矢吹正道、2年半ぶり世界王者…アキレスけん断裂でもあきらめず「負けたら引退と思っていた」
国際ボクシング連盟(IBF)ライトフライ級タイトルマッチ(12日・愛知県国際展示場)――挑戦者で同級2位の矢吹正道(LUSH緑)が、王者のシベナティ・ノンシンガ(南アフリカ)を9回TKOで破った。矢吹は2022年3月に世界ボクシング評議会(WBC)同級王座の初防衛に失敗して以来、約2年半ぶりに王座に返り咲いた。
不屈の闘志で矢吹が再び王座をつかんだ。「負けたら引退だと思っていた。これで胸を張って堂々と世界チャンピオンと言える」。戦いの後とは思えない涼しい顔で語った。
巧みな距離感で、自らの間合いに引き込んだ。左ジャブを起点にワンツーで主導権を握り、相手に打たせない。8回にダウンを奪うと、9回にも強烈な右を交えた連打でダウン。最後は右ストレートでノンシンガを沈めた。
2022年に王座を失い、再起を誓ったが、昨年、左アキレスけんを断裂。それでも「世界チャンピオンになることしか頭にない」と諦めなかった。
家族の存在も力になった。ボクシングをしている長女と長男は9月のジュニアの全国大会でともに優勝し、「感激したし、すごく燃えた」。弟の力石政法(大橋)も、セコンドとして支えた。家族から刺激を受け、自信を持ってリングに立った。「自分に関係している皆さんのおかげでここまでやれている。結果を出せてよかった」と矢吹。父として、兄として、強い背中を見せた。(百瀬翔一郎)
矢吹正道 (やぶき・まさみち) 三重県鈴鹿市出身。32歳。本名は佐藤正道。リングネームは漫画「あしたのジョー」の主人公・矢吹丈にあやかっている。2016年3月、プロデビュー。21年には寺地拳四朗(BMB)を破り、WBCライトフライ級で初の王座を獲得したが、翌年の再戦で敗れて陥落した。戦績は17勝(16KO)4敗。
10/12 20:10
読売新聞