乗り場どこ!? 豪快な「路面から電車に乗り込む」駅なぜ存在 ホームなし 時刻表は意外な場所に

道路を走る路面電車といえど、停留所の多くにはプラットホームや屋根などがあって停留所だと認識できます。しかし中にはそれらがなく、道路から直接乗り降りするケースも。「どこが駅だかわからない」停留所をいくつか紹介します。

プラットホームのない停留所も

 全国には数多くの路面電車が運行されています。最盛期である1932(昭和7)年には、65都市で合計1479kmもの路線が存在していたそうです。
 
 一時期、モーターリゼーションに押されて路線廃止が相次いだこともありますが、現代では宇都宮ライトレールの盛況など、エコで便利な交通機関として見直されつつあります。2024年現在、路面電車の停留所(駅)は620か所もあり、多くは数百m置きに設置されています。

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阪堺電気軌道の塚西停留所(安藤昌季撮影)。

 それだけに、中にはちょっと変わった停留所もあります。ここでは、「ホームなどの安全地帯がなく、路面から直接乗り降りする停留所」について取り上げてみます。

 路面電車には、道路幅に余裕がないとか、交差点付近に停留所があるなどの理由で、プラットホームを設置しないケースが存在します。そうした場合、利用客は道路から直接、電車に乗り込むわけです。

 そうした停留所では、乗降場所が道路標識で示されることになります。ルールとしては、道路の一部の外枠を黄線、内枠を白線、さらに内側を緑色で塗りつぶして、そこを歩行者の安全地帯と定義。そして近くには自動車への警告灯や、青地に白字で「V」を描いた道路標識も設置されますが、予備知識がない人には、どこが停留所なのかさっぱり分からないところもあります。

とさでん交通では「道路から直乗降」が連続

 こうした例は、広島電鉄本線の小網町電停や岡山電気軌道東山本線の中納言電停、小橋電停、阪堺電気軌道の塚西停留場(片側はホームがない)などいくつかありますが、その中でも見ごたえがあるのが、高知県を走るとさでん交通伊野線の「道路上の停留所」たちです。鴨部停留所から5つ連続で路面上の停留所が続き、しかも単線です。

 単線の路面電車は、長崎電鉄や富山県の万葉線など例がないわけではありませんが、伊野線の単線区間は7kmもあり、全国一の長さです。そうした区間を見るために、筆者(安藤昌季:乗りものライター)はJR土讃線の朝倉駅(高知市)に降り立ちましたが、駅前にあるはずの伊野線の朝倉駅前停留所が見当たりません。

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とさでん交通のハートラムII(安藤昌季撮影)。

 4~5分探し回り、停留所を見つけました。駅前からやや離れた区画にあり、商店街に線路が走っているかのようです。木々に溶け込むように時刻表の看板がありました。路面に「電停」の表記があり色分けもされていましたが、薄く、周囲が暗ければ停留所と認識できなかったかもしれません。

 単線区間なので、列車は30分に1本ほど。筆者は200m離れた朝倉停留所へ徒歩で向かいました。こちらは列車交換可能な構造で線路が多いですが、やはり停留所らしき部分は、道路に描かれた色違いの箇所のみです。

周囲の風景に溶け込んでいる

 とさでん交通の待合所もありますが、「朝倉(高知大学前)」の名称看板よりも「青葉住宅」の広告の方が目立つため、停留所というよりはコインランドリーや電気屋のような雰囲気でした。

 さらに200m歩くと曙町停留所があります。こちらは道路の色違い部分が見えるだけ。近づくと電柱に時刻表や路線図が張ってありました。土地勘のない人からの目線では、もはや風景の一部です。

 さらに300m歩いて曙町東町停留所へ。こちらは道路の白線が引き直されたばかりなのか、視認性が高かったです。ただ、停留所らしきものは郵便ポストの後ろの看板だけ。電気鉄道なので架線もありますが、一般的な電線と混じって、やはり周囲の風景に溶け込んでいます。

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鴨部停留所(安藤昌季撮影)。

 さらに300m行くと鴨部停留所。ここも道路の白線が綺麗で見やすいですが、停留所らしきものは電柱の張り紙だけで、付近のバス停の方が存在感がありました。ここから鏡川を渡ると鏡川橋停留所で、そこからは複線となります。

 日常の風景に溶け込んでいる、とさでん交通の停留所。珍しい鉄道風景なので一見の価値ありです。ただし、接近する路面電車や自動車には十分な注意が必要です。

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