逆境で真のリーダーへ。主将の日記全文③/甲子園が消えた夏 vol.5

07/31 21:00 au Webポータル

甲子園が消えた夏 vol.5 〜逆境で真のリーダーへ。主将の日記全文③〜

※この記事は2020年7月に掲載したものです。

日本列島を襲った新型コロナウイルス。その影響で夏の甲子園が中止となり、神奈川県の強豪・向上高校硬式野球部の選手たちも落胆していた。向上高校は2014年夏の神奈川大会で準優勝。今年6月には、悲願の甲子園初出場に向け全面人工芝のグラウンドも新設した。今回、mediba編集部では同校3年生の日記をもとに、リアルな心の動きをリモートで取材。5回にわたって特集する。

最終回は、福島瞬歩(ときほ)主将の日記を全文公開する。困難な状況の中、3学年で部員数100人を超える大所帯を束ねてきたリーダーの心の軌跡をたどる。

「多くの人にアドバイスを求めて選択肢を増やす」

5/11 福島
おはようございます。前回の投稿では腰の調子が悪くバッティングができなかったと書きましたが、しっかりとコンディションを整えて実打をすることができました。やはり大谷選手や森選手などをみても割れが重要だと改めて感じて、でもそれを意識しすぎると後戻りになってしまうので、阿部慎之助選手の足の上げ方を参考にして無理なく割れを作るということをしました。少しですが以前より割れを作ることができたと思います。動画を見ていただければわかるように、ためを作ろうとしすぎて足を上げた時にキャッチャー側にいってしまっているので左膝を曲げてためを作るということを今日のスイングから意識してやっていきたいと思います。感触は今までよりも良くなっているのでこのフォームを継続してみます。そして、打球角度が少し上がり良くなりました。

打撃グループのClassiを見ていると海老根があんなにしっかり考えて発言していて少し驚きました。なので海老根に連絡を取りバッティングのことについて話をしました。僕も知識は付いてきたのでお互いに意見を交換しました。また横山も練習がある時からいろいろアドバイスをしてくれていたので連絡をとり今までよりもアドバイスをしてもらう人数を増やしました。同じようなことも指摘されますが、その人にしかない考えや感覚を聞くことによって自分が選択する幅というのがどんどん広がると思います。選択肢が多いということは良いことなので自分で調べるのはもちろん、多くの人にアドバイスを求めて選択肢を増やしていきたいです。工藤コーチ、動画を見てのアドバイスをよろしくお願いします。守備グループについての活動ですが、以前の僕とスタッフのやり取りを見てもう一度どういうところを大事にしてやっていくのかや少し変更するところなどを考えてもらいました。多くの選手が意見を寄せてくれました。平日の時間で1時間ほどなら時間を作ることは可能だと思うので坂本部長、Zoomを利用してシートノックのことや練習再開後どういったことをやっていくかなど話し合うのはどうでしょうか。選手はZoomの使い方などは理解しているのでできます。検討のほどよろしくお願いします。最近、中学時代の同級生と連絡をとっています。普段の練習や生活についていろいろ聞いてみました。練習時間も全くと言っていいほど違いました。それを聞いて短期集中型の僕たちはもっと濃い、質の良い練習をしなければいけないと感じました。この期間で改めてどういう練習にしなければいけないのかというのを考えていきたいと思います。

平田監督に質問があります。僕は大学駅伝がとても好きです。箱根駅伝は毎年見たり、YouTubeでも全日本駅伝や出雲駅伝などを見るなどかなりファンなところがあります。特集などもYouTubeにあるのでそれを見ていてすごく考えさせられる言葉がありました。青山学院大学が箱根駅伝4連覇を成し遂げた時の主将がなかなか結果が出ずにチームもまとまらなく苦しんでいたとに監督にかけられた言葉です。「チームをまとめようとするな」「お前のまとめたチームではなく、お前の姿勢を見てまとまったチームの方が強いんだ」という言葉です。この言葉についてどうなのか考えてみました。主将がまとめたチームというのは少しやらされてる部分があるとも捉えることができます。姿勢を見てまとまったチームは周りの選手が自分ももっとやらなきゃと思いそうなっていくのだと思います。自分が主将ではなく役職についてない選手だとしたら姿で見せてくれるリーダーは説得力もありついていこうとなると思います。監督はこの言葉についてどう考えますか??よろしくお願いします。

5/11 平田監督
福島へ おはようございます。質問ありがとう。青山学院大学の駅伝部はここ近年、優秀な成績を残していて注目もされているから目にする機会も多いし、この言葉は僕も聞いたことがあります。確かに「お前の姿勢を見てまとまったチームの方が強い」これは理想型だと思います。主将が何も言わなくても、その後ろ姿を見て仲間が察してくれて、感じ取ってくれる。こうしたチームは、強いのは確かです。しかし、ここまで来るのに多くの時間がかかっているはずです。伝統という時間、大学4年間という時間、そして18歳から22歳という年齢層。総合的に考えていく必要があると思います。僕も高校3年生の時に主将に任命してもらいました。そして、仲間の前で「あまりうるさいことは言いたくないから、自分で考えて自覚を持って生活してほしい」と言いました。そして、あまり口うるさく言わずに、だらしがない選手にも、そこまで言わずにいるキャプテンでした。その時は、それでいいと思っていました。やらない選手は仕方がない、自分で気づかないと直さないからと。ですが、今となっては、気づいたことは言っておけばよかったと思っています。

なので、今この年になっても、「言わないことは正しいことだけではない」「言って気づかせてあげることが正義になることもたくさんある」と思っています。人は嫌われたくないし、言うよりも言わないほうが楽であるのはわかります。また、言わないでも動いてくれる集団は強く理想であるのもわかります。ですが、100人いれば自分から動けるのは2割、どちらでもない層が6割、全く理解していない層が2割という構造はどこの組織にも当てはまります。青山学院のように、レギュラーの2割に焦点を当てて、チーム運営しているチームは主将も上位層の2割が理解していればいいので、口うるさく言わなくて自分の姿勢で理解してくれるかも知れませんが。本校は「全員の力を結集するチーム」なので、理解できていない2割の下位層の選手にも理解してもらえるように、主将として働きかけてもらわないといけない。レギュラーだけのチームを作る気はさらさらありません。ここが大きな違いがあるのではないかと思います。

5/11 工藤コーチ
おはようございます。動画の投稿ありがとう。確認しました。まず、福島が言う通りで、私も海老根の回答には驚きました。しっかりと自分の考えを持っているのだと感じたので、もっとチームに発信してほしいと思いました。横山も福島に相談されて充実している様子が伺えます。このような環境でも、意欲がある集団であれば、失敗はあれど必ず良い方向に向いていくはずです。もっと枝葉を広げてチームを自分自身を良くしていきましょう。フォームも見させてもらいました。下半身の使い方はだいぶ安定してきましたね。

適度な体重移動、踏み込みの強さがありながらも軸がぶれずにスイング出来ている点も以前より向上している印象があります。右足の上げ方は今後試行錯誤してみてください。阿部選手のようなイメージをもつのは良いと思いますが、バランスを崩さないように注意してください。わかっていると思いますが、阿部選手は強靭な下半身があってこそのフォームだと思いますので。それから一つ気になった点は、前回より若干バットが遠回りしている気がします。下半身に意識があったからかもしれませんが。インコース対応はどうでしたか?少し窮屈になりそうな気がしなくもないですが。動画を見る限りでは、体の仕上がり具合も良さそうですので休校明けが楽しみですね。

福島(左) (提供写真)

「この言葉を見てエネルギーになってくれれば嬉しい」

5/14 福島
おはようございます。オンライン授業が始まり3日が経ちました。まだ最初ということでなかなかうまくいかないところや難しいこともありますが、この環境に少しでも早く慣れて、効率をどんどん上げて濃い充実した1日にしていきたいと思います。進路実現に向けて自主的に勉強する時間も増やしていけたらなと思います。中䑓や稲葉がこういう時も気を使ってくれるのでとても助けられています。他にも戸田など学習支援グループとして責任を持ちやってくれていることがすごく良いことだと思います。

バッティングでは前回指摘してもらった軸足のためかたと遠回りしすぎないということを意識しました。動画はこの間の日曜日にあげた実打の前々日に撮ったスイング動画と一番最近のスイングの動画の2つを載せました。軸足に乗せたときにキャッチャー側に体が少し逃げてしまっていたので左膝を少し曲げてためを作ることにしました。足を上げたときに軸足を意識することによって前の動画より割れができていると思います。左膝を曲げることによってスイングもさらに良くなり力が増した気がします。今回も三崎や横山、海老根などに見てもらいました。三崎の前回書いていた「超軸足打法」というのはどういうものなのか興味があったので聞き、松井秀喜さんを参考にしてると言っていたのでその動画を見たりまたそれに関連して他の選手の動画も今まで見ていなかったものがたくさん見られたのですごくプラスになりました。また、横山と海老根にも動画を送ってもらい見ることでどういうフォームなのか自分で分析したりできるので考える時間になり良い時間になるのでいろいろな人のフォームを見て考えていきたいと思います。

今日はプロ野球選手の名言で、体に恵まれなかった小さな選手のものを紹介したいと思います。

・小さい身体がハンデだとは思いません。気持ちで負けない限りは。立浪和義(元中日)
・野球というのは「小さい人はやってはいけない」というルールがあるわけじゃない。小さいなら小さいなりのプレースタイルがある。石川雅規(ヤクルト)
・身体が小さくても、野球には必ず「自分の居場所」があるものです。松本哲也(巨人)

僕は小さいわけではありませんが、身長が小さかったり体重が増えなくて体が小さい選手も人数が多い分たくさんいると思います。少しでもこの言葉を見てエネルギーになってくれれば嬉しいなと思います。

5/18 福島
おはようございます。前回の投稿から、素振りの量を増やしました。「こうしたい」「こうなりたい」という思いがどんどん強くなりバットを振りたいと良く思うようになりました。22時過ぎにするようにして、車も全然走っていなく静かで暗いのでとても集中してバットを振ることができます。また、スイング音で振れている時と振れていない時の差がわかるようになりました。昨日は海老名シニアのグラウンドで手投げをすることができました。東海大相模の加藤と西尾、赤嶺、松平と行いました。加藤とはノックはしたことがありましたが2人で手投げをやったのは中学の時以来でした。バッティングの良い選手なので良い緊張感でバッティング練習ができました。いつもより少し力を入れたボールで打ちました。動画は最後の方に撮影したため、下半身も疲れしっかり使うことができていません。素振りの時とは違い手打ちになってしまっています。後半になるとフォームが崩れてくるということはまだ体に染み付いてない証拠だと思うのでもっと振り込んでフォームを固めていきたいです。右脇の締めが甘くなるのは遠回りする原因になるのでその点も気をつけてやっていきます。加藤にアドバイスをもらって、左の肘が詰まっていて上手くバットを抜くことができていないので、構えをもっとゆったりにしてみたらと言われたのでそれも少し意識してみようかなと思います。またアウトコースの踏み出しや軸足も練習していきます。インコースは回れるようになってきました。昨日は今までで一番良い打球が行っていたので改善すべき点をしっかり改善してフォームを染み込ませていきたいです。後ろからの動画が上手く取れなかったので横からのみとなってしまいました。すみません。次の実打でしっかり撮ってきます。バッティング練習を行ったあと、ノックで汗を流しました。ノックが終わった後に送球練習に付き合ってもらいました。15球ほどタイム計測を行いましたが、半分くらいが1.9秒台で到達しました。最高タイムは1.91でした。平日、基本動作をやってきた効果が少し出たと思います。肩の調子も良かったのでこのタイムをいつやっても出せるように、再現性を高めていきます。

前回の配信から、引き続き三崎や横山、海老根と連絡を取りました。それに加えて、斎藤がバッティングのことで投稿していて改善点などが多く挙げられていたので、僕も勉強してきたことを生かして少しでも力になれればいいなと思い連絡をしました。動画も多く送ってきてくれて、できるだけアドバイスをしました。力になれたかはわかりませんがなってれば嬉しいなと思います。なので、今日の斉藤の動画を見て工藤コーチがどういうコメントをするのかというのも非常に興味深いです。丸選手がこんな言葉を残しています。「常にチームのために一打席を使う。それがチームの勝利につながる」これを見て、チームの一打席を自分に使っているという風にあまり考えたことはなかったです。チームバッティングだとか打線になるようにだとかそういう言葉はいろいろ聞いたことがあっても、丸選手のような感覚になっている選手は少ないのではないかと思います。そういう感覚に全員がなれば打線がさらに繋がっていくと思います。徹底事項も守れるのではないかと考えます。僕はこの言葉を常に頭に入れて打席に立ちたいと思いました。

5/18 工藤コーチ
こんばんは。返信が遅くなってしまい失礼しました。動画の投稿もありがとう。確認しました。また齊藤へのアドバイスもありがとう。見違えるように変わっていたので絶賛してしまいました。福島がアドバイスしてくれていたのですね。このように自分で考えて経験したことは、相手に伝える時にわかりやすく説明できるものです。まさにその事を実証してくれた形になったのではないでしょうか。動画も見させてもらいました。練習後半ということもあり、確かにあまり振れていませんね。下半身を使えないとスイングがこんなにも変わるというのがよく伝わってきます。できれば次回は後ろからと万全な状態での撮影をお願いします。別件ですが、守備グループのZoomミーティングも上手くいったようですね。打撃グループはミーティングではなく違った形式での開催を考えています。私も未知な部分が多い取り組みなので、常識にとらわれず打撃グループ独自の方法で行いたいと思います。様々な形式を実践していく中で最終的にはチーム全体に還元できることを増やしていきましょう!

5/21 福島
おはようございます。昨日、第102回全国選手権大会、49校の代表校を決める地方大会の中止が発表されました。春の大会の中止が決まった時はまだ夏があるから。と切り替えができました。もう夏しかないという思いでこの期間を過ごしてきました。どんなに環境が良くなくてもできることを全力で取り組みました。それが夏につながると信じて。しかし、僕たちの目標であった日本一は掴むことはもうできません。掴めなかったのならしょうがないと思いますが、僕たちには掴むチャンスすらありませんでした。もう1%も確率がありません。少し前から開催の中止が決定的になってきているというニュースが取り上げられていました。できなかった場合のことも少しは考えましたが、開催を信じていました。準備もいつもと変わらず続けてきました。正式に発表され、誰しもが受け止めたくない現実だと思います。ネットの記事で見るよりテレビのニュースで取り上げられているのを見るとほんとに中止なのかと現実を突きつけられている気がしました。

発表されてからやその前からも仲間にどう思うかを聞いてみました。やはり、大学野球を続けるのか続けないのかで気持ちは変わってくると思います。僕は高校野球で一区切りをつけます。だからこそ、この夏にかける思いは大きかったです。まだみんなにはキャプテンらしいところを何も見せることができていないです。勝利することが一番ですが絶対に自分が活躍してみんなを助けるんだ。と。勝負どころで一本出してチームを救うんだ。という思いでした。ほんとに悔しいです、試合で負けるより悔しいです。決してこの努力は無駄になることはないですが、何のためにやってきたのか、自分でもよくわかりません。県大会の独自開催の可否についてもいろいろ検討してるところだと思いますが、目標がなくなった今なにをモチベーションにやればいいのか正直わからないです。キャプテンがこんなことを言ってはいけないのかもしれません。ですが、全く切り替えることができません。キャプテンならば甲子園がなくても県大会が終わるまではみんなのモチベーションを保たせて引っ張っていき、みんなで最後までやりきれるようにするというのが僕の仕事だと思います。それは自分でもわかっています。これから気持ちの整理をしていくことになりますが、どういう風に前向きに捉えていけばいいかわかりません。

平田監督、僕たちと同じように開催を信じていたと思いますがこのような最悪の事態も想定してたと思います。目標がなくなった今、どういう方針でやっていくのでしょうか。今日の投稿を見ると、気持ちの整理が付かずに僕たちになんて声をかければいいのか、わからない状態でいるのではないかと思います。辛いのは監督も一緒だと思います。気持ちの整理ができてからで良いので返事をください。お願いします。工藤コーチ、あんなにもバッティングのことでアドバイスをいただいて見てくださっていたのに申し訳ないのですが、これからどう前向きに行動していけば良いのでしょうか。何をするにも気が入りません。言葉では表すことができないこの悔しさを工藤コーチが一番わかってくれるのではないかと思い聞かせていただきました。回答は今日中ではなくてもいいので聞かせて下さい。2年生には僕たちの分もほんとに頑張ってほしいです。秋の大会でも甲子園に行くことができます。このチャンスを無駄にしないでほしいです。今から最高の準備をして最高の結果を残してほしいです。新チームになってからじゃなくて今からしっかりやっておけば必ず良い結果につながります。僕もやれることは最大限貢献していきたいと思ってるので何かあれば頼ってもらいたいです。

5/21 平田監督
主将へ こんにちは。昨日の発表を受けていろいろな感情があります。部長から連絡がありましたが、明日18時から2、3年生だけでありますが、ミーティングを行います。本来なら同じ空間で面と向かって話すべき内容であると思いますが、画面越しではありますが、しっかりと話をしたいと思います。

「今の自分の状態でチームのために何かできるかと」

5/25 福島
おはようございます。まだ気持ちの整理も全くつかないです。(中略)みんなには自分からプラスの声をかけることができなくて、情けないみっともないキャプテンで本当に申し訳ない。もう少し時間をください。今日は2年生に向けて文章を書きました。今の自分の状態でチームのために何かできるかと考えた時にこれくらいしかなかったので手書きにして思いを込めて書きました。読んでもらえると嬉しいです。

福島が書いた手書きメッセージ1 (提供写真)

5/28 福島
おはようございます。スタッフの方々へ 先日の面談では情けない姿を見せてしまいましたが、あれから少し前を向くことができました。今後の予定がどうなるかはわかりませんが、県大会や試合のどちらかが必ずあると思います。主将としてみっともない姿は見せられないなと思いました。今はそれが少しモチベーションになり昨日から練習を再開しました。全開で練習をするにはもう少し時間がかかりそうですが前を向けてとてもほっとしています。これだけ悔しいのも最高の仲間とスタッフに出会えたからだと感じています。個人競技であったらこんなにも落ち込むことはなかったと思います。もう一度、仲間やスタッフに今までの感謝の気持ちを伝えるためにもあるべき姿でやっていきたいと思います。

監督や特に工藤コーチから「無力さを感じる」などの言葉が出てきていますが、決してそんなことはありません。僕たちのために今もいろいろと最善策考えてくれていると思います。ありがとうございます。また、先日も面談する機会を作っていただいたおかげで一歩踏み出すことができたので本当に感謝しています。3年生も気遣って連絡をしてくれた人、ほんとにありがとう。いろいろヒントをもらえました。これからは自分から良い影響を与えていけるようにしていきます。今日も2年生に伝えたいことを手書きで書いたので読んでみてください。

福島が書いた手書きメッセージ2 (提供写真)

5/28 平田監督
福島へ おはようございます。本校では、シーズン途中で主将を変えた事がなかったので、大きな賭けでもありました。こうして、1人の選手として努力してきたことを、87人のために努力できる人間へと成長できたこと。これは、自分のことしか考えていなかったら味わうことのない感情です。人には喜怒哀楽という感情が存在しますが、その度合いは人それぞれです。僕はいつも「人間らしく」「自分らしく」あるためには、この喜怒哀楽の振り幅が大きい人に魅力を感じます。なので、君たちにも「無」は止めようと言ってきたはずです。特に集団生活やチームスポーツに身を置いているのであれば、表情で相手に伝わるようになるといいと思っています。そして喜怒哀楽の中でも「喜」が多い集団には熱があるし、明るさがあるし人が寄ってくるのだと思います。高校生に涙は似合いません。月曜日には明るく元気に登校してきてください。もう立派な主将になっていると思います。

6/1 福島
おはようございます。今日はこの期間で得たこと、成長したことやそれをどう活かすかなど、この期間がどういうものになったのかを全選手書くことにしました。最初、休校になったときはこんなに長くなるとは想像もしていませんでした。休みが長くなる度、仲間やスタッフに会えない時間が増える度に、不安が大きくなっていきました。けれど、ClassiやZoomを通じて画面越しでありながらも関わる場を設けていただき、僕たちのためにいろいろなことを考えてくださったスタッフの方々には本当に感謝しています。緊急事態宣言の延長やオンライン授業の実施、甲子園、地方大会の中止などさまざまな事が重なり、スタッフミーティングを重ねたことだと思います。一番良い形でという思いで自分の時間ではなく僕たちのために時間を費やしてくれたと思います。登校が始まっても部活ができる日はいつになるかわかりませんが、今後その感謝の気持ちを僕たちが表現できるようにやっていきます。最後の夏を失った僕たち、当事者にしかわからない気持ちはありますが、僕たちのために動いてくれた人もたくさんいるのでその気持ちに応えたいという思いでいっぱいです。

この期間で一番力を入れたのはバッティングです。これまではいつか打てるだろうや守れれば良いという考えが少しありましたが、打てるキャッチャーというのをもう一度目指しました。こんなにバッティングについて考えたことはなかったです。毎回動画を撮れば三崎や関口など打撃グループの人に見てもらって、どうしても打ちたくて後輩にもアドバイスを求めました。キャプテンが後輩にバッティングを教えてもらうというのも情けないことではありますが、打ちたいという気持ちがそういう行動になったのだと思います。打撃やClassiの文章構成などを通じて後輩との連絡も多く取る事ができました。後輩でも自分から寄っていく大切さなど実感しました。これからも誰にでも声をかけられるそんな人でありたいです。1年生も入ってくるので誰よりも早く名前を覚えて積極的に関わっていきたいです。少しバッティングからは逸れましたが、アドバイスをくれた人に本当に感謝しています。三崎がいろんな人から連絡がある中、気にかけてくれたので必ず打って感謝を伝えたいです。

そして、工藤コーチも他の選手からの質問が多い中、毎回丁寧なアドバイスをしてくださりありがとうございました。中止が決まってから素振りをしない日が続きましたが、工藤コーチを思い出しやらないわけにはいかないと思いバットを振り始めました。必ず打ちます。勝負強いバッティングをします。時間の使い方というのがとても難しかったです。全て自分に任されているので効率の悪い一日を過ごすこともあったりしてすごく良い勉強になりました。最初の頃にみんなに1試合目(10時の試合)を想定してその頃にはマックスで動いてる状態を作ろうと言いました。監督からもその後、仕事ができる人は午前中に済ませるというふうに言っていたので今後の人生に活かしていきたいと思います。練習も同じで決められたことをやる方が楽で、自分たちで決めてやるという方が辛いと思います。やらされてやるという方が楽な事をすごく実感しました。自分で考えると頭が疲れてくるので毎日そういう感覚になれるように主体性を持ってやっていきたいです。Classiの投稿が多くあったので文章力というのも上がったと思います。同じ言葉を多用しないことやわかりやすく伝えること、読みたいと思える内容を意識して取り組んできました。言葉ではなく文字で伝えるのはより難しく相手が理解してくれているかもわかりません。読者の気持ちになり打つことで興味の湧く内容になっていくのだと思います。この先の人生においても、文面で伝えるという場面が増えると思うので読者の気持ちになり、分かりやすく伝えられるようにしていきたいです。

将来について深く考える事ができました。夢が揺らぎなかなか決まりませんでした。学部や学科すらなかなか決まりませんでした。けれど夢を見つけることができました。それは営業マンになることです。これは甲子園中止を聞いてから確実なものへとなりました。この向上高校で鍛えることのできたコミュニケーション能力や知ることのできた言葉の力など最大限に活かせる職業だと思います。今後は資格を合わせて取るかなど具体的な学校名を出して進路実現に向けて前進していきます。必ず、「社会で役立つリーダー」になります。目標はだめでも目的を達成させます。目標設定の大切さを知ることができました。目標があるだけでモチベーションが上がりやることなどが明確になります。なので何をするにしても目標を定めて取り組んでいけたらと思います。今後、いつ部活が再開できるかやどんな形の試合になるかもわかりませんが、再開が近づいてることはたしかです。まだ僕も切り替えられているかと言われたらできてないかもしれません。でももうやるしかないと思うので3年生の力を見せましょう!
取材・文/mediba編集部

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