理想のスイングが自分に合うとは限らない! 理想を追求すると陥るかもしれない「代償動作」とは?

多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回は国内男子ツアー「ANAオープン」で2位タイに入った金子駆大(かねこ・こうた)です。

首を右に回しながらテークバックする金子駆大

 9月12日から4日間、北海道の札幌GC輪厚コースで国内男子ツアー「ANAオープン」が開催されました。50回の記念大会を制したのは岩崎亜久竜選手でした。3日目を終えた時点で通算14アンダー。首位と3打差の3位タイで最終日を迎えました。

金子駆大のトップ 写真:JGTO Images

金子駆大のトップ 写真:JGTO Images

 岩崎選手はスタートホールでバーディを奪ったものの、続く2番でダブルボギー。優勝戦線から一歩後退したかに思われましたが、5番、7番、9番でバーディーを奪い、通算16アンダーでバックナインを迎えます。11番パー3でバーディーを奪った岩崎選手は12番のパー5でイーグルを奪取。ここで単独トップに立つと、17番パー5でもバーディーを奪って通算20アンダーでフィニッシュ。1994年大会で尾崎将司さんが樹立した最多アンダーパーに並ぶスコアで今季初勝利。昨年の「日本オープン」に次ぐ通算2勝目を挙げました。

 2位タイに入ったのは、永野竜太郎選手と金子駆大選手でした。永野選手は通算17アンダーの単独首位で最終日を迎えました。しかし、「71」(1アンダー)とスコアを伸ばし切れず、惜しくもツアー初勝利に届きませんでした。

 金子選手は3日目を終えた時点で通算14アンダー。優勝した岩崎選手と同じく3位タイで最終日をスタートしました。自身初の最終日最終組でしたが、「68」とスコアを4つ伸ばして通算18アンダーでフィニッシュ。2位タイは、今年の「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP byサトウ食品」の2位に続く好成績です。金子選手は今年の「ミズノオープン」でも6位タイに入っており、ツアー初勝利が期待される若手のひとりといえるでしょう。

 さて、金子選手といえば首を右に回しながらテークバックするスイングが特徴です。「元々首が硬くて回旋制限があるのかな?」と思い、金子選手のコーチを務める目澤秀憲コーチに聞いてみると、「首が硬いわけではなく、利き手と効き目が左だからだと思います」とのことでした。ちなみに今、金子選手は左手の掌屈と左手リードを意識しているそうです。

理想の形にとらわれない体に合ったスイングを

金子駆大のトップ 写真:JGTO Images

金子駆大のトップ 写真:JGTO Images

 金子選手は首に回旋制限があるわけではありませんでしたが、一般ゴルファーの皆さんの中には「首が硬くてバックスイングでどうしても顔が動いてしまう」という人もいるはずです。こういう人が無理に顔を残すと、スウェーをしたり、バックスイングの捻転不足が起こる可能性があります。これを代償動作といいます。

 他にも、例えば右腕に回旋制限がある人が「右ヒジを下に向けてトップを作ろう」とすると、前傾姿勢が崩れてダウンスイングで体が起き上がってしまうことがあります。

 ゴルフスイングには理想の形といわれるものがありますが、無理に理想の形を作ろうとすると“代償動作”が生まれてスイングのエラーが起きたり、ケガに繋がることもあるので注意してください。理想の形にとらわれすぎず、自分の体に合ったスイングを見つけましょう。

金子駆大(かねこ・こうた)

2002年生まれ、愛知県出身。ジュニア時代は「中部ジュニア」(16年)、「中部高校選手権春季大会」(19年)で優勝。高3の20年にプロテストに一発合格した。21年の「中日クラウンズ」でツアーデビュー。23年シーズンは「日本オープン」で初のトップ10となる3位フィニッシュ。今シーズンは「JAPAN ¥ PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品」で単独2位、「ANAオープン」で2位タイ。ツアー初勝利が期待される若手のひとりだ。NTPホールディングス所属。

【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

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