「偏差値50=ふつう」ではない!? 受験の意外な落とし穴

子どもを中学受験させるか。どの中学校を目指すか。塾はどこを選ぶか。そして、どうすれば合格させられるのか――。『中学受験のはじめ方』は、子どもの中学受験に悩む親にオススメしたい本です。中学受験で受かるために必要な、「知識」と「覚悟」がすべて詰まっています。受験成功に必要なのは親の「知識」と「覚悟」なのです。YouTubeチャンネル登録者数9万人超えの「にしむら先生」が、中学受験を考えたときに「やるべきこと」をゼロからわかりやすく教えてくれます。2024年現在の中学受験事情を網羅した1冊を、ぜひ参考にしてみてください。※本記事は書籍『中学受験のはじめ方』(西村創/KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

『中学受験のはじめ方』(西村創/KADOKAWA)

偏差値は受験界の魔物

 わが子の学力が、今どの程度なのかを知るための基準のひとつが「偏差値」です。受験をする以上、偏差値から目を背けることはできません。でも、わが子への期待からつい熱くなり、テストのたびに偏差値を見て一喜一憂していては、受験までメンタルが持ちません。

 偏差値は便利な指標であると同時に、受験界の「魔物」でもあると私は思っています。偏差値の持つ負の力に当てられた親によって、しばしば教育虐待といえるような問題が起こっているからです。子ども本人も、偏差値が上がらなかったことで、受験が終わってからも自信をなくしたまま人生を送っている子が少なくありません。

 こうした悲劇は、偏差値についての誤解から生まれます。ここでは、よく誤解されがちな7つのポイントを中心に、偏差値について説明していきます。

1 中学受験の偏差値と高校受験の偏差値は別物

「偏差値50」と聞いて、どんな印象を持つでしょうか? 「ふつう」と感じる人が多いのではないでしょうか。偏差値50というのは、平均ど真ん中、その模試での平均点と同じということですからね。

 でも、その「偏差値50=ふつう」というのは、高校受験の話です。中学受験で偏差値50を超えるのは、生半可なことではありません。

 高校受験の模試は、公立中学の3年生のほぼ全員が受験するため、学力最下位層も含まれています。幅広い層の中で見た位置づけです。一方、中学受験の模試を受験するのは小学生の学力上位層です。

 高校受験のイメージで中学受験の模試の結果を見ると、わが子の偏差値が思った以上に低く感じることでしょう。でもそれは、わが子の学力が低いのではなく、もともと学力が高い子たちの中での位置づけだからなのです。

2 3ポイント程度の偏差値の違いは誤差

 偏差値というのは、同じ模試を受けた人たちの中で自分の位置がどれくらいかを示す指標です。相対的なものですから、自分自身のでき具合にかかわらず、模試を受けた人たちのでき具合や、模試を受けた人の層次第で、自分の偏差値は上下します。

 また、自信がなくて適当に書いた答えが当たったり、逆にケアレスミスでバツになったりと、それくらいのことでも点数が上下し、偏差値は変わってしまうのです。3ポイント程度の偏差値の上下は「差がないに等しい」と考え、模試の成績表が返ってくるたびに一喜一憂しないことです。

 また、偏差値61の学校が、偏差値58の学校よりも合格しづらいかというと、体感できるほどの違いはありません。別の模試の偏差値表では、この2校の学校のランキングが入れ替わっていることもあります。学校選びのうえでも、数ポイントの偏差値の違いは過度に気にしないことです。

3 偏差値は模試の受験者層によって大きく異なる

 市販の本や塾からの資料を見て、「この学校の偏差値、この本では62となっているけれど、塾からの資料では52となっている。どちらが本当なのだろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか。

 答えは「どちらも本当」です。偏差値は、受けた人たちの中での自分の位置づけですから、模試によって全く違う数値が出ます。

 極端な例を挙げると、同時期に受けたサピックスオープンでは偏差値40、首都圏模試は偏差値60というように大きく違っていても、それはあたりまえのことなのです。サピックスオープンは学力上位層が受験して、首都圏模試は幅広い学力層の子が受験する傾向にあるからです(実際には、SAPIXのテストを受ける層が首都圏模試を受けることは、ほとんどありません)。

 さらに言うと、首都圏模試の偏差値から20を引くとSAPIX偏差値になるといった数字操作も、意味がありません。受ける模試が異なれば受験者層も異なりますから、異なる模試の偏差値を比べても意味がないのです。

▶【後編へ続く】偏差値の高い学校ほど「良い学校」ではない? 偏差値に惑わされないで!

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