パリ五輪柔道、日本が全階級出場権を確保…リネールとの対戦にらみ急きょ予定外の大会出場も

 柔道のパリ五輪出場権を決める国際柔道連盟(IJF)の五輪ランキングが確定し、日本は個人戦の男女計14階級と混合団体戦のすべてで出場権を確保した。ランキングが五輪のシード順に影響するため、今回は海外のライバルとの駆け引きも非常に激しかった。(小高広樹)

シード権を巡って激しい駆け引きが展開された斉藤立(左)とリネール(昨年5月のドーハ世界選手権で)=関口寛人撮影

 最重量級で日本悲願の金メダル奪回を目指す男子100キロ超級の斉藤立(JESグループ)は、今月22日にペルーで行われた小規模の大会に急きょ片道30時間をかけて出場して優勝し、7位から6位に上げてランキングを確定させた。

 強行軍の背景には、最大のライバルであるテディ・リネール(仏)の動向があった。リネールは6月上旬にスペインで行われた格付けの低い大会で優勝し、斉藤を抜いて6位に浮上していた。7位に落ちた斉藤はこのまま五輪に臨んだ場合、昨年の世界選手権でリネールと優勝を分け合ったロシア出身のイナル・タソエフ(個人資格の中立選手)と準々決勝で当たる組み合わせになる可能性が高かった。

 強豪の両者を早い段階で対戦させて消耗させる展開をリネール陣営が狙ったと読んだ日本は、斉藤を予定外のペルーへ派遣。「リネールの思い通りにはさせたくない」と誓って臨んだ斉藤は優勝で順位を抜き返した。対戦相手を絞り込んで研究し、本番では体力消耗を抑えて勝ち上がる戦略を描いており、全日本男子の鈴木桂治監督は「より金メダルに近づくと考えている」と強調した。

 これまで五輪で出場を逃した階級がなかった日本だが、今回は出場が危ぶまれる階級もあった。個人戦は各階級とも17位以内が出場圏内。しかし、代表争いが低調だった男子100キロ級は日本勢が一時はいずれも圏外というピンチに陥った。このため2月に代表に内定したウルフ・アロン(パーク24)が異例のハイペースで国際大会に出場。何とか出場権を確保し、発祥国の面目はかろうじて保たれた。

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