新耐震基準でも85%以上の住宅に「倒壊の危険性」 もはや“新耐震でないのでは” 補助金を受けるにも高い壁

発災から2か月以上が経過した「能登半島地震」。19の市町で約8万棟の住宅に被害が出ました。キーワードは“低い耐震化率”。

2005年の実験

「耐震化していない木造住宅は強い揺れに弱い」19年前に行われた実験と同じことが起きました。

耐震化率は全国平均87%に対し、特に被害が大きかった輪島市と珠洲市は50%程度にとどまります。

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能登の地震を受けて、注目を集める住宅の耐震化。しかし課題が…

耐震化の工事が行われていた、愛知県内の1986年に建てられた築38年の木造住宅。強い地震で倒壊の恐れが高いとわかったためですが、住人の女性は釈然としない様子。

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(耐震工事を依頼した・寺尾さん)
「すぐに市役所にも問い合わせをしたが『年式の基準を満たしていないから補助の対象ではない』と言われてしまった」

壁の補強に基礎の増築など500万円以上かかりますが、補助金は全く出ないのです。

実は、補助金の支給には大きく2つの条件が。

新耐震なのに「倒壊する可能性が高い」の結果 でも補助金は出ない

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住宅は1981年6月を境に「旧耐震基準」と「新耐震基準」に分かれますが、補助金が出るのは「旧耐震基準以前」のみ。さらに震度6強から7で倒壊しない「耐震指標1.0」以上に補強することも条件です。

(寺尾さん)
「もう新耐震は“新耐震”じゃないのでは。こんな数字が出ている時点でもう旧耐震と変わらない」

新耐震でも地震で被害を受けることがわかっていますが、備えようと思っても補助金は出ない現実が。

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(匠一級建築事務所・阪本尚彦代表)
「能登半島地震・熊本地震などの大地震の時に、新耐震の建物も壊れている」

全国の工務店などが加盟する「木耐協」が、約1万4000棟の新耐震基準の住宅を調べた結果「倒壊の可能性がある」が約22%、「倒壊の可能性が高い」が約64%と、新耐震でも85%以上の住宅に“倒壊の危険性”があったのです。

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(匠一級建築事務所・阪本尚彦代表)
「これだけ地震がきている中で、住宅が倒壊して亡くなった人が8割~9割なので、補助金を新耐震に入れると、もっと人を救うことができるのではないか」

一方で…

去年、耐震工事を行った長久手市の一軒家。建てられたのは1979年と、補助金を受けられる旧耐震基準ですが、補助金は受けませんでした。

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「100万円」の補助金をもらうには…自己負担「900万円」 

(自宅を耐震工事した・山田知明さん)
「耐震工事だけで1000万円超えるくらい。補助金が出るにあたっての数値までやる(金銭的な)余裕がなかった」

理由は、補助金のもう一つの条件である「耐震指標」でした。この数値を震度6強から7に耐えられる1.0以上にすると、1000万円以上かかることがわかりましたが、それで受けられる補助金は100万円まで。900万円もの自己負担は難しく、普段過ごすことが多いリビング一部屋のみ工事を行ったのです。

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国が耐震化を強く推進する一方で、補助金は利用しづらい状況に、山田さんは。

(自宅を耐震工事した・山田知明さん)
「耐震工事をやれやれというのは当然理解はしているし、やれるならやりたいが、家の規模によって耐震工事の費用は全然変わってくるので、それを考えるともう少し助けて欲しい」

地震防災の「一丁目一番地」ともいえる住宅の耐震化。南海トラフ巨大地震が迫る中、制度の見直しも必要と言えそうです。

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