岸田首相「延命バラマキ」も追いつかない“泥沼値上げ”家計負担は年間11万円も増!

首都・東京の知事選に、自民党の総裁選……。今年は日本の今後を占うイベントがたくさん。にわかに政府はお金をまき始めたが、それを上回る値上げが待っていて――。

「6月21日、岸田文雄首相が記者会見で『2段構えの物価対策』を発表しました。第1弾は8~10月の電気代とガス代の補助金を復活させること。

一般家庭の1カ月の電気代は1千400円、ガス代は450円ほど負担が減る見込みです。第2弾は、年金世帯や低所得者を対象とした追加の給付金などです。突然の発表だったので、総裁選前の人気取りのように感じます」

こう指摘するのは、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんだ。関東学院大学経済学部教授の島澤諭さんも、同様の見解だ。

「6月分の給与に反映された1人4万円の定額減税ですが、一度きりなので、根本的な物価対策になりません。また、電気とガスの補助金の復活は、酷暑を乗り切るための緊急支援だそうですが、7月分は反映されません。

非常に場当たり的。支持率が低迷する岸田首相の総裁選への巻き返しのためのバラマキでしょう」

10月には児童手当の対象が中学卒業から高校卒業まで拡充されるなど、岸田首相肝いりの“異次元の少子化対策”が始まるが……。

「少子化対策とはいっても名ばかりで、すでに生まれた子供への支援策がほとんどです。生まれてくる子供を増やす対策がないのですから、少子化が反転するはずがありません」(島澤さん)

もちろん、原資は税金だ。当初は社会保険料に「月1人500円」を上乗せすると説明されていたが、蓋を開けてみれば、大企業や中小企業で働く年収600万円の人は月1000円、年収800万円の人は月1350円と(2028年度見込み)、当初の説明の倍額以上となっている。

「公的医療保険に“上乗せ徴収”する前例を作ったことで、あらゆる施策の財源に流用できるスキームが完成しました。今後も、別の“上乗せ徴収”が始まるかも」

一方、6月24日、2023年度の税収が70兆円を超える見込みであることが判明。過去最高だった’22年度の71兆1373億円にせまる勢いだ。

「それでも、バラマキのために財源が足りなくなり、次から次へと国民の負担を増やしていくのは、政府のやりくりが下手すぎるからではないでしょうか」(島澤さん)

■節約の方法がない避けられない値上げ

こうした負担増に加え、さまざまな値上げが国民を苦しめている。

「しかも、安いものを探したり、ほかのもので代用したりすることのできない、節約の余地がない値上げが増えています」(柏木さん)

まさに、一度ハマったら抜け出せない“泥沼”のような値上げだということだ。代表格が住宅に関するもの。

「賃貸住宅の家賃の値上げや、マンションの管理費や修繕積立金の値上げが相次いでいるのです」(柏木さん)

全国賃貸管理ビジネス協会がまとめている「全国家賃動向」によると、2024年5月の全国平均賃料は、前年同月に比べ2.8%増だった。

さらに、総合不動産コンサルティングサービスなどを行う「さくら事務所」の調査(2022年)では、2017年からの6年間で、都心部の管理費の平均額が約1.2倍、修繕積立費の平均額は約1.5倍になったと報告。増加傾向にある。

「もちろん家賃の引き上げなどは交渉の余地はありますが、一度上がってしまったら、引っ越しをする以外に支出を減らすことは難しい。対策の取りようがほとんどありません」(柏木さん)

同様に対策が取りづらいのが、水道料金の値上げだ。

「全国の事業体では、老朽化している水道管のメンテナンスが急務となっています。また少子化や節水機器などで水需要が下がっているため、経営的に厳しい状態が続いており、料金の引き上げを行っているのです」(柏木さん)

たとえば神奈川県では、今年10月から平均16%、2025年10月から平均19%、2026年10月から平均22%と、段階的に料金水準を引き上げていくと発表されている。電気やガスと違って事業者を乗り換えたりすることはできず、値上げを受け入れるほかないのだ。

また、10月1日には、さまざまな値上げも予定されている。

「郵便料金が、はがきが63円のところ85円に、そのほか速達やレターパックなども軒並み値上がります。手紙を出す人が激減しているうえ、2024年問題で配達員の残業が抑制され、深刻な人手不足になっていることなどが背景にあります」(柏木さん)

さらに住宅の火災保険の保険料の値上げも予定されている。

「近年、ゲリラ豪雨や台風などの水害で保険金の支払いが増加していること、修繕の際の資材の高騰などがあるためです」(柏木さん)

損害保険料率算出機構では、火災保険(住宅総合保険)は全国平均で13%ほど引き上がると予想。

さらに、“薬”の値上げも。特別な理由がなく、先発薬を購入すると、先発薬と後発薬(ジェネリック医薬品)の差額の4分の1を負担しなければならない。

郵便は日本郵政の実質的な独占事業であり、代替手段はない。値上がりするからといって火災保険を解約したり、長年飲んでいた薬の種類を変えたりするのも難しい。まさに泥沼のような値上げなのだ。

■8万円の定額減税をのみこむ支出増

家計で大きなウエートを占める食費。これまで、多くの食料品が値上げされてきたが、食品高騰の波がさらに家計を襲うという。

食品価格を定期調査している、帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんはこう語る。

「6月は614品目で値上げがありました。昨年6月は3000品目を超えていたので落ち着いたように見えますが、オリーブオイルが1.5倍近くも大幅に値上げされるケースがあるなど、生活に密着した商品が極端に上がっているので“高くなった”と実感すると思います」

7月以降では、山崎製パンがチョコレートなどを使用した一部のパン(12品)の価格を、平均7.2%値上げする。

「チョコレートの原料であるカカオは、ガーナやコートジボワールが生産地になりますが、天候不順で収量不足。しかも両国とも政情が不安定で、安定的な輸入が難しくなってきています」(飯島さん)

秋口には、ペットボトルや缶製品が値上がりする。

「資源価格や、物流にかかるコストの高騰が要因です。大手各社が一斉に値上げに踏み切ったので、今後は中小企業も追随することになるでしょう」(飯島さん)

ドロ沼値上げに、さらなる食料品の値上げで、われわれの生活はどうなるのだろう。

みずほリサーチ&テクノロジーズのレポート「円安・原油高で長引く家計負担増」によると、物価上昇によって年収700万円前後の世帯の2024年の支出は、前年と比べ年間11万円も増える見込みだという。6月に行われた夫婦2人で8万円の定額減税があっても、3万円の支出増になる。

「しかも、減税は一度きりと政府は言っています。来年は何の援助もなく値上げに立ち向かわないといけない可能性が高い」(柏木さん)

人気取りのためのバラマキではなく、抜本的な対策を岸田首相にはしてほしい。

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