在宅勤務の従業員はより健康的な食事をするようになりストレスは減少するが体重増加やキャリアへの不安といった問題も抱えている

在宅勤務の従業員はより健康的な食事をするようになりストレスは減少するが体重増加やキャリアへの不安といった問題も抱えている - 画像


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックをきっかけに世界中でリモートワークが推進されましたが、ワクチン接種が普及して流行が落ち着くに伴って、さまざまな企業がリモートワークからオフィス勤務へと復帰しています。リモートワークに関するさまざまな学術論文をレビューしたイギリスの研究では、リモートワークが従業員の健康や生産性にもたらすメリットやデメリットについて分析しました。
Experiences of working from home: umbrella review | Journal of Occupational Health | Oxford Academic
https://academic.oup.com/joh/article/66/1/uiad013/7473692

在宅勤務の従業員はより健康的な食事をするようになりストレスは減少するが体重増加やキャリアへの不安といった問題も抱えている - 画像


Working from home can bring big health benefits, study finds | Working from home | The Guardian
https://www.theguardian.com/business/2024/feb/17/working-from-home-can-bring-big-health-benefits-study-finds
パンデミックに伴いリモートワークをする人が増える中で、リモートワークがもたらすメリットやデメリットに関するさまざまな研究が行われています。そこで英国健康安全保障庁(UKHSA)とキングス・カレッジ・ロンドンの研究チームは、リモートワークに関する体系的レビューを行った合計6件の研究を分析し、「作業環境」「個人的影響」「健康」に関するテーマについて結果をまとめました。
◆作業環境
ある研究では、リモートワーカーの70%が専用の仕事部屋ではなくリビングや寝室で仕事をしていることが示され、他の家族に迷惑をかけない狭いスペースを利用していることがわかりました。多くの従業員は「リモートワーカーに向けた専用の研修」を受けておらず、特に在宅勤務に関連するトレーニングを受けたことがある人の割合はより少なかったとのこと。
その一方で、リモートワーカーは休憩を取らずに長時間働き、週末や夜にも仕事をする傾向がみられました。また、リモートワークによる自律性や柔軟性の向上は、従業員がよりポジティブな感情を持つことにつながったと報告されています。

在宅勤務の従業員はより健康的な食事をするようになりストレスは減少するが体重増加やキャリアへの不安といった問題も抱えている - 画像


◆個人的影響
「リモートワークになると上司の監視がなくなり、従業員が怠けるのではないか」と懸念する雇用主は依然として多いものの、研究チームがレビューした研究では、リモートワークは一般的に生産性を向上させるという結果が示されました。しかし、創造的なタスクの生産性を向上させる一方で退屈なタスクの生産性には悪影響が出る可能性もあるほか、仕事以外に子育てなどのコミットメントがある場合、生産性が悪化する可能性を示唆する研究もあったとのことです。
また、リモートワークをする従業員にとって大きな懸念となっているのが、社会的および職業的相互作用の減少による孤立と、将来のキャリアへの不安です。リモートワークをしていると職場へのコミットメントを失い、自分の貢献が目に見えにくくなることで、従業員が「リモートワークにより自分のキャリアに悪影響が及ぶのではないか」と不安に思うケースがあるそうです。実際にいくつかの研究では、リモートワークをする女性は他の人から「働いていないのではないか」と疑われやすいことや、リモートワーカーは給与の伸びが少ないことなどが示されています。

在宅勤務の従業員はより健康的な食事をするようになりストレスは減少するが体重増加やキャリアへの不安といった問題も抱えている - 画像


◆健康
リモートワークへの移行は野菜・果物・乳製品・スナック・自炊の食事などの摂取量増加と関連しており、特に若い労働者や女性は「より健康的な食事をするようになる」という点で大きな恩恵を受けたとのこと。その一方で、アルコールやタバコなどの体に悪い嗜好(しこう)品の消費量もリモートワークによって増加しており、リモートワーカーの46.9%が「体重が増えた」と回答したという研究結果もありました。
他にも、リモートワークをする従業員は出勤している従業員と比較して身体活動に費やす時間が有意に少なく、より座りっぱなしの時間が長いことも報告されています。
従業員のメンタルヘルスに関しては、いくつかの研究でリモートワークは従業員のストレス減少と関連していることが示されたほか、オフィス勤務よりも血圧が低くリラックスしやすいという研究結果もありました。

在宅勤務の従業員はより健康的な食事をするようになりストレスは減少するが体重増加やキャリアへの不安といった問題も抱えている - 画像


論文の共著者でキングス・カレッジ・ロンドンの精神科医であるニール・グリーンバーグ氏は、企業はもはや「リモートワークをするべきか否か」ではなく、どうすればリモートワークがうまく機能するのかを検討する段階に入ったと主張。「私たちがするべきことは、『誰かにとってリモートワークは有益なのか?』を問うことではありません。答えは明らかにイエスです」「管理職は在宅勤務者をサポートし、彼らの労働環境作りを支援する方法を見つける必要があります」と述べました。

ジャンルで探す