竹田麗央率いる“ダイヤモンド世代” 佐藤心結の初Vで“黄金世代”よりも上回った記録とは?

佐藤心結(さとう・みゆ)の初優勝で幕を下ろした「スタンレーレディス」。竹田麗央(たけだ・りお)率いる2003年度生まれのダイヤモンド世代から新たなチャンピオンが生まれた。ダイヤモンド世代が黄金世代よりも早い歴代最速のスピードで20勝に到達した。

ダイヤモンド世代通算20勝目

◆国内女子プロゴルフ

スタンレーレディスホンダゴルフトーナメント 10月4~6日 東名カントリークラブ(静岡県) 6610ヤード・パー72

 2003年度生まれのダイヤモンド世代から新たなチャンピオンが生まれた。「スタンレーレディス」で念願の初優勝を飾った佐藤心結だ。これがダイヤモンド世代通算20勝目。黄金世代よりも早い歴代最速のスピードで20勝に到達した。

佐藤心結が悲願の初優勝を遂げた 写真:Getty Images

佐藤心結が悲願の初優勝を遂げた 写真:Getty Images

 ダイヤモンド世代としては川崎春花、尾関彩美悠、神谷そら、櫻井心那、竹田麗央に続く6人目のツアー優勝者となった佐藤。同世代はこれまで竹田の7勝を筆頭に川崎5勝、櫻井4勝、神谷2勝、尾関1勝の計19勝を挙げており、佐藤が節目の20勝目をつかみ取った。

 畑岡奈紗や渋野日向子ら1998年度生まれの黄金世代を皮切りに実力派ぞろいの最近の若手は「○○世代」として語られることが多い。古江彩佳、西村優菜、吉田優利ら2000年度生まれはプラチナ世代、笹生優花、山下美夢有、西郷真央ら2001年度生まれは新世紀世代というように。

 だが、これら若手の中で国内の勝利数が世代通算20勝に達しているのは50勝(畑岡奈紗の2018年TOTOジャパンクラシックも含む)を数える黄金世代だけだった。稲見萌寧菅沼菜々の1999年度生まれは15勝、プラチナ世代と新世紀世代は19勝、岩井姉妹擁する2002年度生まれは14勝である。ダイヤモンド世代は実績十分の先輩たちを抜き去って一足先に20勝を記録したのである。

そして、そのスピードは黄金世代をも凌駕している。

 佐藤が勝った「スタンレーレディス」はダイヤモンド世代21歳シーズンの10月第1週になる。黄金世代が通算20勝に達したのも同じ21歳シーズンである2019年だが、20勝目は11月第4週の「大王製紙エリエールレディス」で渋野が逆転優勝を果たした時だった。ダイヤモンド世代は1カ月以上早いわけだ。黄金世代の21歳シーズン11月第4週はこれまでの最速記録であり、ダイヤモンド世代はこの記録を塗り替えて歴代最速となったのである。

元祖黄金世代といえる1985年度生まれ

 実は、黄金世代と同じ21歳シーズン11月第4週に世代通算20勝を記録していた世代がもうひとつある。それは、元祖黄金世代といえる1985年度生まれだ。

 そのメンバーは宮里藍横峯さくら、藤田さいきという顔ぶれ。優勝経験者はこの3人だけだが、まさに女子プロゴルフ界に名を残す面々である。

 宮里は高校3年だった2003年の「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」で女子ツアー30年ぶりのアマチュア優勝を成し遂げて“藍ちゃんフィーバー”を巻き起こした。プロ転向後は2004年に5勝、2005年には6勝を挙げて不動裕理と激しく賞金女王を争った。

 横峯は19歳で初勝利を挙げてから着実に勝ち星を伸ばし、藤田も20歳で初優勝。2006年の最終戦「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」を横峯が制した時が世代通算20勝だった。

 20年ほど前に女子プロゴルフ界に地殻変動を起こした藍ちゃん世代と、10年前に15歳で優勝した勝みなみに始まって高校3年で「日本女子オープン」を制した畑岡、日本に42年ぶりの海外メジャータイトルをもたらした渋野と大きな衝撃を与え続けてきた黄金世代。これらの世代を上回るペースで勝利を重ねるダイヤモンド世代は恐るべき存在である。

ダイヤモンド世代は今季だけで計11勝

 ダイヤモンド世代は今季だけで計11勝(竹田7勝、川崎3勝、佐藤1勝)。黄金世代と岩井姉妹ら2002年度生まれの7勝を抑えて世代最多である。メルセデス・ランキング1位を走る竹田はまだ勝ち星を伸ばしそうな雰囲気があるし、川崎のかみ合った時の強さは目を見張るものがある。「スタンレーレディス」で佐藤に敗れた尾関はこのところ安定して上位に入っており2年ぶりの優勝は近いと感じさせる。

 このダイヤモンド世代で最も早く優勝に近づいたのは佐藤だった。高校3年だった2021年の「スタンレーレディス」、3人の首位タイで最終日を迎えた佐藤は初体験の最終日最終組にも臆することなく「70」にまとめ、渋野、木村彩子ペ・ソンウ(韓国)とのプレーオフに突入。最後は渋野に屈したが決勝ラウンドに進んだ選手の中で一番の飛距離をマークするなど将来性豊かな大器として注目を集めた。だが、プロ転向後は次々と優勝を飾る同世代の仲間を見つめるばかりだった。

 苦しかった日々を経てつかんだ栄冠。3年前に悔し涙を流したその場所で歓喜の時が訪れた。

佐藤心結(さとう・みゆ)

2003年7月21日生まれ、神奈川県出身。「ゴルフに生かす」ために中学時代は3年間陸上部に所属し、砲丸投げに取り組む。そうして培った飛距離を武器に2021年「スタンレーレディス」では全体2位タイでベストアマに。同年のプロテストに合格。24年「スタンレーレディスホンダ」で初優勝を遂げた。ニトリ所属。

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