岸田前首相、退任早々に地元回り 区割り変更の衆院選、陣営に危機感

後援会の会合で支持者らと握手する岸田前首相(左)=2024年10月6日午後0時56分、広島市中区、山中由睦撮影

 1日に首相を退任した岸田文雄氏(67)が6日、衆院選に向け、地元の選挙区であった会合に参加した。岸田氏が選出された広島1区は、次の衆院選から3町が新たに加わるが、このうち2町の町長選では自民の推薦候補が相次いで敗北している。退任早々、地元に戻り、てこ入れを図った形だ。

 「選挙区も変わって、新しいご縁ができた。皆さんもお付き合いをいただければ」

 広島県海田町であった「地域連絡協議会」で、岸田氏はこう呼びかけた。集まったのは約30人。新たに広島1区となる同県の海田町、坂町、府中町の町長や自民系の町議らだ。

 公職選挙法の改正で、広島県内の小選挙区は1減の6に。広島1区は広島市中区などの市中心部に加え、近隣の3町が新たに組み込まれた。岸田氏が広島に戻るのは8月の平和記念式典以来、2カ月ぶり。岸田氏の事務所によると、首相に就任した2021年から3年間、ほとんど地元に戻れなかった。

 この日午前、広島市中区であった自身の後援会の会合では、3年間の支援に感謝の言葉を忘れなかった。岸田氏は「歴代政権が決断できなかったことについて、全て答えを出してきた」と振り返りつつ、「日本、広島のために努力を続けていきたい」と選挙への決意を語った。

 ただ、足元には不安が残る。

 昨年11月の海田町長選では、3選を狙った自民推薦の現職が、無所属の新顔候補に敗れた。今年5月の府中町長選は無所属新顔の5人が争った結果、自公推薦の前町議が落選している。

 そうした中で迎える衆院選。岸田氏の陣営関係者は「3町の住民は、岸田氏の選挙区に入ったとの認識が薄い」と焦りを隠さない。3町での支持固めが急務となり、さっそく地元を回ることにしたのだという。

 海田町での集会後、岸田氏は報道陣の取材に「新しく選挙区に加わった地域の事情にもしっかり思いを巡らし、理解を深めていくことが大事だ」と話した。

 広島1区では、共産の中原剛氏(67)と日本維新の会の山田肇氏(35)、立憲の平本浩一氏(58)が立候補を表明している。(魚住あかり、山中由睦)

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