宇宙人はいるのか――長年の疑問に、天文学者・本間教授から納得の回答「天の川に地球に似た惑星は10万個」

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今回は「宇宙人はいるの?」「宇宙人にはどうやったら会える?」という疑問について、人類初ブラックホールの撮影に成功したEHTプロジェクト日本代表・本間希樹国立天文台教授の解説を、著書『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』よりお届けします。

知れば知るほど、奥深いですよ!

Q. 宇宙人は、この宇宙にいるの?

A. いないと考えるほうが難しい

▲天の川には数千億個の星があり、 その周囲の地球に似た惑星で生命が誕生してもふしぎではありません。 ただどこかの惑星で生命が誕生しても、それが文明を持つまで進化するかどうかはまったく予想できません。 地球の恐竜は1億年以上繁栄しましたが文明を持ちませんでした。一方、人類はわずか数百万年で文明を作りました。
(『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』より)

天の川だけで地球に似た星は10万個以上?

宇宙人はこの広い宇宙のどこかに必ずいます。

そんなことをいうと、「えっ、本当?」と驚くかもしれませんが、なによりもまず、みなさんもこの宇宙に生まれた「宇宙人の一種」です。この宇宙では、一定の条件が満たされれば生命が誕生し、それが進化して文明を持つことが、地球ですでに実証されているのです。

では、太陽系の外にも地球のように文明を持つ宇宙人がいるのでしょうか?

天の川には数千億もの恒星があります。その周囲で、岩石型でハビタブルゾーンにある惑星、つまり地球に近い惑星が見つかりはじめています。

太陽と同じくらいの質量を持った恒星が、現在天の川に仮に1億個あるとして、そのうち1000個に1個が、地球のような惑星を持つとすると、天の川に地球に似た惑星はなんと10万個もあることになります。太陽よりも軽い恒星も含めると、この数はさらに増えます。

地球に似た惑星が10万個として、どれだけの数の惑星で文明が誕生するかを予想するのはとても難しいです。

ただし、少なくとも1個(=地球)は存在するわけですから、その総数が1でなくて2か3、あるいは10や100であってもまったくふしぎではないのです。

そしてさらに天の川の外の宇宙に目を向けると、天の川のような銀河が数千億個以上あるといわれています。

そこにもたくさんの星や惑星があることを考えると、そこでも宇宙人が誕生している可能性は十分あります。

このように天文学的に考えると、「宇宙で文明を持つ生命体は地球人だけ」と考えるほうが無理、ということになるのです。

✅なるほどメモ
銀河系に存在し人類と接する可能性のある地球外文明の数を求める式にドレイクの式があります。 この式では、 知的生物の発生確率や、文明の継続期間などが、 宇宙人を発見できるかどうかのカギとなります。

Q. 宇宙人に会いたい!どうやったら会えるの?

A. もっとも近い星に宇宙人がいたとして 今の技術では行くのに4万年かかる!

(『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』より)

宇宙人はどこかにいるはずなのに、まだ直接会えていないのはなぜでしょう? これは宇宙があまりに広大であることが最大の理由です。 

たとえば、太陽系からもっとも近い恒星はプロキシマ・ケンタウリという星ですが、それでも光の速さで4年以上かかります。人類が実現したもっとも速い人工衛星の速度は秒速30kmほどで、その速さでプロキシマ・ケンタウリ星に向かうと、4万年以上もかかってしまいます。 現在の技術では何万年も宇宙を旅行することは不可能です。 

では、地球人が会いに行くかわりに、宇宙人が地球まで来てくれないでしょうか? もし宇宙人がワープのように宇宙空間を自由に移動する技術を持っていたとしたら、地球上には宇宙人がすでにうじゃうじゃ来ているはずです。それが起きて いないことからワープなどを使って宇宙人と会うのも難しそうです。
 
宇宙人と直接会うかわりに宇宙人の存在を確認する方法として期待されているのが、宇宙人の出す信号(電波や光など) をキャッチするというものです。たとえば地球では、日常的に通信や放送で電波を使っていて、それが宇宙にもれだしています。ですので、それをキャッチした宇宙人が地球人の存在に気づく可能性があります。 

逆に、宇宙人が出している信号を探して宇宙人の存在を確認しようというのが、地球外知的生命体探査=SETI (セチ) とよばれるものです。 

ただし、どの星に宇宙人がいるのか、またどんな信号を出しているのか、などがまったくわからないので、雲をつかむような話になります。 それでも、すでにSETIの観測は始まっています。 

いずれは宇宙人が使っている電波がキャッチされ、宇宙人の存在があきらかになる日が来るかもしれません!

▲1977年に打ち上げられたボイジャー1号・2号に搭載されたレコード盤。カール・セーガンを委員長として、世界の画像や、動物の鳴き声、雷のような自然音、そしてさまざまな国のあいさつや音楽が集められました。宇宙人にいつか届くといいですね。
(『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』より)

※本記事は、『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』(著:本間希樹、イラスト:ポピコ、講談社刊)より抜粋・再編集して作成しました。

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『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑』(講談社)
¥1,540

本間 希樹

この記事の執筆者
本間 希樹
国立天文台水沢VLBI観測所所長・教授
1971年アメリカ合衆国テキサス州生まれ、神奈川県育ち。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程を修了し、博士(理学)の学位を取得。国立天文台研究員等を経て、2015年より「国立天文台水沢VLBI観測所」の所長を務める。専門は「電波天文学」。2019年に人類史上初の「ブラックホール」撮影という偉業を成し遂げた国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の日本チーム代表を務めた。2017年よりNHKラジオ『子ども科学電話相談』の回答者も務めている。著書に『巨大ブラックホールの謎』(講談社ブルーバックス)、『国立天文台教授が教える ブラックホールってすごいやつ』(扶桑社)、『深すぎてヤバい宇宙の図鑑』(講談社)など。

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