「自殺を試みる人は生きることをやめたいのではなく苦しみをやめたいと思っている」と心理学者が指摘

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スペインのバスク大学で臨床心理学の名誉教授を務めるエンリケ・エチェブルア氏は、2023年5月に「Muerte por suicidio(自殺による死)」という本を出版しました。本の中でエチェブルア氏は自殺の心理的状態などについて解説している他、本の出版に合わせ、スペインの日刊新聞であるEL PAÍSに対し自殺に関する質問に回答しています。
Psychologist Enrique Echeburúa: ‘People who die by suicide want to stop suffering, not to stop living’ | Science | EL PAÍS English
https://english.elpais.com/science-tech/2023-05-20/psychologist-enrique-echeburua-people-who-die-by-suicide-want-to-stop-suffering-not-to-stop-living.html

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エチェブルア氏は著書「Muerte por suicidio」の中で、自殺という非常に人間的な現象の側面について解説しています。エチェブルア氏によると、自殺は人間が高い認知能力を持っていることが原因で引き起こされており、「生きるのをやめたい」という気持ちからくるのではなく、「現在経験している苦しみや失望に終止符を打ちたい」と思って自殺を選んでしまうそうです。

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その他、自殺に関するいくつかの質問について、エチェブルア氏はEL PAÍSに回答しています。
Q:
自殺を病気であるかのように解釈することはできますか
A:
自殺を選んでしまう人の70%~90%は、うつ病や依存症といった基礎的な精神疾患を患った人ですが、自殺自体は精神疾患ではありません。10%~20%は、経済的挫折などの外部要因から影響を受けて「人生が終わった」と実存の危機を感じてしまうことで自殺を選んでいます。死が苦しみから逃れる唯一の方法であると考えて、衝動的に自暴自棄な行動に出るケースもあります。
Q:
現在、特に若者や青少年の自殺が懸念されています。状況は悪化しましたか?
A:
スペインでは、若者の自殺による死亡はほとんどありません。最も高い発生率は成人期の30歳から59歳であり、2番目のピークは65歳以上です。若者の自殺数はそれらの半分以下ですが、私たちは若者の自殺に対してはるかに敏感に受け取っているため、重要な問題として取り上げられます。
また、自傷行為や自殺願望など、自殺に関連しているが自殺ではない現象は他にもあります。スペインではパンデミック以来、自殺願望を持つ人や自傷行為をするティーンエイジャーの数が明らかに増加しています。これが自殺者数につながってしまわないように、より多くのリソースを投資して、適切な精神的な治療をしていく必要があります。

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Q:
なぜ自殺による死亡者数は減らないのでしょうか
A:
自殺に対する理解が不足しているためです。状況は5年前に比べてはるかに良くなりましたが、現在開発が始まっている自殺予防プログラムは、依然として有意義な方法で実施できていません。また、青少年の情動に関する心理的な理解も大きく不足しています。思春期の感情の激動は成人期よりもはるかに激しいものであり、家族と学校はそのような感情の安定化に重要な役割を持っています。さらに、自殺は時々衝動的に起こり、検出できるような異常行動がないケースがあることも認識しなければなりません。それでも、麻薬や銃火器へのアクセスを管理することは予防に役立ちます。
Q:
あらゆる年齢層を対象とした一般的な自殺予防策はありますか
A:
家族に自殺者がいる、過去に自殺未遂をしたことがある、男性、60歳以上、一人暮らし、慢性疾患や衰弱性疾患を患っているなどが、追加の危険因子として監視が必要だと考えられます。精神障害やうつ病、アルコール依存症や摂食障害と合わせて、これらの危険因子に注意を払い、適切な医学的、心理的、社会的サポートを提供することが重要です。
Q:
自殺に適切に対処するために、自殺に関する知識を向上させることはできますか
A:
「心理解剖」と呼ばれるアプローチがあります。人の死因が事故か自殺かを判断するのは、死因を特定したい保険会社の要請であることが多くなっています。心理解剖では、具体的なそれぞれのケースにおいて、どのような状況が命の喪失につながったのか、亡くなった人の親族や周囲の人の協力を得て心理を掘り下げます。この研究は非常に複雑なため体系的に行われていませんが、研究から得られた変数は、より良い自殺予防プログラムを確立したりさまざまな年齢層に対する寄り具体的な治療法を発見したりするために役立つはずです。

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エチェブルア氏は「自殺とは、公衆衛生上の問題です」と著書の中で述べており、私たちがそれをよりよく理解することで、適切な予防措置を講じることを困難にして生存者の苦しみを増大させている偏見と、闘えるようになることが重要だと強調しています。

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