週55時間以上働くことで年間75万人が死亡しているという調査結果、労働による死亡率は女性よりも男性が3倍も高い

週55時間以上働くことで年間75万人が死亡しているという調査結果、労働による死亡率は女性よりも男性が3倍も高い - 画像


1年間で仕事が原因で命を落とす人の数は約300万人と推定されています。このうち、75万人は週55時間以上の労働が原因で死亡していることが、国際労働機関(ILO)が発表した調査により明らかになりました。
Occupational safety and health: Nearly 3 million people die of work-related accidents and diseases
https://www.ilo.org/global/about-the-ilo/newsroom/news/WCMS_902220/lang--en/index.htm
Working more than 55 hours a week kills 750,000 people a year worldwide | Health | EL PAÍS English
https://english.elpais.com/health/2023-11-28/working-more-than-55-hours-a-week-kills-750000-people-a-year-worldwide.html

週55時間以上働くことで年間75万人が死亡しているという調査結果、労働による死亡率は女性よりも男性が3倍も高い - 画像


現地時間の2023年11月26日、ILOが「より健康で安全な労働環境を求める呼びかけ」という名称の調査レポートを発表しました。このレポートによると、2023年時点の世界人口は約3億9500万人ですが、1年間で約296万人の労働者が業務関連の事故や病気で死亡していると推計しています。このうち260万人は循環器系問題・がん・呼吸器疾患などの疾患により死亡しており、33万人は労働災害により死亡しているそうです。
労働者の業務関連の死亡数は人口の増加と比例して増加しているわけではなく、21世紀初頭よりも業務関連の死亡率は少なくなっている模様。ILOの調査によると2000年から2019年にかけて、業務関連の死亡者数は12%増えていますが、同じ期間に労働人口は26%増えています。ILOは「病気の診断ツールが過去20年間で大幅に改善されたことで、検出される症例が増加しました」と記し、技術の進歩により疾病がより簡単に発見できるようになり、死亡率が減ったと推測しました。
ILOの調査レポートは世界保健機関(WHO)と協力して作成されたもので、業務関連の死亡事例を一般的なリスクと関連付けています。以下のグラフはどういったリスクが労働者の命をおびやかしているのかをまとめたもので、最も多くの労働者の命を奪っているのは週55時間を超える「長時間労働(Long workday)」(74万4942人)です。以下、「ガスと煙(Gases and smoke)」(45万381人)、「怪我(Injuries)」(36万3283人)、「アスベスト(Asbestos)」(20万9481人)、「ケイ素(Silicon)」(4万2258人)、「ぜん息(Asthma)」(2万9641人)、「紫外線(Ultraviolet radiation)」(1万7936人)、「ディーゼルエンジンの排気ガス(Diesel engine fumes)」(1万4728人)、「ヒ素(Arsenic)」(7589人)、「ニッケル(Nickel)」(7301人)の順に続きます。

週55時間以上働くことで年間75万人が死亡しているという調査結果、労働による死亡率は女性よりも男性が3倍も高い - 画像


調査では上記のリスクを病的状態・障害・早死により失われた年数を意味する障害調整生命年(DALY)とも関連付けています。労働者にとって最も大きなリスクをもたらすのは業務関連の障害(2644万人)で、続いて週55時間を超える長時間労働(2326万人)、人間工学的要素(1227万人)、煙やガスへのばく露(1086万人)の順です。
この他、職業上のクロムへのばく露に起因する気管・気管支・肺がんの発生率は、2000年から2016年の間に2倍に増加しました。アスベストへのばく露に起因する中皮腫は40%、非黒色腫皮膚がんの割合は2000年から2020年までの間に37%以上増加しています。一方で、ぜん息の引き金となる粒子状物質・ガス・煙霧へのばく露による死亡率は、20%以上減少しました。
労働者の死因の32.4%が循環器疾患、27.5%ががん、14.3%が呼吸器疾患、11.3%が怪我、7.2%が感染症、3%がぜん息、2.9%が神経精神疾患、0.95%が泌尿生殖器系疾患、0.94%が消化器系疾患、0.15%がその他の疾患であることも明らかになっています。さらに、レポートによると世界中で1300万人以上が「仕事が原因で視覚障害を抱えている」そうです。
労働者が業務関連で死亡した際の死因を医学的に分類すると以下のグラフの通り。最も多いのが「心血管疾患(Cardiovascular diseases)」(32.4%)で、以下「がん(Cancer)」(27.5%)、「呼吸器疾患(Respiratory illnesses)」(14.3%)、「怪我(Injuries)」(11.3%)、「感染症(Infectious diseases)」(7.2%)、「その他(Other)」(7.9%)の順に並びます。

週55時間以上働くことで年間75万人が死亡しているという調査結果、労働による死亡率は女性よりも男性が3倍も高い - 画像


レポートでは1年間の死亡数の6.7%を業務関連の死亡が占めています。地域別でみると業務関連の死亡率が最も高いのがアフリカ(7.4%)で、アジアおよび太平洋(7.1%)、オセアニア(6.5%)の順に続きます。ヨーロッパやアメリカでは業務関連の死亡率が低いそうですが、ILOは具体的な数字を出しておらず、国ごとの詳細な数字も公開していません。
ILOによると業務関連の死亡と最も密接に関連しているのが農業・林業・漁業・鉱業・建設業・製造業であるとしており、労働者が「安定または定期的な収入と、十分な法的あるいは社会的保護」を欠くケースに警鐘を鳴らしています。なお、業務関連の死亡率は男性が10万人中51.4人であるのに対して、女性の場合は10万人中17.2人とはるかに少ないことも強調されています。

ジャンルで探す