「物価高も賃金上がらず」主婦、米農家、被災者…それぞれの衆院争点

林志保さん=大阪市で2024年10月8日午後0時35分、芝村侑美撮影

林志保さん=大阪市で2024年10月8日午後0時35分、芝村侑美撮影

 私たちの暮らしに関わるテーマについて、どんな論戦を期待したいのか。15日に公示された衆院選について、各地の有権者に「私の争点」を文字にしてもらった。

8人家族の母「息の長い子育て支援を」

林志保さん(57)=大阪市北区

 小中学生を含む家族8人暮らしで、自宅では子ども食堂を開いています。食べ盛りの子を抱え、子ども食堂でも必要不可欠なお米の値段が上がって大変です。サラダを作るための野菜やマヨネーズなどの調味料も値上がりしています。生きるために必要な食べ物まで値上がりしているのに、賃金は上がらない。市民の目線に立ち、生活を支えるための政治をしてもらいたいです。また、子どもが大きくなるにつれ、お金はかかるのに公的な支援が少なくなっていると感じます。息の長い子育て支援をしてもらいたいです。

米農家「『価格上がってよかった』で済ませないで」

高嶋良平さん(36)=北海道北広島市

 今夏、全国で米不足がありました。米農家の6代目として肥料や土作りにこだわり、独自の販売ルートを開拓してきましたが、国はコメの生産調整をしていないとしつつも、自治体やJAなどによって作付面積が割り振られているのが現状です。意欲のある生産者がもっと生産できる仕組みをつくってほしいと思います。生産量が制限される一方、新型コロナウイルス禍で米価が下落したときは特別な支援がありませんでした。今年はコメの価格が高騰しましたが「(農家にとって)上がってよかった」で済ませないでほしいです。

能登地震の被災者「子どもが戻りたいと思える場所に」

三崎順彦さん(72)=石川県珠洲市

 能登半島地震で自宅が全壊し、3月から仮設住宅で妻、犬1匹と生活しています。現在は自宅の公費解体を待ちながら片付けをしています。争点で「能登の復興を考える」は第一です。しかし、地震前から珠洲(すず)市の人口は減っており、地震で減少が加速してしまいました。仕事があって、生活がしやすいと、外に出た子どもたちが戻ってきたいと思える場所になる。そのような政策を実行してほしいです。候補者の顔が見えて、自身がやるべき政策、やりたい政策についての思いを伝えにきてくれた人に託したいと思っています。

学童保育支援員「人手不足が深刻、矛盾に目を向けて」

近藤由佳さん(48)=愛知県知多市

 農業の傍ら、放課後児童クラブ(学童保育)の支援員をしています。子どもたち一人一人と向き合いたいのに、現場にその余裕はありません。最大の要因は人手不足です。保育活動を支えているのは、教育分野への就職を目指す学生アルバイト。なのに、毎年この時期になると「ごめんなさい、上限いっぱいです」と次々と勤務から外れていきます。親の扶養範囲を超えて働けば、かえって世帯年収が減ってしまうため、労働時間を短縮せざるを得ないのです。意欲ある若い力をフル活用できない、この矛盾に目を向けてください。

介護福祉士「2025年問題、介護の支援策を」

藤下綾子さん(46)=東京都東村山市

 介護福祉士としてNPO法人で訪問介護の仕事をしています。利用申し込みは多数あるのですが、人手不足のためこの3カ月間でも50件ほどお断りしている状況です。団塊の世代(1947~49年生まれ)が全員75歳以上になる「2025年問題」は間近で、このままでは介護現場は持ちません。人手不足解消のために賃上げも大事ですが、介護職の「つらい、きつい」といったイメージが変わらない限り、担い手は集まらないでしょう。介護現場で働きたい、キャリアを築きたいと思えるような支援策を構築してもらいたいです。

大学生「日本の将来のための議論少ない」

近藤佑亮さん(21)=北九州市八幡西区

 今は大学4年生で、来春から社会人です。地域活性化への思いから地元企業に技術職で入社します。環境問題、産業の衰退、働き口の減少が気になります。国内の技術力や生産力の低下も心配です。世界では異常気象で環境が変化しています。国は環境政策についてもっと周知してほしい。国会の議論は裏金問題ばかりで、日本の将来のための議論が少ないように感じます。18歳になってからは地方選を含めて選挙では毎回、投票に行っています。将来への不安があるからこそ、今回もマニフェストを読んで投票したいと思います。

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