世界なぎなた選手権「父に勝って世界一」の夢実現…神戸の増田さん親子、二人三脚で稽古を重ね

 米国で7月に開催された「第8回世界なぎなた選手権」で、神戸市なぎなた協会所属の親子が、男子の個人戦で優勝と準優勝を勝ち取った。息子の増田道仁選手(29)(神戸市長田区)と父の良明選手(50)(北区)が決勝で対戦し、道仁選手が優勝。道仁選手は「父に勝って世界一になりたいという夢を果たせた」と胸を張った。(松山春香)

なぎなたの世界選手権で優勝した増田道仁選手(左)と準優勝した父・良明選手(神戸市兵庫区で)

 2人は日本代表として、2019年の前回大会に引き続き出場。良明選手は個人戦の連覇を、準優勝だった道仁選手は初優勝をかけて大会に臨んだ。

 順調に勝ち上がり、2大会連続で相まみえた決勝では、鋭い打突を繰り出した道仁選手が頂点に立った。男子の団体戦でも優勝した道仁選手は「相手の動きや反応をよく見て、動くことができた。前回大会の雪辱を果たすことができてホッとした」と振り返った。良明選手は「相手の動きの予測とスピードある攻撃で、気づけば試合が終わっていた。完敗だった」と息子の成長に目を細めていた。

 道仁選手がなぎなたを始めたのは小学5年。良明選手に連れられて、クラブに行ったことがきっかけだった。中学1年の時に全国中学生大会で準優勝したことで真剣に取り組むようになり、「親子で世界選手権に出場」を目標に、二人三脚で稽古を重ねてきた。

 その夢は前回大会で実現。だが、「負けたくない」という気持ちが強すぎて守りに回ってしまい、力を出し切れなかった。決勝で父に敗れ、後悔が残った。

 大会では、勝負にこだわっていた自分とは対照的に、なぎなたを文化として捉え、のびのびと楽しんでいる海外選手の姿があった。

 その姿に刺激を受け、負けることを恐れるのではなく、「どうしたら強くなれるか」を意識するようになった。週3、4回、競技歴約20年の父と刺激し合いながら稽古に励んだ。試合形式を重ね、新たな技の動作を確認した。養ってきた感覚は世界一に結実した。

 「超えられない先生のような存在」という父に勝てたものの、道仁選手は「武道としてのなぎなたは、スタートラインにも立てていない」と気を引き締める。「体を効率的に使い、人を感動させられるような美しい動きや技を極めていきたい」。飽くなき探究心でなぎなたと向き合っていく。

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