ドラフトを見ながら考えた、ノンプロがプロ野球に携わる可能性【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第137回

ノンプロがプロ野球に携わる可能性について語った山本キャスター


ノンプロがプロ野球に携わる可能性について語った山本キャスター

ドラフト会議が終わりました。我がヤクルトは1位で即戦力として期待の投手(中村優斗/愛知工業大)を獲得するなど、それぞれのチームの戦略が垣間見えて、来季への期待が高まるばかりですが、このシーズンになると野球ファンが「ドラフト指名されたらどうしよう」とボケ始めるのも風物詩ですね。でも、プロ野球に一度でいいから携わってみたい、その気持ちはわからなくないんです。

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今年の春、野球好きの間で『虎の血』(集英社)という本が話題になりました。著者はベイスターズのファンで、"文春野球コミッショナー"としても知られるライターの村瀬秀信さんです。

この本の主人公はタイガースの歴史上「最大のミステリー」とされた岸一郎氏。それまでプロ野球経験ゼロだった岸氏が、ある日突然タイガースの一軍監督に大抜擢されたのです。まったくの素人を招き入れたことからチームに不協和音が流れ、まるでドラマのようなエピソードが連続するのですが、これが実話だというから驚きです。

この話を知ったとき、私は驚きと同時に羨ましさを感じました。未経験でも憧れのプロ野球に携われる。それも監督として。こんな名誉でラッキーなことはないですよね。

高校野球の記録員もそうですが、現在ではプレーヤー以外もベンチに戦力として入ることができます。近年では、アナリストが有名かもしれません。メジャーでは何年も前から採用されているポジションで、主にデータなどを基にして、勝利への道筋を探ります。メジャーではその仕事は細分化され、多いチームでは30人以上が在籍しています。

今年のプロ野球のオープン戦では、DeNAで走塁強化を担当するアナリスト、佐竹学さんがベンチ入りしました。パ・リーグ出身の元選手(オリックス、楽天)とあって、パ・リーグの各球団を攻略するために三浦大輔監督がベンチ入りを決断したと言います。

ドラフトを見ながらなんだか泣けてきて、「ああ、私も歳を重ねたんだな」と思う、秋の夜長。


ドラフトを見ながらなんだか泣けてきて、「ああ、私も歳を重ねたんだな」と思う、秋の夜長。

プロ野球に関わるには、球団職員になるなどの選択肢がありますが、ベンチに入るとなると途端にハードルが上がります。では、どうしたらいいのか。

現実味はともかくとして「監督になる」というのはひとつの方法かもしれません。昔は、監督は一流選手がなるものと相場が決まっていましたが、現代では過去の実績よりも指導者としてのビジョンのほうが重要視されるようになってきました。監督のネームバリューではなく、プロらしく「勝ち」でチームの魅力を高めるということですね。

プロ経験がない監督やコーチはメジャーにも多くいて、プロでの実績よりも監督としてのビジョンをオーナーが重視して採用したのでしょう。ただ、こういったケースでは、結果が伴わないと現場からの反発が起こりやすいでしょうから、チームマネジメントにはとても気を遣うのだろうと想像できます。

日本の野球は上下関係が厳しいですから、一流選手だった監督には頭が上がらないこともあるでしょう。元一流選手だった監督は、そういう強みを活かして自分らしさを全面に出したチームマネジメントができます。しかし、前述のノンプロ出身の監督は、自分の理念を選手に共鳴してもらうしかないのです。

プロで実績を残したからといって、名指導者になるとは限らない。その逆もまた然りです。

2007年の日本シリーズで、完全試合目前だった山井大介投手からを岩瀬仁紀投手に継投した落合博満監督は選手出身の監督のなかでも特例かもしれませんが、プロでの実績がないからこそ勝利のためにリアリストに徹することができる可能性がある。そう考えると、いずれノンプロの方たちがこぞって監督に就任する時代が来るかもしれません。

さて、私が今から狙えるとしたら(本当に無理難題ですが)、ビジネスでひと山当ててからの球団経営でしょうか。でも、私が球団経営者になったら、現場に口を出してしまいそうだからな......

夢は尽きない。ドラフトを見ながらそんなことを考えた夜でした。それではまた。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

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