屋外練習場は長方形じゃなく台形になっている!? 練習場の特性を知ればラウンドでの「対応力」が大幅にアップする

打ちっ放し練習場の打席には、インドア施設の打席とは異なる「構造上の特徴」がいくつかあります。それを理解しないで練習していると、うまくならないどころか悪いクセが身についてしまうこともありえます。ラウンドで「練習場ではうまく打てるのに」と嘆かないためにも、練習場の打席での「角度対策」を紹介します。

レンジボールは飛ばないから距離表示も実際の距離と異なる

 打ちっ放しのゴルフ練習場は、当然ながら練習するための施設として存在しています。どんなに似たつくりであっても、ゴルフコースとは構造的に異なる点があります。 

打ちっ放しの練習場の距離表示は、レンジボールの飛距離に合わせた目安と考えよう

打ちっ放しの練習場の距離表示は、レンジボールの飛距離に合わせた目安と考えよう

 練習場の多くは市街地や住宅街にあるため、ボールがネットを越えたり突き破ったりしてしまうと命に係わる可能性もあります。それを防ぐ目的で練習場は、コースで使用するボールよりも軟らかくて飛距離が出にくい「レンジボール」を使用しています。

 このボールは反発力が低くなっているため、飛ぶ勢いはコースボールより少なく、ネットを越えたり突き破ったりしません。またインパクトの衝撃も少なく、ゴルファーがたくさん練習しても手首などのケガを防止する効果もあります。

 コースボールよりも軟らかいレンジボールは、実際のショットより飛距離が落ちるほかに打出角が低くなります。練習場にある距離表示は、レンジボールの飛距離ダウンに合わせて10〜20%ほど調整しているところがほとんど。練習場に示されている飛距離はあくまで目安ですから、実際の距離が気になる人は、距離計で目標までの距離を測ってみるのが得策です。実際の飛距離と表示の差が10%なのか20%なのか分かれば、番手のキャリーも正確に理解できるようになるでしょう。

端の打席ほど斜めに向いている! どこが正面か確認が大事

 打ちっ放し練習場を俯瞰で見ると、長方形ではなく台形または扇型になっていることが多いです。そして数多くの打席が、正面ネットの中心あたりにボールが飛ぶように調整されています。

 つまり練習場の左寄りの打席ほど右向きに、右寄りの打席ほど左に向いていることが多いのです。また練習場の地形によって、打席全体が左か右に向いているケースもあります。

台形や扇型の練習場では、正面ネットの中心にボールが飛ぶように打席の向きが調整されている

台形や扇型の練習場では、正面ネットの中心にボールが飛ぶように打席の向きが調整されている

 打席すべての向きが正面になっていない理由は、少ない敷地面積で多くのゴルファーが練習できるようにしているためともいえます。しかし、ゴルファーは常にスクエアにアドレスして練習したいところです。

 ですから打席に到着したら、まずマットの向きが正面ネットのどこを向いているのか、打席の向きどおりにボールが真っすぐ飛んだら正面ネットのどこに当たるのか、飛球線後方から確認してから始めることが質の高い練習を行うコツです。

 その確認をしないとスクエアに構えることもできず、そのままムリに真っすぐ打とうとすると、間違ったスイングを身に付けてしまう可能性もあります。

 中・上級者の中には、左右の打席を選んで練習するケースも見受けられます。ネットが視界に入ってくるなどの違和感をあえて練習に取り込み、それでも影響を受けずに真っすぐ構えて打つようにするのが目的です。そうした意味では、左右の打席は絶対に使わない方がいいというわけではありません。ただビギナーは中央打席がいいと思います。

 また2階より上の打席では、雨が吹き込んできた場合に排水しやすいよう、打席全体が左足下がりに傾斜しているケースが大半です。わざわざ水平計で調べる必要はありませんが、なぜかダフリが止まらない場合や打出角が低く感じたりしたら、スマホのアプリで打席の傾斜を測ってみてもいいと思います。

練習で身につけたいのは「当て感」と「現場対応力」

 打ちっ放しの練習場であれインドアであれ、練習場の打席が四角いほど自然に真っすぐ構えられます。でも本番のコースでは、ティーイングエリアがフェアウェイ中央に真っすぐ向いているホールは少ないでしょう。

本番のコースではティーイングエリアの向きに惑わされず、自分の打ちたい方向にクラブを向けアドレスできなければナイスショットにならない

本番のコースではティーイングエリアの向きに惑わされず、自分の打ちたい方向にクラブを向けアドレスできなければナイスショットにならない

 練習場では構えやすい「当たり」打席もあれば、構えづらい「ハズレ」打席もあります。だからこそ練習時から打席の向きに依存せず、フェースを狙った方向に向けてから体の位置を決めるルーティンを習慣づける機会ととらえることもできます。

 セカンドショット以降はもちろん、ティーイングエリアでさえ地面が傾斜している場合があります。真っ平らな練習場の打席でナイスショットが打てていても、コースのほんの少しの傾斜でダフリやトップが止まらないのでは、「現場力」がないことになってしまいます。

 もし練習場の2階より上の打席が傾いていても、きちんと打てる習慣が身についていたら、目に見えないコースの傾斜にも自然に対応ができる「当て感」が備わっていることになっています。

 いろいろな点で練習場は本番のラウンドとは異なります。その中で取り組んでほしいのは、繰り返しナイスショットが打てることよりも、景色に惑わされず自分が狙った方向に構えられる現場での対応力と、コースマネジメントできるくらいの当て感です。

 多少カッコ悪いスイングでも、とりあえずボールに当たってショットがコースの幅に収まる範囲のプレーができれば、「かなりうまい人」に周りから見られるはずです。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数出演するほか「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン&コミュニティー「FITTING」編集長やFMラジオ番組内で自らコーナーも担当している。

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