肥満になると脂肪が燃焼されにくくなり余計に肥満が悪化する負のサイクルに陥ってしまう可能性

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現代社会では肥満人口の増加が大きな問題となっており、世界肥満連合(WOF)は「2035年までに世界人口の半数以上が肥満または過体重に分類される」と推定しています。新たな研究で、肥満になると体内でエネルギーを生み出しているミトコンドリアが断片化され、余計に脂肪を燃焼する能力が低下してしまう負のサイクルがある可能性が示されました。
Obesity causes mitochondrial fragmentation and dysfunction in white adipocytes due to RalA activation | Nature Metabolism
https://www.nature.com/articles/s42255-024-00978-0

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How Obesity Dismantles Our Mitochondria
https://today.ucsd.edu/story/how-obesity-dismantles-our-mitochondria
Obesity Disrupts Mitochondria, And We May Have Figured Out How : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/obesity-disrupts-mitochondria-and-we-may-have-figured-out-how
肥満は脂肪細胞が過剰に蓄積した状態を指しますが、肥満になると脂肪細胞がエネルギーを消費する能力が低下して、余計に体重を減らすのが難しくなってしまうとのこと。これまでの研究から、体内のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)を合成するミトコンドリアの機能が、肥満の人では損なわれてしまうことがわかっています。
そこで、カリフォルニア大学サンディエゴ校の細胞生物学者であるアラン・サルティエル博士らの研究チームは、マウスに高脂肪食を与えてミトコンドリアへの影響を調べる研究を行いました。
実験の結果、高脂肪食を与えられたマウスでは、脂肪細胞内のミトコンドリアがより小さなミトコンドリアに分解され、脂肪を燃焼する能力が低下することが判明しました。さらに、このプロセスは「RalA」という単一分子によって制御されていることもわかりました。RalAは、機能不全に陥ったミトコンドリアの分解を助けるなどの機能を持っており、RalAが過剰に活動するとミトコンドリアの機能が妨げられる可能性があるとのこと。
さらに研究チームは、RalAに関連する遺伝子を欠如させたマウスに高脂肪食を与えたところ、RalA関連遺伝子を持っているマウスでみられた体重増加が防がれることも確認しました。サルティエル氏は、「RalAの慢性的な活性化は、肥満の人の脂肪組織におけるエネルギー消費の抑制に重要な役割を果たしているようです。このメカニズムを理解することで、脂肪燃焼を促進して体重増加やそれに関連する代謝機能障害に対処する標的療法の開発に一歩近づきます」とコメントしています。

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今回の研究はマウスで行われたため、これが人間にも当てはまるかどうかを調べるにはさらなる研究が必要です。しかし、マウスの体内でRalAの影響を受ける一部のタンパク質は、肥満やインスリン抵抗性に関連する人のタンパク質に類似していたとのことで、人間でも同様のメカニズムが肥満を引き起こしている可能性が示唆されています。
サルティエル氏は、「食べ過ぎによるエネルギー過剰は体重増加につながる可能性があり、エネルギーの消費を減少させる代謝プロセスの連鎖を引き起こし、肥満をさらに悪化させます。私たちが特定した遺伝子は、健康体重から肥満への移行における重要な部分を占めています」「私たちが発見した基礎生物学と実際の臨床結果との比較は、これが人間にも関連することを強調しています。新たな治療法でRalAの経路を標的とすることで、肥満の治療や予防に役立つ可能性があります」と述べました。

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