筒香の横浜DeNA復帰でささやかれる「成功ライン」の達成予想…日本人メジャーリーガーで日本復帰1年目から20本塁打以上は過去に2人だけ

2024年4月16日、横浜DeNAベイスターズはメジャーリーグ、サンフランシスコ・ジャイアンツからFAとなっていた筒香の獲得を発表。「つ・つ・ごー」の名にちなんで午後2時25分に行われた入団発表を受け、DeNAファンは歓喜に沸いた。

筒香嘉智が、横浜スタジアムに帰ってくる――。

筒香の復帰を発表した横浜DeNAの球団公式Xのポストは3万近いリポスト、6万4000以上のいいねを獲得した。コメント欄も「おかえりなさい」「本当にありがとう」「キタァ!」「横浜優勝」といった歓迎と喜びの声であふれている。

一時は「読売ジャイアンツ入団が決定的」と報じられながら、フタを開けてみれば古巣への復帰。日本中の野球ファンを混乱に巻き込んだ筒香の「国内復帰騒動」は、多くのファンが望み、納得できる形に着地したといえる。

ただ、筒香自身にとって本当の勝負はここからだ。「巨人入団」が報道された背景のひとつに、「出場機会」が挙げられていたことからもわかるように、現在のDeNA外野陣には佐野恵太、関根大気、度会隆輝、桑原将志らがおり、「レギュラー候補」はむしろ飽和状態。
タイラー・オースティンが太ももを負傷して戦線離脱したため、おそらくチーム合流後はファーストでの出場が予想されるが、オースティン復帰後はし烈なレギュラー争いが展開されるはずだ。

筒香としてはオースティンの復帰までにある程度の「数字」を残して出場機会を確保したいところだが、アメリカで4年間プレーし、ブランクのある筒香がどこまで日本の野球に再アジャストできるかが大きなカギとなるだろう。

2019年までの10年間で通算205本塁打をマークしている筒香は、果たして5年ぶりの日本球界で輝きを取り戻せるのか――。

ここでは、過去に筒香同様、メジャーからNPBに復帰した野手の成績を振り返りながら、日本球界でどの程度の成績が「成功ライン」と呼べるのか、考察してみようと思う。

「慣れ親しんだ」古巣への復帰が後押しとなるか

これまで、メジャーでプレーした後に日本球界に復帰した野手は筒香を除いて13人いる。以下に復帰1年目に「主力クラス」と呼べる数字を残せた選手たちを並べてみる。

【元メジャーリーガーの日本球界復帰1年目成績】※規定打席到達未満の選手も含む

打率.280以上 6/13人
新庄剛志、井口資仁、城島健司、西岡剛、田中賢介、青木宣親

20本塁打以上 2/13人
新庄剛志、城島健司

OPS.800以上 5/13人
新庄剛志、中村紀洋、井口資仁、城島健司、青木宣親

100試合以上出場 7/13人
新庄剛志、井口資仁、城島健司、松井稼頭央、西岡剛、田中賢介、青木宣親

また、元メジャーリーガーによる日本球界復帰1年目の最高成績は以下の通りだ。

打率 青木宣親 .327
本塁打 城島健司 28本
打点 城島健司 91打点
OPS 青木宣親 .884


NPBに復帰した日本人メジャーリーガーについては、「渡米前ほどの数字を残せない」という印象も強いが、数字だけを見ると一定数の選手が復帰1年目からレギュラークラスの結果を残しているのがわかる。

そもそも、メジャーリーグでプレーした後、日本球界に復帰する選手の多くが年齢的には“ベテラン”の域に差し掛かっているため(13人のうち、20代で日本に復帰したのは西岡のみ)、日本での全盛期のような数字を残すこと自体、かなりのハードルになる。

そう考えると、半数を超える7人が100試合以上に出場し、6人が打率.280以上を記録している結果は“ポジティブ”な数字といえるかもしれない。

ちなみに、今回の筒香同様に復帰チームに“古巣”を選択したのは中村紀洋(元所属の併合先球団であるオリックスに復帰)と青木宣親の2選手のみ。こちらはサンプルとしては少ないためあまり参考にならないかもしれないが、青木は復帰1年目に打率.327をマークするなど日本時代と遜色ない打撃を披露。

やはり、「慣れ親しんだ」古巣球団への復帰は選手にとってはプラスになるのかもしれない。

また、日本球界復帰選手の数字を見て少し気になるのが「本塁打数」だ。復帰1年目から20本塁打以上をマークしたのは城島(28本)と新庄(24本)の2選手のみ。次いで、井口の19本塁打となる。

筒香にとってポジティブなデータは…

13選手のうち、メジャー移籍前年の本塁打数を復帰1年目に上回ったのは城島(24本→29本)、田中(3本→4本)、青木(4本→10本)の3選手のみ。なお、日本球界復帰後のキャリアでシーズン30本塁打以上をマークした選手は現時点ではひとりもいない。

年齢的な問題もあるかもしれないが、「長打力」という点ではどうしても「衰え」が隠せなくなる傾向にありそうだ。

スラッガータイプの筒香にとっては不安も残るデータだが、逆にポジティブなデータもある。

筒香は現在32歳。過去の元メジャーリーガーの中では比較的「若い」タイミングでの日本復帰になる。過去、32歳以下で日本に復帰した日本人野手は以下の通りだ。

新庄剛志(32歳)
中村紀洋(32歳)
岩村明憲(31歳)
西岡剛(28歳)


新庄は復帰1年目からキャリアハイと呼べる数字を残し、3年目にはチームを日本一へと導いている。中村も復帰初年度こそ12本塁打に終わったが中日に移籍した2007~2008年には20本塁打以上をマークしてゴールデングラブ賞も獲得。岩村は日本球界への順応に苦しんだが、西岡は移籍1年目にレギュラーとして122試合に出場して打率.290をマークした。

慣れ親しんだ古巣への復帰、さらには32歳という年齢を考えれば、これまでNPB復帰した日本人メジャーリーガーの中でも筒香は「日本で再び輝ける」可能性が高い、といえるかもしれない。

過去の例と照らし合わせると、「成功ライン」は打率.280、20本塁打、OPS.800以上が目安となりそうだが、筒香であれば十分クリアを狙える数字のはずだ。

もちろん、アメリカでもたびたび課題とされた速球への対応や、4年間のブランクなど、不安要素がないわけではない。チーム状況を考えても、早い段階で数字を残せなければレギュラーに定着できるかは不透明な状況だ。

しかし、結果こそ残せなかったかもしれないが、4年間のアメリカ生活で筒香も「なにか」を掴んだはず。

28歳だった筒香嘉智とはまた違う、32歳の「筒香」の雄姿を、横浜スタジアムで見たい。DeNAファンだけでなく、日本中の野球ファンが、筒香のバットに注目している。

取材・文/花田雪

■NPBに復帰した日本人メジャーリーガーの成績比較

新庄剛志
NPB復帰時32歳
阪神→メッツ→ジャイアンツ→メッツ→日本ハム
MLB移籍前年 131試合 .278 28本 85打点 OPS.812
MLB通算(3年)303試合 .245 20本 100打点 OPS.668
NPB復帰1年目 123試合 .298 24本 79打点 OPS.835

中村紀洋
NPB復帰時32歳
近鉄→ドジャース→オリックス
MLB移籍前年 105試合 .274 19本 66打点 OPS.857
MLB通算(1年)17試合 .171 0本 3打点 OPS.350
NPB復帰1年目 85試合 .232 12本 45打点 OPS.836

井口資仁
復帰時34歳
ダイエー→ホワイトソックス→フィリーズ→パドレス→フィリーズ→ロッテ
MLB移籍前年 124試合 .333 24本 89打点 OPS.943
MLB通算(4ねん)493試合 .268 44本 205打点 OPS.739
NPB復帰1年目 123試合 .281 19本 65打点 OPS.866

城島健司
NPB復帰時33歳
ソフトバンク→マリナーズ→阪神
MLB移籍前年 116試合 .309 24本 57打点 OPS.938
MLB通算(4年)462試合 .268 48本 198打点 OPS.721
NPB復帰1年目 144試合 .303 28本 91打点 OPS.859

田口壮
NPB復帰時40歳
オリックス→カージナルス→フィリーズ→カブス→オリックス
MLB移籍前年 134試合 .280 8本 42打点 OPS.750
MLB通算(8年)672試合 .279 19本 163打点 OPS.717
NPB復帰1年目 53試合 .261 3本 10打点 OPS.689

松井稼頭央
NPB復帰時35歳
西武→メッツ→ロッキーズ→アストロズ→楽天
MLB移籍前年 140試合 .305 33本 84打点 OPS.914
MLB通算(7年)630試合 .267 32本 211打点 OPS.701
NPB復帰1年目 139試合 .260 9本 48打点 OPS.675

岩村明憲
復帰時31歳
ヤクルト→デビルレイズ→パイレーツ→アスレチックス→楽天
MLB移籍前年 145試合 .311 32本 77打点 OPS.933
MLB通算(4年)408試合 .267 16本 117打点 OPS.720
NPB復帰1年目 77試合 .183 0本 9打点 OPS.475

西岡剛
NPB復帰時28歳
ロッテ→ツインズ→阪神
MLB移籍前年 144試合 .346 11本 59打点 OPS.904
MLB通算(2年)71試合 .215 0本 20打点 OPS.503
NPB復帰1年目 122試合 .290 4本 44打点 OPS.729

福留孝介
NPB復帰時35歳
中日→カブス→インディアンス→ホワイトソックス→ヤンキース→タイガース
MLB移籍前年 81試合 .294 13本 48打点 OPS.963
MLB通算(5年)596試合 .359 42本 195打点 OPS.754
NPB復帰1年目 63試合 .198 6本 31打点 OPS.630

田中賢介
NPB復帰時33歳
日本ハム→ジャイアンツ→レンジャーズ→日本ハム
MLB移籍前年 114試合 .300 3本 32打点 OPS.713
MLB通算(2年)15試合 .267 0本 2打点 OPS.620
NPB復帰1年目 134試合 .284 4本 66打点 OPS.705

川﨑宗則
復帰時35歳
ソフトバンク→マリナーズ→ブルージェイズ→カブス→ソフトバンク
MLB移籍前年 144試合 .310 1本 37打点 OPS.637
MLB通算(5年)276試合 .237 1本 51打点 OPS.609
NPB復帰1年目 42試合 .241 0本 4打点 OPS.623

青木宣親
復帰時36歳
ヤクルト→ブルワーズ→ジャイアンツ→マリナーズ→アストロズ→ブルージェイズ→メッツ→ヤクルト
MLB移籍前年 144試合 .292 4本 44打点 OPS.718
MLB通算(6年)759試合 .285 33本 219打点 OPS.738
NPB復帰1年目 127試合 .327 10本 67打点 OPS.884

秋山翔吾
復帰時34歳
西武→レッズ→パドレス→広島
MLB移籍前年 143試合 .303 20本 62打点 OPS.864
MLB通算(3年)142試合 .224 0本 21打点 OPS.594
NPB復帰1年目 44試合 .265 5本 26打点 OPS.746

筒香嘉智
NPB復帰時32歳
DeNA→レイズ→ドジャース→パイレーツ→ブルージェイズ→レンジャーズ→独立リーグ→ジャイアンツ→DeNA
MLB移籍前年 131試合 .272 29本 79打点 OPS.899
MLB通算(4年)181試合 .197 18本 75打点 OPS.630
NPB復帰1年目 ?

ジャンルで探す