《立っているのもやっとの状態で…》二階俊博・元幹事長が三男・伸康氏の投票日前日決起集会で見せた“最後の悪あがき”の姿、締めくくりに「90度のお辞儀を10秒以上」

三男・伸康氏の決起集会に現れた二階俊博氏(時事通信フォト)

 総選挙の最大の注目選挙区となったのが「二階王国」と呼ばれた和歌山2区だった。二階俊博・元自民党幹事長が引退して後継者の三男・伸康氏が出馬し、当初は当選確実と見られていた。ところが、裏金問題の処分を受けて自民党を離党した和歌山の実力者、世耕弘成氏が参院から鞍替えして無所属で出馬すると情勢は一変。盤石に見えた伸康氏の地盤はどんどん切り崩され、大差で敗北。比例復活も果たせず落選となった。

【写真】演壇に手をつき、立つのもやっとな様子の二階俊博氏。90度のお辞儀を10秒以上し挨拶をする様子など

 王国の落城前日、劣勢が伝えられるなか、それまで一度も地元入りしていなかった父・俊博氏が支援者との決起集会に現われ、声を震わせながら息子への支持を訴えた。本誌は俊博氏の“最終日の姿”を捉えた。

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〈投票箱のふたが閉まるまで、……〉ステージ上にはそう書かれた大きな看板が掲げられている。ギリギリまで票集めをしたいという切羽詰まった情勢がにじみ出るようなスローガンだ。

 館内では、「まだ勝ってはいません! ギリギリの戦いです! どうか、お手元の携帯で知人・友人に、二階伸康への投票をお願いしてください!」と何度もアナウンスが繰り返されていた。

 選挙戦最終日の10月26日午後19時30分、和歌山県の御坊市民文化会館で開かれた伸康氏の決起集会には約200人(定員は900人)の支持者が集まっていた。候補者の伸康氏が選挙運動を支えてくれた選挙ボランティアに御礼を伝え、投票を最後の最後まで訴えるために開いたもので、ステージ上には揃いの青いシャツを着た50人ほどの選挙スタッフが並び、演壇の横にタスキ、鉢巻き姿の伸康氏が立つ。

演壇に手を付き、立つのもやっとの様子

 集会の最後、伸康氏の挨拶の後に登壇したのが俊博氏だった。アナウンスがあると、おぼつかない足取りで、ゆっくりと壇上のマイクに向かった俊博氏。演壇に手を付き、立つのもやっとの様子で挨拶した。

「新人ですから不甲斐ないところがあると思いますけど、自由民主党の公認を頂戴しているわけですから、この上皆さんからもう少々押し上げていただいて、和歌山育ちのこの若者を国政に送っていただくチャンスを与えていただく。こういうところに来ていると思います。

 残された時間はわずかでございますが、このわずかな時間が勝敗の分かれ目でございます。ここで勝負を決めなければなりません。皆様のお力添えをいただき、しっかりそのご恩を返すことができるよう、まさにふるさとのために……本当にふるさとを良くするのは、ここに、会場にお集まりの有力な皆さんと、壇上に並んでいる皆さんの力を結集して、はじめてそのことが成り立つわけでございます」

 途中、言いよどんだり、呂律がうまく回らないことに苦しみながらこう締めくくった。

「大変お忙しい中、この会場にお集まりいただいてありがとうございます。私からはこれ以上申し上げることはございません。精一杯頑張って、ひたすら皆さんのご厚意にお答えすることができますように、あと残された時間は限られておりますが、皆さんの温かいお気持ちにお答えするようにさせていただきたい。そのためにもう一息のご支援、ご指導よろしく申し上げます。大変長い間、ありがとうございました」

90度のお辞儀を10秒以上

 そして拍手の中、俊博氏は10秒以上、来場者に90度のお辞儀を続けた後、演壇の縁をつかんで体を移動させていく。相当体に無理をしながら、三男のための“最後のお願い”に登壇したことがうかがえた。地元の自民党地方議員が語る。

「二階選対には『このままじゃ負ける』という空気が日に日に強まっていった。二階先生の引退で、頼みにしていた選挙マシンが思うように動かない。建設業者なども今回の選挙は板挟みだった。二階先生には恩があるけれども、引退だからこれからは和歌山で世耕さんの力が大きくなる。昨年の県議選でも二階さんの懐刀と言われた県議が共産党候補に苦戦し、世耕さんに近い市議たちが反二階で動いたからだと言われていた。

 いつの間にか地盤がどんどん切り崩されていたんです。これだけの大差をつけられたら、この先、伸康さんが世耕さんから地盤を取り戻すのは難しいでしょう。もう形勢挽回できないとわかっていた最終日にあえて二階先生が地元に顔を出して挨拶したのも、地盤を失う前に長年お世話になった支持者にお別れと感謝を示したかったのだと受け止めました」

 まさに“落城”の光景だった。

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