防衛省、島しょ国支援を強化=南太平洋、中国進出に対抗

最近の島しょ国安保協力



防衛省が太平洋島しょ国の人材育成や技術協力など「能力構築支援」を強化している。今年からは軍を持たない国でも、警察など治安機関に支援対象を広げた。南太平洋への軍事進出を進める中国に対抗する狙いがある。岸田文雄首相が16~18日に島しょ国の首脳を東京に招いて開く「太平洋・島サミット」で安全保障・防衛協力の深化を表明する方向だ。
木原稔防衛相は2日の記者会見で「法の支配に基づく開かれた国際秩序を維持、強化する上で重要な国々だ」と強調した。防衛省は6月下旬、島しょ国などの軍・警察関係者を海上自衛隊の護衛艦「いずも」に乗せ、米領グアムから日本まで航海する「乗艦協力プログラム」を実施。艦内で海洋法セミナーや訓練視察を行い、来日後は同省で災害対処や女性参画の研修会を開いた。
島しょ国14カ国のうち軍隊保有国はフィジー、パプアニューギニア、トンガの3カ国。防衛省は1月、軍以外への2国間協力として初めてソロモン諸島の警察に不発弾処理の教育を実施。5月にトンガ海軍に船外機のメンテナンス支援を行った際、同国から軍以外の治安機関にも同様の支援を求められ、現在対応を検討中だ。
日本はオーストラリアから多くの資源や食料を輸入し、南太平洋はシーレーン(海上交通路)として重要。近年は米中両国の覇権争いの最前線でもある。ソロモン諸島は2022年に中国と安保協定を締結。1月にはナウルが台湾と断交して中国と国交を樹立するなど、中国が存在感を増している。
中国が島しょ国に拠点を確保すれば、日本は南方からの脅威にさらされることになる。自衛隊の既存の警戒管制レーダーなどはロシアや中国がある大陸側を重点的に監視。防衛省幹部は「国防の前提が変わってくる」と危機感を募らせる。
島しょ国は軍や警察の規模も小さく、大国間競争に深入りしない「バランス外交」の傾向も強い。乗艦協力の参加国は、初開催だった昨年の10カ国から7カ国に減少。今回、参加を非公表にするよう求めた国もあった。中国への配慮があった可能性がある。
防衛省は3月、島しょ国との防衛相会合を対面で初めて東京で開いた。ハイレベル交流や艦艇・航空機の親善派遣を重ね、防衛大学校での留学生受け入れも予定する。政府関係者は「継続的な関与が重要だ」と語った。

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