「いろんな場所を訪れること」が精神疾患を持つ人の幸福度を上昇させるかもしれない

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運動はさまざまな疾患のリスクを軽減し、メンタルヘルスを改善することが知られていますが、ジョギングや水泳などの激しい運動をするのは大変です。精神疾患を持つ人々の動きをGPSで追跡した研究では、単に「いろんな場所を訪れる」だけで患者の幸福度が上昇することがわかりました。
The spatiotemporal movement of patients in and out of a psychiatric hospital: an observational GPS study | BMC Psychiatry | Full Text
https://bmcpsychiatry.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12888-021-03147-9

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Activity is good. Varied activity is better | University of Basel
https://www.unibas.ch/en/News-Events/News/Uni-Research/Activity-is-good-Varied-activity-is-better.html
There's One Simple Aspect of Everyday Life Linked to Better Wellbeing, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/theres-one-simple-aspect-of-everyday-life-linked-to-better-wellbeing-study-finds
運動が身体的な健康だけでなく精神的な健康も促進することは以前から知られていますが、関連する研究の多くは意図的な運動プログラムの影響に焦点を当てており、日常生活の中で行われる自然な運動がもたらす効果についての研究はあまり多くありません。
そこで、研究当時スイス・バーゼル大学の臨床心理学者だったアンドリュー・グロスター氏らの研究チームは、精神疾患を持つ患者106人からスマートフォンのGPSデータを収集し、1週間にわたり患者たちがどれほど移動したのかを追跡しました。
被験者の精神疾患は気分障害・不安障害・パーソナリティ障害・強迫性障害など多岐にわたり、病院に入院する患者もいれば在宅で通院している患者もいました。また、位置の追跡だけでなく主観的な幸福感や心理的な柔軟性、精神疾患の症状といった項目についても調査が行われたとのことです。
GPSによる移動記録と聞き取り調査の結果を分析したところ、被験者の空間的・時間的な移動が大きければ大きいほど幸福度が増していることが判明しました。一方、移動の多さは精神疾患の症状自体にはほとんど影響を及ぼしませんでした。

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今回の研究では、通院患者は入院患者よりもかなり大きな動きを示したほか、安全な場所を離れることの恐怖や不安を抱える患者は、活動する範囲がはるかに狭いこともわかりました。しかし、精神疾患がもたらすその他の症状は、患者の日常的な動きに影響を及ぼさなかったとのこと。
グロスター氏は、「私たちの結果は、運動だけでは精神疾患の症状を軽減するのに十分ではないものの、少なくとも主観的な幸福感を改善できることを示唆しています」と説明しています。
この研究は小規模かつ限定的なものでしたが、研究チームは「今回の結果は移動パターン(距離・目的地の数・目的地の変動性など)が、患者の活動機能や幸福度の指標として役立つ可能性があるという事実を示しています」と述べました。

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