地球の自転が速くなっているため2029年までに「負のうるう秒」が必要になる可能性大、ネットやITサービスが大混乱になる危険性も


4年に1度、2月が1日長くなる「うるう年」はよく知られていますが、これとは別に12月31日か6月30日に1秒調整する「うるう秒」も存在します。うるう秒は、これまではすべて1秒長くするものでしたが、2029年までに1秒減らす必要があるという計算結果が報告されました。
A global timekeeping problem postponed by global warming | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07170-0
A faster spinning Earth may cause timekeepers to subtract a second from world clocks | AP News
https://apnews.com/article/leap-second-subtract-melting-ice-clocks-74eaac47b9c429910723a604897032a4


Why time will stop in 2029: Scientist says a 'negative leap second' will be needed to adjust for Earth's rotation speeding up | Daily Mail Online
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-13244921/Scientists-negative-leap-second-2029.html
◆地球は長らく減速してきた
カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所の物理学者であるダンカン・アグニュー氏によると、地球は過去数千年にわたりおおむね減速してきたとのこと。自転速度の低下は、主に月の引力がもたらす潮の満ち引きの影響、つまり潮汐摩擦(ちょうせきまさつ)によって引き起こされてきました。
自転の速度が変わるといっても、目に見えるような影響は出ないため、原子時が公式の標準時間として採用されるまでは特に問題になりませんでした。しかし、セシウム原子が91億9263万1770回振動するのを1秒と定義する超高精度な原子時計の登場により、原子時計が刻む「原子時」と地球の1日に基づく「天文時」との間にズレが生じるようになったため、数年に1度1秒調整するうるう秒が必要になりました。
1972年にうるう秒が導入されて以来、地球の1日が長くなるのに合わせて27回うるう秒が追加されており、直近では2016年12月31日23時(日本時間の2017年1月1日8時)の59分59秒の後に1秒が追加されました。
うるう秒が2016年末に挿入され、12月31日23時59分60秒が生まれることに - GIGAZINE


by woodleywonderworks
◆近年では加速する傾向も
ところが、近年では減速のテンポが徐々に鈍化し、むしろ加速していることがたびたび指摘されるようになりました。これには複数の要因が絡んでいますが、主な理由は地球の中心部にある高温の液体コアの流れが予測不能な形で変化するからだといわれています。
地球の核は、1972年以降の過去50年あまり自転を加速させる作用をもたらしてきましたが、その影響は近年の急激な地球温暖化により相殺されていました。というのも、1990年代以降、地球の極地の氷が猛烈な勢いで融解しており、増加した海水が極地から赤道付近に移動することで減速する作用をもたらすからです。これはちょうど、回転するスケート選手が腕を広げると速度が落ちるのに似ています。


◆気候変動でうるう秒の予定が後ろ倒しに
アグニュー氏は、2024年3月に科学誌・Natureに掲載された論文で、地球温暖化による影響で2026年に必要だった「負のうるう秒」が3年遅れて2029年になったとの研究結果を発表しました。うるう秒は2035年までに実質的に廃止されることが決定しているため、最後のうるう秒はマイナスになる可能性があります。
1秒増えようが減ろうが大したことではないようにも思えますが、原子時計が刻む正確な時間によって動いている現代社会への影響は甚大で、2012年のうるう秒ではオーストラリアのカンタス航空や掲示板型ソーシャルニュースサイトのReddit、Linuxで動作しているサーバーシステムなどで障害が発生しました。
アグニュー氏はメディアに対し、「将来の地球方位を予測する際に、地球のコアやその他の関連現象の傾向を考慮すると、現在定義されている協定世界時は、2029年までに負の不連続、つまりマイナスのうるう秒を必要とすることがわかりました。これはコンピュータネットワークのタイミングに関して前例のない問題を引き起こすことになるので、計画よりも早く協定世界時の変更を行う必要があるかもしれません」と述べました。
また、気候変動が地球の自転にまで影響することが改めて示されたことから、アグニュー氏は論文に「極地の氷の融解が最近加速していなければ、この問題は3年早く発生していたでしょう。つまり、地球温暖化はすでに世界の計時に影響を及ぼしているのです」と記しました。

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