自民党が地方議員にバラ撒いていた「地盤培養資金」 司法当局は“選挙買収で摘発の対象になりうる”と判断基準を転換

自民党有力議員の多くが、選挙の年に大金を地元にバラ撒いていた(写真/共同通信社)

 自民党の裏金事件ではっきりわかったことは、彼らの異常なまでのカネ集めへの執着だ。なぜそこまでするのか──選挙のためだろう。選挙時に地元議員にカネを配って買収の罪に問われる議員も出てきたが、自民党有力議員の多くも、選挙の年に大金を地元にバラ撒いていることが判明した。【前後編の前編。後編を読む

【ランキング】地元へ多額の支出 2021年総選挙「バラ撒き額」が多い議員TOP20

陣中見舞いがアウトに

 繰り返される政治資金をめぐる事件。問題の根底にあるのは、自民党の「バラ撒き選挙」だ。政治資金研究の第一人者である岩井奉信・日本大学名誉教授が指摘する。

「自民党は、地元に根を張る地方議員が有権者を組織化していて、その支持者の票を国会議員が選挙で得る構造になっています。そのため国会議員は、地方議員らに『よろしく』の意味を込めて寄附を行なう。こうしてバラ撒くカネは『地盤培養資金』と呼ばれる」

 公選法では、「法定選挙費用」として選挙区ごとに候補者が選挙に使える金額の上限が定められている。収支は選挙運動費用収支報告書として提出しなければならないから、本来はそれ以上使ってはいけないはずだ。

 だが、自民党の国会議員は選挙前になると、選挙費用とは別に、地元の地方議員などが代表を務める政治団体や党の地域支部に政治資金を寄附し、法定選挙費用を超えるカネをバラ撒く。それでも、政治資金収支報告書に「通常の政治活動費」、あるいは地方選挙の「陣中見舞い」として記載すれば合法と見なされてきた。

 河井克行・元法相夫妻の2019年参院選での選挙買収事件では、河井氏が妻・案里氏の選挙のために広島の地方議員ら約100人に約2900万円を配り、大半は裏金で「買収」と判断された。

潮目が変わった柿沢未途の選挙買収事件

 そしてこの3月14日、注目される判決が下った。柿沢未途・元法務副大臣の選挙買収事件で東京地裁が、有罪判決を言い渡した(確定)。

 事件は昨年4月の江東区長選をめぐって、柿沢氏が「地盤固め」のために系列候補(木村弥生・前区長)を支援し、自民党区議など10人に合計約220万円を提供した行為が買収に問われた。柿沢氏は当初、資金提供は同日の区議選の候補への「陣中見舞い」と主張し、受け取った区議の一部も選挙運動費用収支報告書に柿沢氏からの20万円を「陣中見舞い」と記載したが、東京地検特捜部は柿沢氏や受け取った区議らを区長選に関する選挙買収容疑で起訴した。前出の岩井教授が言う。

「これまで当事者が陣中見舞いや政治活動費の寄附と主張すれば『培養資金』とみなされてセーフだったが、今回、特捜部は買収と判断して起訴した。政治資金収支報告書に『政治活動費』などと記載していても、票のとりまとめの意思が認定されれば、選挙買収で摘発の対象になりうると判断基準を転換したわけです」

 後編では、2021年総選挙で地元への「バラ撒き額」が多い自民党議員ランキングを紹介する。

後編に続く

※週刊ポスト2024年4月12・19日号

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