陰謀論者もそのうち考えを改めることができるという研究結果

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世の中には「地球温暖化は実際には起きていない」「アメリカ同時多発テロ(9.11)は政府の自作自演」「新型コロナウイルスワクチンは人口削減計画の一環」など、多種多様な陰謀論があります。こうした陰謀論信者が信念を翻すのは難しいと考える人も多いかもしれませんが、人々の陰謀論への考えを半年間にわたって追跡した研究では、「割合は低いが陰謀論者も自分の考えを改めることができる」という結果が示されました。
People do change their beliefs about conspiracy theories—but not often | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-024-51653-z

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Out of the rabbit hole: new research shows people can change their minds about conspiracy theories
https://theconversation.com/out-of-the-rabbit-hole-new-research-shows-people-can-change-their-minds-about-conspiracy-theories-222507
多くの陰謀論はそれを裏付けるような確たる証拠はありませんが、それでも多くの信者を引きつけています。たとえば過去の調査では、ニュージーランド人とオーストラリア人の約7%が、「航空機が飛んだ後に長く残り続ける飛行機雲は、一般人には秘密にされている有害物質だ」というケムトレイル陰謀論を信じていることがわかりました。科学界はこの理論を全面的に否定しているにもかかわらず、一部の人々はケムトレイルを信じています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンに関する陰謀論が社会問題化したこともあり、近年は陰謀論に関する研究が急速に進められています。その中には、「批判的思考(クリティカル・シンキング)の能力が低い人ほど陰謀論を信じやすい」「コロナ禍以降にワクチン反対派になった人は陰謀論やスピリチュアリティに傾倒している可能性が高い」といったものがありますが、ひとたび陰謀論を信じた人がどれほどの頻度で信念を変えるのかについては、それほどよく理解されていないとのこと。
そこで、ニュージーランドのマッセー大学で心理学の上級講師を務めるマシュー・ウィリアムズ氏らの研究チームは、合計498人のオーストラリア人とニュージーランド人を募集し、半年間にわたり陰謀論への信念について尋ねるアンケートを実施しました。

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研究チームはオンラインで募集した被験者に対し、合計10個の陰謀論についてどの程度同意するのかを尋ねました。研究チームが提示した陰謀論はいずれも2000年代に登場したもので、5G通信技術やCOVID-19など現代社会の事柄に関わるものでした。
アンケートの結果、いずれの陰謀論にもそれぞれ信者が存在したものの、信者の割合はまちまちであり、大多数の人々はいずれの陰謀論にも同意しませんでした。最初のアンケートで最も支持者が多かったのは「製薬会社が自分たちの利益を守るためにがんの治療法を隠ぺいした」というもので約18%が同意しましたが、「COVID-19ワクチンには人々を監視・制御するためのマイクロチップが含まれている」という陰謀論はわずか2%しか同意しなかったとのこと。
また、追跡調査が行われたのはCOVID-19のパンデミックやそれに伴うロックダウンで政府への反感が高まっていた時期でしたが、半年間の追跡にもかかわらず「陰謀論を信じる人々が増加した」という傾向はみられませんでした。
以下のグラフは、左上から順に「製薬会社が自分たちの利益を守るためにがんの治療法を隠ぺいした」「新世界秩序という強力で秘密主義的なグループが世界を支配しようと計画している」「2001年9月11日の世界貿易センタービルの崩壊は、アメリカ政府の内通者が意図的に引き起こした」「COVID-19は中国が作った生物兵器だ」「通信会社は新しい5Gセルラーネットワークの健康リスクを隠している」「アメリカ民主党は不正な投票用紙を作成して2020年の大統領選挙で勝利した」「ワクチンは有害だという事実が政府と製薬会社によって隠されている」「飛行機雲は政府の秘密プログラムの一環として放出される有毒化学物質だ」「政府は人々の知能を低下させてコントロールしやすくするために水道水にフッ化物を添加している」「COVID-19ワクチンには人々を監視・制御するためのマイクロチップが含まれている」という陰謀論について、信者の推移を示したもの。どれも多少の増減はあるものの、全体的に「時間の経過にしたがって陰謀論者が増加する」という傾向は見られず、「陰謀論を信じる人」と「陰謀論を信じない人」の割合はほぼ均衡しているといえます。

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長期的に見ると「陰謀論を信じる人」と「陰謀論を信じない人」の割合が変化していないということは、どの陰謀論でもわずかながら「最初は信じていた陰謀論を途中で放棄した人」「最初は信じていなかった陰謀論を次第に信じるようになった人」が存在することになります。これは、人の陰謀論に対する信念や不信は不変ではないことを示すものです。
ウィリアムズ氏らは、「人々は明らかに、以前は信じていた陰謀論を拒絶することを決断しています」と述べ、ひとたび陰謀論にハマってしまうと抜け出すことができないわけではないと主張しました。

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