「頭固いね。死ね」岡本綾子を激怒させた女子ゴルフ・笠りつ子の「バスタオル事件」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」

 渋野日向子の海外メジャー優勝で盛り上がった、2019年の女子プロゴルフ界。そんな祝福ムードに冷や水を浴びせるような「暴言事件」が勃発したのは、この年の10月である。

 コトの起こりは「マスターズGCレディース」大会初日の10月24日。ストレッチのため、出場者の笠りつ子はコース内にある大浴場の脱衣場を利用した。だが、常備していると思っていたバスタオルがなかったため、従業員に貸し出しを要求した。

 ところが同コースではツアー時にバスタオルの紛失が多発しているため、浴場からバスタオルを撤去。選手各自での持ち込みを通達してあったことで、関係者が特別ケースでの貸し出しを拒否した。するとそれに激怒した彼女が「頭固いね。死ね」と言い放ったのである。

 この大暴言を耳にしたのが、この日、テレビ中継の解説者として来場していた女子ゴルフ界の重鎮、岡本綾子だった。唖然とした岡本は自ら関係者に事実関係を確認。その上で、連載していた「デイリースポーツ」のコラムで、笠の名前を伏せてこの非常識な言動を「告発」したのである。

 連載コラムが掲載されたのは、最終日の10月27日、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)には各メディアから、小林浩美会長への取材要請が殺到する。そして優勝争いが行われる最終組前半終了というタイミングで、小林会長が報道陣に質疑応答するという異例の事態に発展。翌日の新聞各紙に「大暴言事件」が大きく報じられることになったのである。

 この騒動により、笠にはLPGAからの厳重注意後、3日間の新人セミナー受講処分が科された。

 そんな彼女がマスコミの前に姿を見せたのは、11月21日開幕の「大王製紙エリエールレディス」開催コースとなる愛媛・エリエールGC松山だった。笠自身は「一身上の理由」で大会への欠場を表明していた。にもかかわらず、なぜ大会会場に足を運んで謝罪する必要があったのか。スポーツ紙記者が語る。

「LPGAによる処分決定は『マスターズGCレディース』の3週間後。笠のマネージメント会社は『すぐにでも謝罪会見を開きたい』とLPGAに申し入れたものの、小林会長が同席を拒絶したというんです。ただ、シーズンも大詰めで、このまま謝罪会見を開かなければ笠自身、完全に謝罪のタイミングを逸してしまう。そこで急遽、欠場した大会に出向いての会見となったわけですが、LPGAはクラブハウス内での会見、取材を許可せず、寒空の野外囲み会見となりました」

 会見では「ゴルフを辞めることも考えた」と涙ながらに語った笠だが、まさにプロゴルファーのモラルを問わる大事件になってしまったのである。

(山川敦司)

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