古江彩佳がメジャーで打ち立てた世界で唯一の記録とは? 「記録づくし」だった日本選手の海外メジャーを振り返る

大会史上最多となる19人の日本選手が参戦した「AIG(全英)女子オープン」は金メダリストのリディア・コが優勝、今季の海外メジャー5大会が終了した。過去最多となる72人が出場した今季のメジャー5試合では、日本選手にまつわる様々な新記録が生まれた。

メジャー5大会の総出場者数は過去最多の72人

 今季女子メジャー最終戦の「AIG(全英)女子オープン」には大会史上最多となる19人の日本人選手が参戦し、西郷真央と岩井明愛が7位タイに入った。今季、日本勢は歴代最多となる13回のトップ10入りをマークするなどメジャーで数々の新記録を打ち立てた。その要因は岩井明愛をはじめとする国内組の躍進にある。

「全米女子オープン」を笹生優花、「エビアン選手権」を古江彩佳が制し、初のシーズン2勝を記録した 写真:Getty Images

「全米女子オープン」を笹生優花、「エビアン選手権」を古江彩佳が制し、初のシーズン2勝を記録した 写真:Getty Images

 まずは今季の女子メジャーにおける日本勢の新記録を挙げてみたい。「全米女子オープン」を笹生優花、「エビアン選手権」を古江彩佳が制して、初めてのシーズン2勝を達成。この2勝を含むトップ10入り13回は従来の最多記録だった昨年の6回を実に2倍以上も更新する快挙である。

 トップ10入りでいえば今季はメジャー5大会すべてで日本人選手がトップ10に名を連ねた。メジャーが4大会の時代には1987年と2010年に全大会トップ10入りがあり、「エビアン選手権」がメジャーに昇格して5大会制になった2013年以降でもコロナ禍で「エビアン選手権」が中止になった2020年には開催した4大会でトップ10入りはあるが、5大会すべては初めてのことだ。

 総出場者数は72人に達し、これもまた昨年の64人を塗り替える歴代最多。予選通過者48人も昨年の36人を大幅に更新した。

2年連続全メジャー予選通過は世界で古江彩佳ただ1人

 個人に目を移すと、古江と岩井明愛が全5大会で4日間を戦った。古江は2年連続の全5大会予選通過で、この2年間の10大会すべてで予選を通過したのは世界で古江ただ1人である。

 年間全5大会で予選を通過した日本人選手はこれまで上原彩子宮里美香野村敏京(今季からハル・ムーンの名で韓国登録に変更)、畑岡奈紗、そして古江と5人いたが、全員が米女子ツアーメンバーとして達成したもの。岩井明愛は国内組としては初めての快挙だ。

「国内組」として初の全5大会予選通過を果たした岩井明愛 写真:Getty Images

「国内組」として初の全5大会予選通過を果たした岩井明愛 写真:Getty Images

 岩井明愛の快挙はもうひとつある。「エビアン選手権」10位タイ、「AIG(全英)女子オープン」7位タイと2大会連続のトップ10入りは日本人選手では9人目だが、これまた国内組では初めてのことである。

 冒頭で紹介したトップ10入り計13回のうち、米女子ツアーメンバーは古江、西郷、渋野日向子が各2回で勝みなみと笹生が1回の計8回。国内組は岩井明愛が2回で小祝さくら、竹田麗央、山下美夢有が各1回の計5回である。米女子ツアー組とそん色ないとまではいえないが、国内組だけで5回もトップ10に入ったのはもちろん初めてのことであり、高く評価できるはずだ。

 予選通過の面でも国内組の躍進が目立っている。今季、国内組は計34回出場して予選通過は21回。予選通過率は61.8%である。米女子ツアー組は71.1%(38回中27回)だから米女子ツアー組に軍配が上がる。

 ただ、これは米女子ツアー組の予選通過率が高すぎるためで、61.8%は他の国と比較すると韓国の62.8%に匹敵し、米国やタイ、オーストラリアといった強豪国ですら軒並み60%以下なのだから国内組のレベルは相当なものだ。

 国内組のここ3年の予選通過率を見ると、2022年は37.5%(24回中9回)、2023年は44.1%(34回中15回)、今季は61.8%だから飛躍的に上がっている。米女子ツアー組も2022年60.0%(20回中12回)、2023年70.0%(30回中21回)、今季71.1%と右肩上がりではあるが、国内組の上昇度は目を見張るものがある。

 国内組大将格の山下は「AIG(全英)女子オープン」こそ決勝ラウンドに残れなかったが、それまでの4大会ではすべて予選を通過。中でも「KPMG全米女子プロ」の2位タイは光っている。

 竹田はメジャー初挑戦の「全米女子オープン」で9位タイと健闘し、出場4大会中3大会で決勝ラウンドに進んだ。かつて米国で戦った河本結は3年ぶりのメジャーで「全米女子オープン」39位タイ、「AIG(全英)女子オープン」29位タイとまとめてきた。大里桃子は初めてのメジャー舞台となった「AIG(全英)女子オープン」で予選を通過し、最終日にはプレーした82人中単独ベストスコアとなる67をマーク。聖地セントアンドリュースに素晴らしい思い出を残した。

 国内組の躍進は、日本女子全体のレベルアップを如実に表している。来季のメジャーでは今季をさらに上回る日本勢の活躍を期待したくなってきた。

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