自然の中で過ごすと本当に「時間がゆっくり流れているように感じる」という研究結果

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旅行会社や観光団体のPRでは、「忙しい都会を離れて、自然の中でゆったりとした時間を過ごそう」といったうたい文句がよく使われます。フィンランドのトゥルク大学で心理学部の助教を務めるリカルド・コレイラ氏は、自然環境と時間感覚について調査した複数の研究を分析し、実際に自然の中で過ごすと時間の流れがゆっくりに感じると結論付けました。
Acknowledging and understanding the contributions of nature to human sense of time - Correia - 2024 - People and Nature - Wiley Online Library
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pan3.10601

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How nature can alter our sense of time
https://theconversation.com/how-nature-can-alter-our-sense-of-time-225316
現代人は毎日のように仕事や家庭、社交、趣味などに関連する多種多様なタスクをこなしており、「どれだけ効率的にタスクを片付けても時間が足りない」と感じている人も多いはず。デジタル技術の発達によって常に職場や友人とつながっている状態になったことも、時間の流れが速すぎるという感覚に拍車をかけています。
そこでコレイラ氏は、「自然」が人間の時間感覚に及ぼす影響を調査するため、被験者が都市部の環境と自然豊かな環境で同じタスクを実行し、時間の流れをどのように感じたのかを調べた複数の研究を分析しました。
その結果、複数の研究は一貫して「人々は都市部にいる時よりも自然の中にいる時の方が、時間がゆっくり流れているように感じる」という結果を示すことがわかりました。例えば、人は自然豊かな場所で散歩した時間を都市部で散歩した時間より長く感じるという研究結果や、注意力を必要とするタスクを行う人は自然の中でよりゆっくり時間が流れたように感じるという研究結果などが報告されています。また、自然の中で過ごすことは人の衝動性を減らし、瞬間的な満足感を先送りにしても、より長期的な報酬を得られる選択ができるようになるという研究結果もあります。
こうした環境による時間感覚の変化は、その瞬間だけでなく、過去や未来の感覚にも影響を及ぼし、自然の中で過ごすことは思考の焦点を目先の物事から将来的なニーズに移す役に立つとのこと。これにより、人々はより長期的な視点で人生を見つめ直すことができ、行動に優先順位を付けて、長期的な目標を達成することができるそうです。

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人間が時間を経験する方法は、体内の生物学的な状態に加え、自分を取り巻く外的環境や出来事によっても左右されます。そのため、実際には同じ時間が流れているとしても、ストレスや不安、恐怖といった感情が人々の時間感覚をゆがめてしまう可能性があるとのこと。
自然と触れ合うことはストレスや不安の軽減といったリラックス効果が得られるため、より安定した時間感覚をもたらすと考えられます。また、自然の中で過ごすと記憶力や注意力が向上するという研究結果もあることから、時間的なプレッシャーにうまく対処できるようになります。
イギリスのリヴァプール・ジョン・ムーア大学で心理学教授を務めるルース・オグデン氏らは、自然と触れ合うことが難しい都市部の人々にとって、街中の樹木や公園といった「緑のインフラ」が必要不可欠だと主張しました。

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