の予定については「ありません」ときっぱり。同日告示された県知事選にも距離を置く考えを示した。「非常に深い愛情を静岡県に持っている」と強調し、引退後は標高1000メートルの浅間山(長野県、群馬県)の山小屋で仙人生活を送る計画を明かした。具体的なイメージがつかみにくい仙人生活について、童謡の替え歌で伝えるなど雄弁で奔放な〝川勝節〟は最後まで健在だった。

訪れてよし、住んでよし

「理想郷は心の中にある。それを一貫して持ち続けられたことは、それができる確信があるからだ」

川勝氏は平成21年の知事選で初当選した際、「静岡を日本の理想郷にする」と発言したといい、会見でその成否を問われると、禅問答のようにこう述べた。さらに「理想郷は理念。富士山が世界文化遺産であるように世界クラスの地域になれる可能性を持っている。ウクライナやガザにおける惨状に比べ、ここは訪れてよし、住んでよし」と発言した。

川勝氏を巡っては任期中、静岡工区の着工を認めないなどリニア中央新幹線への対応が物議を醸した。後世に評価されるかを尋ねられると「『山懐に抱かれる』という言葉がある。富士山と赤石山脈(南アルプス)に抱かれて祖先から将来世代に命をつないでいく当たり前のことをしたつもりだ」と主張した。

「もちろん人の命も大切だが、人の命を育むさまざまなもの、お茶も、お酒も、お花も、農作物も、生き物も守るというのが人間活動と生態系のバランスを考えるバイオ・スフィア・リザーブの基本的なコンセプトだ。先生はほかの生き物だ」と重ねて説明した。

一に修行、二に修行、三に修行

知事退任後については「仙人になる」と説明した。

「10日の日が明けると常時自由人になる。自由は規律と合わせないと放漫になる。常在道場、一に修行、二に修行、三に修行は変わらない。山の中でそういう生活に入ろうと思っている」と語った。退職金とボーナスについては「受け取る」とした。

「仙人」の表現に記者団が不可解な表情を浮かべたのか。川勝氏は突如、小学校1年の学芸会で俳人の小林一茶役として歌ったという童謡「一茶さん」の替え歌を披露する。

「『平太のおじさん♪平太のおじさん♪あなたの住まいはどこですか~。は~い、は~い、私の住まいは信州信濃の山奥の浅間の山の森の中♪小鳥とお話しして過ごす~』。それがイメージしている仙人の姿だ」

生活拠点は浅間山の標高1000メートルの林道の傍らの山小屋を想定している。「人間到る処青山有り。山小屋で万巻の書と向き合い、読み直す意思だ」と語った。

15年の知事生活の反省を問われると、令和3年7月に熱海市で28人が犠牲になった大規模土石流を挙げた。「痛恨の極みだ。現場近くに複数回行ったにもかかわらず、違法の盛り土がされた現場を見る機会をどうして持てなかったのか」と悔いをにじませた。(奥原慎平)

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