アメリカの女子スポーツを変えた法律とは?

※写真は2019年ロジャースカップの大坂なおみとセレナ・ウイリアムズ

50年前の6月23日、教育現場における男女の機会均等を定めた教育改正法第9編(Title IX)がアメリカで成立し、女性のスポーツと教育を永遠に変えた。

この法律は、大学などで政府の補助金を受けるプログラムにおいて性別による差別を禁止。アメリカで活動する女性アスリートたちは、この法律が成立して以降、大きな恩恵を受けてきた。女性スポーツ財団によると、1972年6月23日にTitle IXが導入された時、大学生アスリートのうち女性はたったの15%だった。現在、女性は全体の44%を占めている。

この画期的な法律が施行されてから半世紀。テニス界ではこの記念すべき日をどのように受け止めたのか。米テニスメディアBaselineが伝えている。

テニス界で男女平等に最も大きく貢献したのはビリー・ジーン・キング(アメリカ)だろう。計39回ものグランドスラム優勝経験を持つキングは、輝かしいキャリアの多くの時間を女子テニスの地位向上に捧げ、現在も男女平等実現のための活動を続けている。

先日、キングはジル・バイデン大統領夫人らと共にワシントンDCで行われた記念イベントに出席。会場でスピーチを行ったキングは、黒人・先住民・有色人種や障害者に加え、LGBTQ+の人々にも平等の機会を与える重要性について説いた。

「これまでTitle IXの恩恵を受けてきたのは、主に都市部に住む白人の女性たちでした。この記念日を祝福するのと同時に、全ての女子・女性たちに平等な機会を与えるという私たちの目的に再び活力を与えましょう。私たちは将来に目を向けなければ」とキングは語った。

シカゴでは、元ダブルス世界ランキング3位のバニア・キング(アメリカ)と同64位のテイラー・タウンゼント(アメリカ)が、記念すべき節目を祝っていた。2人は、ミシェル・オバマ元大統領夫人が通っていた高校のテニスコートで開催されるサマープログラムの開会式に出席。このサマープログラムを企画したのは、次世代のソーシャルスポーツプラットフォームBreak the Loveだ。Break the Loveは、活用されていないスペースでグループレッスンやテニスプログラムを企画することで、より多くの人にテニスというスポーツに触れてもらおうとしている団体だ。彼らは、スポーツを通じて女性の地位向上を目指している。アーンスト・アンド・ヤングが行った調査では、米経済誌Fortuneによる全米企業の総収入ランキング「Fortune 500」にランクインしている女性CEOの95%は、幼少期や学生時代にスポーツをしていたという。

バニア・キングとタウンゼントはその後スポーツ用品メーカー、ウイルソンのフラッグシップ店舗で行われたTitle IXと男女平等に関するイベントにも出席。パネルスピーカーとしてMMAプロ格闘家のビー・ニューイェン、教育系アクティビストのVee Kativhuさんと共にTitle IXが世界に与えた影響について語り合った。

ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)は、2007年に「ウィンブルドン」で初めて男子と同じ額の優勝賞金を獲得した女子選手だ。

ビーナスは、ラケットとペンを取り、男女差別に立ち向かってきた。「ウィンブルドン」、そして「全仏オープン」が男女平等賞金額へ踏み切ったのは、ビーナスが英紙Times of Londonに寄稿した感動的な論説が要因の一つだとされている。

Title IX成立50周年を祝い、ビーナスは米誌Newsweekにこれまでの50年間を振り返る論説を寄稿した。その中でビーナスは、不平等を目にしたときの不快感を次のように綴っている。

「私のキャリアの初期の頃には、例えば不均等なコート時間の割り振りなど、男女不平等を感じさせる瞬間が確実にありました。男女が共に出場する大会で、女子の試合が何試合センターコートで行われているかを見ました。自分がサイドコートに格下げされると、気付きます」

「不平等な賞金額を体験することは、非常に大きな影響がありました。男子選手は一度もそんな経験をしたことがありませんが、すべての女子選手はそれを体験していたのです。2007年、私が“ウィンブルドン”で男女同額の優勝賞金を受け取った最初の女子選手になるまで、それは明白にあった差別でした」

大坂なおみ(日本/フリー)が先日立ち上げたメディア会社Hana Kumaでも、Title IX成立に関する映像を制作する予定だ。大坂は、2022年に『バスケの女王』でアカデミー賞を受賞したベン・プラウドフット氏が監督したNew York Timesのドキュメンタリーシリーズ『MINK!』に制作総責任者として名を連ねている。題名となっている『MINK!』とはTitle IXを草稿した元ハワイ州議会議員のパッツィー・タケモト・ミンク氏のことだ。

「最も意義のある功績というのは素晴らしい人物のお陰で達成できるものだけれど、残念ながら彼らの物語が歴史の改作によって失われてしまうことはよくある」と大坂は語った。

「特にTitle IXに関しては、女子スポーツへ多大な影響を与えたことは何度も語られてきたけれど、これを可能にした素晴らしい人物、パッツィー・タケモト・ミンクについて私たちは十分に語っているとは言えない。パッツィーは、初めて議会に選出された有色人種の女性で、日系アメリカ人の女性だった。私はすぐに彼女の物語に勇気をもらったわ」

「パッツィーがいなければ、大坂なおみも、彼女の働きによってチャンスを得た多数の女性アスリートも存在しなかった」

(WOWOWテニスワールド編集部)

(Photo by Vaughn Ridley/Getty Images)

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