なぜ那須川天心は初の地域タイトル戦の3日前に美人金髪ダンサーとの交際宣言をしたのか…「大谷翔平ばっかりで飽きちゃいませんか?」の“炎上発言”の真意も明かす

 日本ボクシング史を塗り替える7大世界戦「プライムビデオボクシング10」(13、14日・有明アリーナ)の公式会見が11日、東京ドームホテルで行われ、転向5戦目でWBOアジアパシフィックバンタム級王者決定戦に挑む那須川天心(26、帝拳)が、写真週刊誌「フライデー」で激写された24歳の金髪美女ダンサーとの交際を宣言する異例の出来事があった「試合だけでなく格闘家としてのすべてを見せるのがスタイル」の天心らしい言動。日本が誇るトップボクサーが8人も登場する2DAYS興行の中で話題と試合内容の両方でナンバーワンの注目度を集める決意だ。

 「付き合ってまだ2週間」

 7大世界戦の中で「プラスワン」の地域タイトルを戦う天心が異彩を放った。
 会見後の囲み取材で、先日、夜の“ラブラブ”ランニング風景を写真週刊誌「フライデー」に激写された24歳の金髪ダンサーとの交際を自ら認めたのだ。
「あんなハッピーなことはない。一緒にランニングしてね。まだ(交際)期間が短いのでどうなるかわからない…2週間しか付き合っていないのに、あんなに早くスッパ抜かれた」
 え?それ交際宣言?
「宣言は、ちょっとわかんない(笑)。真相は藪の中。ジャブは突き合っていますよ。距離が大事なんで」
 熱愛をボクシングに例えて笑いに変えたが“フライデーされた”ことの試合への影響はゼロだという。
「ここまで(調整が)順調に進み過ぎた。前回はスパーの調子が悪いとか、悩むことが色々あったが、今回はなかったんだけどああいう(フライデー報道)のがあって、やっぱあるんだな、と(笑)。でも“うわあ。どうしよう”はない。逆に気合が入った」
 初のタイトル戦の3日前にあっさりと交際を認めてしまう裏には天心独自のプロ哲学がある。
「格闘技は相手がいないとできない。常日頃から人に対して、相手の気持ちを考えるとか…マインド、心の持ちようでファイトスタイルが変わる。那須川天心という生き様を格闘技の中で見せたい。すべてを見せるスタイルでやっている」
 見事に気持ちがいい。
 何か話題を作ってやろうという裏はない。大人の世界にありがちな忖度もない。
ごく自然に自らの考えが口をつく。
 4日に日本テレビ系の報道番組「news zero」に出演して「テレビをつければ大谷翔平選手じゃないですか。みんなどうなんですか。飽きちゃわないですかね。それだけすごいことをしているということなのかなと思います」と発言してSNSで炎上騒ぎを起こした。朝から晩までドジャース大谷翔平がワイドショーやニュース番組で取り上げられる。メジャーリーグで前人未到の「54―59」を成し遂げて名実共に世界一の存在感を示し続けているので、それは当然と言えば当然。おまけに老若男女問わずに視聴率も稼げる。
「あの発言は大谷選手に言ったわけじゃない。そこだけを切り取られて回されちゃっている。でも僕はいい炎上だと思っている。あれで見てくれる人が多くなった。しっかりと勝って、回収して、次の日のテレビのニュースにして下さい」
 何かを計算づくで発言したわけじゃないが、結果的にプロ5戦目で初めてのタイトル戦となる10.14のWBOアジアパシフィック戦に向けて注目を集めるきかっけになったと前向きにとらえている。
 大谷の試合よりも天心の試合、メジャーリーグよりもボクシングを見て欲しい-ーという訴えではない。
「そういう理由で言ったわけじゃない」と何度も念を押す。
 それでも人生を賭けたボクシング愛がある。
「競技者として一番思うのは、自分のスポーツを誇れない奴はやる必要がないということ。オレはボクシングが一番面白いと思っている。格闘技、ボクシングより面白いものはないと常に思っている。どのスポーツに対してもそう。オリンピックを見てもそう」

 

 

 ボクシングのどこに魅力が?
「対峙して人と人が殴り合っているってまず面白いじゃないですか。芸術というか、競技になっていることが凄い。器具を使ってやる(競技)も面白いんですけど、いかに自分が強くても負けるときがある。何を用意していても“絶対に勝てる”はない。一回のミスが許されることが多い(競技もある)が、格闘技は一瞬のミスが命取りになって終わる。格闘技、ボクシングに勝るものはない。今はボクシングにめっちゃ、はまっている。好きなんです。正直外から見て地味だなと思っていたが、中へ入ると、色んなものが守られていて歴史もある」
 7大世界戦に埋もれるどころか、試合前の話題作りでは今のところ天心の一人勝ちだ。しかし、ボクシングは、結果がすべての世界である。しょっばい試合をしていたら「口だけ男」としてファンから、そっぽを向かれる。
 プロ5戦目で初めて挑む地域タイトル戦の相手のジェルウィン・アシロ(フィリピン)は危険な男だ。23歳でキャリアは浅いが9戦全勝(4KO)ですでにWBOアジアパシフィックバンタム級ユース王座、この7月には2回KO勝利でWBO同級オリエンタル王座も獲得している。この日の会見では、天心の隣に座り、どこか緊張した様子だった。
 天心が「僕のことをクールでカッコいい奴だと思ってもらっていると思う」とジョークをかますと「ワクワクしている。隣の那須川を見て嬉しく思う。スタイルがよくファッションも素敵だ。話を聞いていると、友達を大切にする方だと思う」と予想外のヨイショ。
 天心は「もっとほかに褒めるところがあるだろう」と苦笑いを浮かべた。
 アシロはフィリピンで万全の天心対策を重ねてきたようで「キャリアで重要な試合になる。勝ちたい。ベストを尽くす。入念にトレーニングを積んできた。その結果を見せたいし、いかにスキルがあるかを見せたい」と力強く宣言した。
 超攻撃的なカウンタパンチャーで7月のオリエンタル王座戦はアッパー1発で仕留めた。ボディも執拗に打ってくるし、ボディワークを駆使したディフェンススキルもある。その勢いに巻き込まれると危険だ。ただガードは甘く、攻撃は粗い。センス抜群の天心が、パンチをまとめる隙は山ほどある。
 天心は「流れで倒す」展開をイメージしている。
 7月20日の前戦で世界ランカーのジョナサン・ロドリゲスを3回でキャンバスに沈めた芸術的なコンビネーションブローを再現したいという。

 

 

「前回同様、流れのなかで倒す。倒しにいくと倒せない。やってやろうという気持ちがありすぎるとダメ。チームにも“おまえにはパンチ力はないんだぞ”と改めて言われた。元々パンチ力はある方ではない。ある程度は必要だが、必要すぎでもない。相手を驚かすとか、相手が見えていないところで打てるとパンチは効く。その状況をどう作るかが明確になってきた。前回も相手は見えないパンチだったと思う。(こっちのパンチを)意識できないところを作って、自分で誘って倒す。自分で相手を動かして戦う」
 明確な勝利パターンが出来上がっている。
 そしてWBOアジアパシフィックのベルトを手に入れれば、日本プロボクシング協会の内規で定められている世界挑戦への資格を得ることになる。9月3日に比嘉大吾を相手にV1に成功したWBO世界バンタム級王者の武居由樹(大橋)からは「天心選手、10月の試合を頑張って下さい」と挑戦者指名を受けた。
「まず(この試合でベルトを)獲ること。(バンタム級は)日本人が4つのベルトを持っている。誰というのはあまりない。全員狙っています。那須川天心という現実を見せます」
 4戦目で見せた覚醒は本物か。それともまだ発展途上か。天心にとって真価を問われる初のタイトル戦となる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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