JR九州「かんぱち・いちろく」公開、車両形式「2R形」 - 写真76枚

●「いさぶろう・しんぺい」など改造、大分・福岡の風土がモチーフに
JR九州は19日、新D&S列車「かんぱち・いちろく」の完成披露式典と車内報道公開を実施した。現在開催中の「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」に合わせ、「ゆふ高原線の風土を感じる列車」をコンセプトに、4月26日から運行開始する。

新D&S列車「かんぱち・いちろく」は、かつて「いさぶろう・しんぺい」として活躍したキハ47形2両と、JR九州管内の普通列車等で活躍したキハ125形1両を改造し、全席グリーン席の3両編成(合計定員60人)に。車両形式は「2R形」になるとのことだった。

各車両とも昨年10月に小倉総合車両センターへ入場し、室内解装作業(2023年10月頃~)、室内ぎ装作業(2024年1月頃~)を経て今月竣工。完成披露の日を迎えることとなった。

車両デザインは鹿児島市のデザイン会社「IFOO(イフー)」が担当。外観は艶のある黒色を基調としており、車体側面にゆふ高原線(久大本線久留米~大分間)の路線図をモチーフとしたゴールドのライン、その上下にゆふ高原線の駅名によるエッジラインが入る。「かんぱち・いちろく」のロゴマークも配置された。車体に沿線の景色が映り込み、車両全体で雄大な風景を表現するという。

由布院・大分・別府方面の先頭車となる1号車「2R-16」(元キハ47形、定員31人)は、畳個室を1室(定員6人)、ソファ席を5席(各席とも3人用)、BOX席を2席(6人用・4人用を1席ずつ)配置。大分・別府エリアの風土をモチーフにデザインされた。ソファ席は重厚感のある座り心地を重視するとともに、大分県の県旗に使われ、火山や温泉も想起させる赤色をベースとした温かい色彩に。テーブルに大分産の杉を用い、天井や手すりも杉板で統一。木の温かみを感じる客室とした。

博多方面の先頭車となる3号車「2R-38」(元キハ47形、定員29人)は、畳個室を1室(定員6名)、BOX席を8席(4人用を3席、3人用を1席、2人用を4席)配置し、車いす対応座席も2枠準備している。福岡・久留米エリアの風土をモチーフにデザインされ、沿線の雄大な平野や山々を想起させる緑色と、福岡県の県章にも使われる青色をベースに落ち着いた空間を演出。テーブルに福岡産の杉を用いた。BOX席は2~4名でゆっくり過ごせる半個室型のプライベート空間とした。

畳個室は1・3号車ともに運転席側に設置。家族やグループなどさまざまなシーンで利用できる空間とされ、靴を脱いで室内に入り、大きな窓から沿線の景色を楽しめる。畳には熊本県八代産のい草を使用したという。1・3号車の天井に杉を用い、座席のテーブルに大分産・福岡産の杉を用いるなど、デザインを担当したIFOOが得意とする木材を生かしたデザインとなっている。

中間車の2号車「2R-80」(元キハ125形)は、乗客向けの共用スペース「ラウンジ杉」として使用。由布院・日田エリアの風土をモチーフにデザインされ、大きな窓から沿線の景色を望める。樹齢約250年の一本杉を使ったという長さ約7.88mの一枚板カウンターと、日田の底霧をイメージした天井により、天領地であった日田の豊かな自然を表現し、落ち着きのある洗練された雰囲気に。一枚板カウンターの端部にミラーサイネージが設置され、沿線の紹介動画等も楽しめる。

2号車のラウンジはビュッフェも兼ね備え、ゆふ高原線沿線の美味しい食べ物・飲み物と列車のオリジナルグッズ等を販売予定だという。

車内アートとして、「物語の入り口へ」がコンセプトのアート作品も制作され、座席の窓枠横や背面、1・3号車の乗降口など各所に設置。10組のアーティストによる24作品が装飾され、車内を散策しながら異なるテーマの作品を楽しめる。畳個室の室内に専用のアート作品も設置される。走行中の車内で食事も提供し、専用の「お重」は彩り鮮やかな6種類を用意。日田杉を使用した重箱に、小石原焼(福岡県東峰村の伝統工芸品)で制作した陶板をはめ込んだ。

「かんぱち・いちろく」は4月22日に大分駅、4月24日に博多駅でホーム展示(両駅とも外観のみ見学可能)を行った後、4月26日に運行開始。初日は特急「いちろく」号として運行され、別府駅で運行開始記念式典が行われる。別府駅を11時0分頃に発車し、途中の大分駅、由布院駅でに停車するほか、天ケ瀬駅(13時17分頃から約9分停車)、うきは駅(13時58分頃から約20分停車)で地元関係者らによるおもてなしも。久留米駅に停車した後、終点の博多駅へ15時47分頃に到着する。

翌日(4月27日)は特急「かんぱち」号として運行。博多駅を12時19分頃に発車した後、田主丸駅(13時22分頃から約12分停車)、恵良駅(14時52分頃から約16分停車)で地元関係者らによるおもてなしを予定している。由布院駅、大分駅にも停車し、終点の別府駅へ16時59分頃に到着する。

●「かんぱち・いちろく」運転日と料金は? 写真も一挙公開
博多発別府行の特急「かんぱち」号は月・水・土曜日、別府発博多行の特急「いちろく」号は火・金・日曜日に運行予定。車内での食事は曜日ごとに異なり、「かんぱち」号は福岡市の3店舗(和食2店舗、イタリアン1店舗)、「いちろく」号は大分市の3店舗(和食2店舗、フレンチ1店舗)がそれぞれ地元食材を使った食事を提供する。

「かんぱち・いちろく」はJR券と食事がセットになった旅行商品として発売。専用サイトでJR九州企画・実施分を販売するほか、全国のおもな旅行会社でも販売される。座席のみの販売や、「みどりの窓口」での販売は行わない。博多・久留米~由布院・大分・別府間において、1人あたりの旅行代金は畳個室の利用で大人2万3,000円(こども1万9,000円)、ソファ席・BOX席の利用で大人1万8,000円(こども1万5,000円)とのこと。

「ゆふ高原線」の愛称を持つ久大本線は、特急「ゆふいんの森」や「或る列車」(現在は整備中)をはじめ、観光客に人気の列車が多く運行されてきた。新D&S列車「かんぱち・いちろく」は、主要な観光地である由布院駅に停車するだけでなく、久大本線の各駅でおもてなしも行われる。沿線の人々と交流できる列車として、「ゆふいんの森」とはタイプの異なる列車になることを期待したい。JR九州のD&S列車といえば、これまで水戸岡鋭治氏による車両デザインのイメージが強かったが、「かんぱち・いちろく」は「脱・水戸岡デザイン」のD&S列車としても注目されている。

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