札幌市が水素燃料の公共交通構想 2030年の運行目指し走行テスト
北海道新幹線の札幌延伸を見据え、札幌市が都心部で新たな公共交通システムの検討を進めている。目玉は、「創成川以東地域」と「大通・すすきの地区」を水素を活用した車両でつなぐ構想だ。2030年の本格運行を目指し、今秋に走行テストがあった。
10月5日早朝、アコーディオンのような部品でつながった車両(約18メートル)が、札幌駅前通から北3条通へゆっくりと右折していった。東京や福岡など他都市ではみられる「連節バス」だが、札幌での走行は初めて。西日本鉄道(福岡)の既存車両で都心部の様々な通りを行き来しながら、問題なく走行できるか検証が続いた。
「停車、右折、左折……。札幌の街の道路環境は、連節車両の運行に支障なしと判断できた。得られた知見をいかしながら、来年度の社会実験に向けて着実に検討を進めてまいりたい」
テスト初日、札幌市まちづくり政策局・和田康広公共交通担当部長は手ごたえをにじませた。検証結果を参考に今後、具体的な路線選定を進めるという。
都市交通課によると、新幹線延伸や再開発で、市中心部を流れる創成川以東地域は人の動きの変化や交通需要の高まりが見込まれている。そこで、「創成川以東地域」と「札幌駅・大通・すすきの地区」の主要な駅や商業・観光施設を輸送力の高い連節車両(定員約120人)の定期路線運行で結ぶ。路線の想定は2系統で、乗降場所は「新幹線東改札口」や「JR苗穂駅」などを検討している。
また、あわせて周辺一帯でAI(人工知能)を活用して予約に応じて運行する中型・小型車の「デマンド交通」も始める計画だ。従来の路線バスとは異なり、運行ダイヤやルートは利用に応じて決まる。予約時のみ、事前に設定した乗降ポイント間を移動できる仕組みで、既存の駅・停留所や商業・観光・医療施設などへの利便性を高める。
いずれも環境負荷の少ない水素燃料電池車両を導入する。大通東5丁目で整備中の水素ステーションと併せて、札幌市をあげて取り組む「水素利活用のリーディングプロジェクト」に位置づけ、車両や停留所、案内サインなどをトータルデザインし、魅力的な景観を生み出す。今月19日には有識者が初めての検討会議を開く予定だ。
交通政策と都市ブランド向上の両方を狙う計画だが、先行きには懸念もある。
11/18 07:00
朝日新聞社