偏差値の高い学校ほど「良い学校」ではない? 偏差値に惑わされないで!

子どもを中学受験させるか。どの中学校を目指すか。塾はどこを選ぶか。そして、どうすれば合格させられるのか――。『中学受験のはじめ方』は、子どもの中学受験に悩む親にオススメしたい本です。中学受験で受かるために必要な、「知識」と「覚悟」がすべて詰まっています。受験成功に必要なのは親の「知識」と「覚悟」なのです。YouTubeチャンネル登録者数9万人超えの「にしむら先生」が、中学受験を考えたときに「やるべきこと」をゼロからわかりやすく教えてくれます。2024年現在の中学受験事情を網羅した1冊を、ぜひ参考にしてみてください。※本記事は書籍『中学受験のはじめ方』(西村創/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

『中学受験のはじめ方』(西村創/KADOKAWA)

4 偏差値はなかなか上がらなくて当然

 がんばって勉強した後に受けた模試で、偏差値が上がらないことがあります。むしろ下がってしまうこともあり得ます。

 成績というのは、勉強してから成果が出るまで、3カ月はかかるものです。夏休み期間の7~8月に一生懸命に勉強したなら、その成果は9月の模試ではすぐに出ず、10~11月の模試で出るのです。

 模試を受けるほかの受験生たちも、日々勉強をがんばっています。マラソンのレース中に自分が走るスピードを上げたとしても、周囲も走るスピードを上げたら、順位は上がらないですよね。

 偏差値も同じです。現状維持するだけでも大変なのです。ですから「偏差値が変わらないから、成果が出ていない」と考えるのは誤りです。偏差値が変わらないときは「周囲と同じくらい学力が上がっている」のです。

▶ 偏差値で学力を測るのは危険

 勉強すれば、それだけ学力は上がります。知らなかったことを知り、できなかった問題が解けるようになっているのです。偏差値に表れなくても、学力は上がっています。

 でも、相対的なものさしである偏差値は違います。学力が上がっていても偏差値は下がるということがあるのです。勉強しているのであれば、偏差値に惑わされてはいけません。

 勉強してもすぐに偏差値が上がらないのと同様に、ちょっとくらい勉強をサボっても、偏差値はすぐに大きくは下がりません。偏差値だけで勉強の成果を測ろうとすると、「自分は勉強しなくても成績が上がるタイプかも」といった勘違いにつながります。

 その勘違いをしたまま勉強しないで受験期を迎えると、取り返しがつかないことになります。

5 がんばっても超えられない偏差値の壁がある

 偏差値がなかなか上がらないのは「努力が足りないから」でしょうか。もちろん、努力すれば偏差値をある程度上げることはできますが、その「ある程度」が「どの程度」なのかは、個人差があるように思います。

 たとえば、小学校では50m走という競技がありますが、私はいくらがんばっても9秒を切ることができませんでした。ダンスも絶望的で、周囲とテンポが必ずズレて、反対の動きをしていました。

 でも、運動神経が悪いかというとそうでもなく、スキーなら学校で誰にも負けないくらいでした。

 人には向き不向きがあります。生物は、生まれたときに遺伝によって、すでにかなりの能力が決まっているんですよね。だから、「これ以上、上げるのは難しい」という、超えられない偏差値の壁があるのも事実です。

 こんな話をすると「うちの子はこのあたりが限界かも……」と嘆く保護者や、「勉強ができないのは遺伝だから仕方ない」と親のせいにする子どもが出てくるかもしれません。

 でも9割の子は偏差値の壁にまだまだ到達していなくて、自分に合った勉強の仕方を見つけられていなかったり、そもそもの勉強量が足りなかったりして、その偏差値にとどまっているだけです。

 偏差値には、努力だけではどうにもならない領域があるのだということを頭に置いておき、がんばってもなかなか偏差値が上がらないときこそ、「努力不足だ」とわが子を責めない、親も思い詰めないでほしいのです。

6 偏差値の高さと入試問題の難しさは比例しない

 偏差値の高い学校に受かるためには、相当難しい入試問題を解く必要があると思っている方が多いかもしれませんが、そんなことはありません。偏差値がさほど高くなくても難しい問題を出してくる学校もありますし、慶應義塾中等部のように、偏差値は最高レベルでも、問題はそこまで難しくない学校もあります。

 入試問題が易しいということは、それだけ高得点を取らないと合格できないということです。逆に入試問題が難しいということは、それだけ低い点数でも合格する可能性が高いということです。

 全体的な傾向として、大学付属校は入試問題が易しく、大学付属ではない進学校、特に新興の進学校は入試問題が難しい傾向があります。進学校は、大学進学実績が生徒集めの生命線ですから、大学入試で結果を出せる子がほしいのです。

 ですから、難問を解くのは苦手だけど、基本的な問題をミスなく解くのは自信がある、というタイプは、大学付属校の入試問題との相性が比較的いいといえます。

7 偏差値の高い学校ほど「良い学校」ではない

 偏差値の高い学校イコール「良い学校」とはいえません。偏差値の高い学校は、「人気の高い学校」です。でも人気があるものが、わが子にとっても良いものだとは限らないですよね。

 人気の映画や流行りの食べ物を体験してみて、「なんでこれが人気あるの?」と思ったことはないでしょうか。学校も同じです。多くの人が憧れる学校をめざす必要はないのです。

 そもそも、学校の偏差値は学校が決めているものではなく、塾や模試会社が決めています。しかも、固定的なものでなく、株価のように変動します。株価の操作は禁じられていますが、学校の偏差値は、作為的に上げることも可能です。たとえば、受験回数を増やして1回当たりの合格者を絞る、などは偏差値を吊り上げたい中堅校がやりがちな手法です。学校の偏差値に惑わされず、わが子が輝けそうな学校はどこか、という視点で学校選びをしたいものですね。

ジャンルで探す