シード権を持たない渋野日向子は今後も試合に出られるの!? 複雑な米女子ツアーの出場資格をおさらい

米女子ツアーの出場優先順位を入れ替えるリシャッフルまであと2試合になった。シード権を持たず、ここまで調子の上がらない渋野日向子は、このまま米女子ツアーで戦い続けることができるのでしょうか。

西郷真央はリシャッフルで順位が大きく上がる

 米女子ツアーの出場優先順位を入れ替えるリシャッフルまであと2試合。渋野日向子らシード権を持たない選手にとっては今後の出場機会を左右する分水嶺となる。今季、まだ調子が上がっていない渋野はこのままなら出場すらできなくなってしまうのだろうか。

 先週の「JMイーグルLA選手権」では初日99位タイという厳しい位置から2日目に69をマークしてようやく今季2回目の“予選突破”を果たした渋野だったが決勝ラウンドでは苦戦して通算7オーバーの73位。

「JMイーグルLA選手権」では予選通過を果たした渋野日向子だが、苦しい戦いが続いている 写真:Getty Images

「JMイーグルLA選手権」では予選通過を果たした渋野日向子だが、苦しい戦いが続いている 写真:Getty Images

 シードなどの基準になるCMEポイントランキング(以下PRと表記)は大会前の129位から132位に下がり、リシャッフルで出場優先順位を上げる目安となるPR80位以内がさらに遠のいた。

 米女子ツアーの出場資格は20のカテゴリーに分かれている。最も優先順位の高いカテゴリー1は前年のPR80位以内で、これがいわゆるシードと呼ばれるものだ。

 以下、生涯獲得賞金20位以内などのカテゴリーがあり、カテゴリー7がツアーメンバー以外で優勝した選手の枠。昨年のTOTOジャパンクラシックで勝った稲見萌寧はこのカテゴリーで参戦しており、出場優先順位は104位だ。

 昨年、PR83位でシードを逃した渋野はPR81位から100位の選手の枠であるカテゴリー11に属している。現時点の出場優先順位は116位。出場選手数が少ない試合を除けばほぼ問題なくエントリーできる順位である。

 ただし、カテゴリー9(下部ツアーにあたるエプソンツアーの前年賞金ランキング10位以内)以下の選手は年に2回行われるリシャッフルで出場優先順位が変動する。

 今季は5月16日開幕の「みずほアメリカズオープン」終了時に第1回リシャッフルを実施。その時点でPR80位以内に入っているカテゴリー9以下の選手がカテゴリー8(今季のトップ80)に昇格するのだ。

「JMイーグルLA選手権」終了時でPR80位以内に名を連ねている当該選手はカテゴリー14(Qスクール20位以内)の西郷真央ら14人。西郷は「JMイーグルLA選手権」で今季初トップ10となる8位タイに食い込んでPRを54位に上げており、リシャッフルでカテゴリー8になることが確実。出場優先順位は現在の134位から大きく上がりそうだ。

 西郷と同じカテゴリー14の吉田優利はPR156位にとどまっているため、このままなら出場機会が減ってしまう可能性がある。

リシャッフル後も渋野日向子の試合数に大きな影響はない

 では渋野はどうか。現状のままなら出場優先順位は126位前後にまで下がりそうである。リシャッフル以降、出場できる試合数にどれくらい影響が出るのか気になるが、実はそれほど変わらない。

 今の季節、通常の試合の多くは出場枠が144人である。この中には推薦など出場優先順位とは別枠の選手も一定数いるが、126位前後はほぼ問題なく出場できる順位なのだ。

 しかも、通常の試合とは出場資格が異なるメジャーに関しても渋野は「2019年AIG全英女子オープン優勝」の資格で参戦可能。当面は試合に出場できるかどうかの心配はそれほどしなくてもいい。

ポイントランキング54位の西郷真央はリシャッフル後にカテゴリーが確実に上がる 写真:Getty Images

ポイントランキング54位の西郷真央はリシャッフル後にカテゴリーが確実に上がる 写真:Getty Images

 ただし、秋のアジアシリーズは出場枠がグッと絞られるからプレーするのは難しくなる。何より、PR100位にも入れないままシーズンを終えればQスクールに出るか、米国から撤退するかを迫られる状況に陥る。それだけは避けたい。

 メジャーについても「2019年AIG全英女子オープン優勝」の資格は5年で切れるから今季が最後。歴代優勝者の資格が60歳まで残る「AIG全英女子オープン」以外は自力で出場権をつかみ取るしかなくなってしまう。リシャッフルによる影響は少なくても、正念場を迎えていることには変わりない。

 つまり、第1回リシャッフルまでの2試合で早急に結果を出さなければならないというよりも、今季の残り試合でどれだけ復調してシードを取り戻せるかが大事になってくるわけだ。

 予選落ちが続いていた中、このところ「シェブロン選手権」「JMイーグルLA選手権」と2試合続けて初日の大きな出遅れから2日目に踏ん張って予選通過にこぎつけたことはひと筋の光明。思うようなゴルフができない中でも、粘って粘って予選をクリアすることの積み重ねが復調につながるはず。少しずつでもいい方向に進んでいると願いたい。

渋野 日向子(しぶの・ひなこ)

1998年生まれ、岡山県出身。2019年のAIG全英女子オープンでメジャー初制覇。同年は国内ツアーでも4勝をマークし、賞金ランキング2位と躍進した。2020-21シーズンは「スタンレーレディスゴルフトーナメント」「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」で勝利。22年からは米ツアーを主戦場としている。国内ツアー通算6勝。サントリー所属。

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