「大雪で100便超が欠航」…羽田空港は本当に「雪に弱い」のか? そう思われがちな理由とは

首都圏を襲った豪雪で、欠航が多発したと大々的に報じられた「羽田空港」。果たしてこの空港は「雪に弱い」のでしょうか。ここには同空港ならではの「不可抗力」が存在します。

「羽田空港ならではの旅客機の使い方」が関係?

 2024年2月5・6日、関東地方が雪に見舞われ、首都圏の空港では航空各社で5日に100便以上が欠航となりました。関東で大雪になる度に、航空関連のニュースでは羽田空港発着便の欠航が取り上げられます。今回も大雪とはいえ、北国の空港のような豪雪とは程遠い降雪量です。果たして羽田は「雪に弱い」のでしょうか。

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羽田空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 実はこれは報じられ方や、同空港特有のやむを得ない事情が関係している、と考えられます。

 筆者は随分前、「なぜ羽田空港ばかりが雪で欠航するのだろう。同じ関東の大空港でも成田空港は羽田に比べて聞くことは少ないけど」と、以前からの疑問を大手マスコミの羽田空港詰めの記者に尋ねたことがあります。

 その答えは、「国内線を頻繁に飛ぶ機材繰りが要因ですね。1便が欠航すると玉突きが起きてしまうからでしょう」でした。この状況は今も変わっていません。

 羽田空港の年間発着数は約40万回。北国の地方空港のそれを圧倒的に上回るほか、現在約21万回の成田空港の発着数ですら全く及びません。そのようななか羽田空港ばかりがなぜ取り上げられるのか――。確かに、テレビ局など大手マスコミの本社は東京都内にあるので、羽田空港の方が取材しやすくもあるでしょう。

 しかし、国内線の基幹空港である羽田空港では、今も旅客ターミナルビルに横付けされる各航空会社の旅客機たちが、到着と出発を頻繁に繰り返しています。到着から出発までに要する待機時間「ターンアラウンドタイム」は、国際線よりも国内線の方が遥かに短いのが一般的です。

 1機の旅客機が到着し乗客が下りて掃除が終わると「すぐ」と言っていいほどに、次の便の乗客を機内に案内し、地方の空港へ飛んでいきます。そしてその機が戻ってくると、また乗客を搭乗させて違う場所へ……こういったことは日常的な一コマです。

「羽田の欠航多発」→プロの尽力でもやむを得えず…な理由

 つまりこれは、もし1つの便が遅れた場合、遅れは同じ機材を使うほかの便でも発生するということを意味します。同時に、1つの便が雪により欠航すれば、この機を使うはずだったほかの便も飛べなくなります。

 なお、筆者が前出の記者に訪ねた当時、成田空港は国際線が主体で、特に外国航空会社の到着便が出発するのは、一定の時間後なので1機による「玉突き」は起きにくいとのことでした。

 現在の成田はLCC(格安航空会社)の国内線などが就航しているものの、やはり羽田の方が国内線の数が圧倒的に多いので、仮に今回の羽田のような積雪量が成田で記録されたとしても、羽田ほどの欠航数にはならない、と見ることができるでしょう。

 国内最大の巨大さを誇る羽田空港ですが、当然雪に対し無対策というわけでは決してありません。機体と滑走路・誘導路共に除氷除雪への態勢を厚くしています。しかし、やはり大雪ともなると、処理する機数が地方空港と比べ物にならないほど多いことも、他空港に比べて欠航数が著しく目立つ要因のひとつかもしれません。

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新千歳空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 なお、この除氷・除雪は、航空会社が非常に神経を使う項目です。毎年冬の訪れが聞こえる頃には、乗員向けの社内誌で過去の世界で起きた事故例を掲載するなどして備えるほど。それだけ航空業界は、雪による事故の怖さを知っているのです。

 特に雪の日、さまざまなターミナルビルから、駐機している機体へ特殊車両を用いて「防除雪氷液」を散布する様子を見ることができます。できるだけ遅延を避けるようにするには、手際よく終わらせる熟練の技が必要です。また、ただかければ良いというわけではなく、センサー類やタイヤ回りなどへ散布をしてはいけないなど、様々な決まりごとがあります。

 その影響力ゆえにフォーカスされやすい羽田空港の欠航も、防除雪氷液を手際よく散布している姿も、現状できる範囲の中で、航空会社や空港などが、安全運航を堅持しながら、その範囲内で定時制を確保に努めた結果でもあるのです。

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