震度7に14回耐える家 秘密は“揺れそのものを低減” 能登半島地震で全壊・半壊の被害ゼロ「耐震性不足の建物は、軒並み倒壊する」

1月1日の夕方、元日の能登半島を襲った大地震。

玄関を出ると、目の前の住宅が倒壊していました。能登半島地震では最大震度7を観測し、耐震性が低い住宅の倒壊が相次ぎました。

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死因が公表されている死者のうち、約9割が「家屋の倒壊」で命を落としました。

被害の大きかった珠洲市の住宅耐震化率は約51%。輪島市では約45%しかなく、いずれも全国平均を30ポイント以上、下回っていました。

住宅の倒壊による死者が多かった阪神・淡路大震災から29年を経てもなお、地域によっては、耐震化が進んでいない現状が浮き彫りに…。

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(名古屋大学・福和伸夫名誉教授)
「耐震性が不足する建物は、軒並み倒壊するということを皆さんご覧になった。住宅が壊れないことによって命が守られる。そして生活が守られる。あらゆる力を結集して、日本の建物の耐震化に取り組まないといけない」

愛知県の住宅耐震化率は約90%。しかし、耐震基準を満たしていない戸建ての住宅は、まだ25万戸もあるんです。

2000年以前の建物には注意 今一度「耐震基準」の確認を

能登半島地震を受けて、耐震工事への関心が高まっています。名古屋市天白区の築40年の一軒家。日差しを取り入れるために、南側に大きな窓があります。

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耐震工事を依頼した家主は、1級建築士の資格を持つ「建築のプロ」です。

(耐震工事を依頼・髙野昌彦さん)
「南向きの掃き出し窓を広くとっていたので、南側の東西方向の壁が少ない。(耐震診断の結果は)思ったより悪かった」

高野さんの自宅は、大きな窓が多い南側が北側に比べ壁の数が3分の1しかなく、「バランスが悪い」という結果に。強い揺れに襲われた場合、壁が少ない南側に向かって倒壊する可能性が指摘されました。

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大きく3つに別れる耐震基準。1981年以前の旧耐震、2000年5月以前の新耐震、そして2000年6月以降の現行耐震基準です。1984年に新耐震基準で建てられた高野さんの自宅は、2000年6月から設けられた「壁の配置バランスの基準」などを満たしていないのです。

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(耐震工事を依頼した髙野昌彦さん)
「能登半島地震を見ていても、2000年以前の建物に被害が出ている。少し(耐震化に)手を入れていこうかという思いがある」

少しでも地震に強い家を目指して、1階と2階の南側の壁に耐震ボードを。また、家の四隅に「基礎」と「土台」、それに「柱」を固定する金具を取り付けました。

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震度7に14回耐える家の秘密は 「揺れそのものを低減」

(下和田歩記者)
「耐震化工事が進む一方で、地震の揺れを制御する装置にも注目が集まっています」

愛知県瀬戸市で進む新築工事。

取り付けられているのは「MIRAIE(ミライエ)」という、住宅用の「制震ダンパー」です。

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「制震」とは、揺れに耐えるように建物を強化する「耐震」と違い「揺れそのものを低減して建物を守る」という考え方です。

(アサヒグローバルホーム一宮店・服部亮太副店長)
「制震ダンパーをそもそも知っているお客さまが増えてきていて、その中で『MIRAIE』を知っているお客さまも増えている」

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「震度7にも耐える」という、制震ダンパーの秘密とは。

タイヤの製造で知られる「住友ゴム工業」の工場を訪ねました。

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(住友ゴム工業 ハイブリッド事業本部・松本達治副本部長)
「威力を発揮するのは上の部分。揺れを吸収する高減衰ゴムでできた制震ダンパー」

「衝撃」を「熱」に変えて放出する。つまり「減衰」させる「高減衰ゴム」が板状に2層、取り付けられています。

(住友ゴム工業・松本副本部長)
「普通、エネルギーを吸収するゴムはどちらかというと柔らかいゴムが多いが、高減衰ゴムは世界でも指折りの硬さ」

(下和田記者)
「すごく硬いですね。これは硬くないとダメなんですか?」

(住友ゴム工業・松本副本部長)
「ここのところの巨大地震は、繰り返して大きな地震が家を襲う。人の力で動くような柔らかさでは、家の揺れを抑えることが出来ません」

一般的なゴムボールと一緒に落としてみると…

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(下和田記者)
「確かに弾まず、そのままですね」

「はねない」ということは、衝撃を吸収しているんです。

2016年の熊本地震の震度7の揺れを再現した実験では、現行の耐震基準を満たす一般的な住宅は、1回目の揺れには耐えたものの、2回目の揺れで1階部分が大きく損傷しました。

(住友ゴム工業・松本副本部長)
「2階建ての住宅の場合には必ず1階部分が先に倒壊し、その上から2階部分が乗っかかってくる。いかに1階部分を強くしておくかが、大事なポイントになる」

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制震ダンパー設置の住宅 熊本地震で全壊・半壊「ゼロ」

一方、MIRAIEをつけた住宅は揺れ幅を最大95パーセント低減し、震度7の揺れで14回揺らしても倒れませんでした。実際、4万棟近い住宅が全半壊した熊本地震で、この制震ダンパーを設置していた約120棟の住宅は全壊、半壊の被害は「ゼロ」。

今回の能登半島地震でも、震度6弱以上を観測した地域で採用されていた約300棟すべてに大きな損傷はなかったとのことです。

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設置費用は、施工費込みで1棟当たり「数十万円」。すでに、国内の約8万8000棟に設置されています。リフォームした時に後付けできるタイプもあり、そちらは震度7の揺れに耐えられるのは3回ですが、新築用のものより安く設置できます。

(制震ダンパーを設置・大嶋洸次郎さん)
「ずっとこの地域でも大きい地震が来る来ると言って来ていない中で、いつ来てもいいように備えないといけないなとは常々思っていた。子どももいるので、あたたかい家庭を築けるような安心できる家になればいいなと思います」

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命はもちろん、その後の生活を守るための「耐震化」。いつ来るかわからない巨大地震への備えに「早すぎる」ということはないのです。

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