あらためて語り尽くす、ダルビッシュ有投手の偉大さ【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第136回

今回は「ダルビッシュ有」という偉大な選手についてお話しさせてください。

東北高校時代に甲子園で活躍したダルビッシュ投手は、2004年のドラフト1位で日本ハムに入団。2007年から5年連続開幕投手を務めるなど名実ともにチームの"顔"となり、海を渡ったのが2012年のことでした。ポスティングシステムで史上最高額となる5170万ドルで交渉権を得たのがテキサス・レンジャースです。

1年目は16勝を挙げ、翌2013年にはメジャー初となる最多奪三振のタイトルを獲得。その後、ロサンゼルス・ドジャースを経て2018年にシカゴ・カブスに移籍すると、2020年には日本人選手初の最多勝を獲得しました。2021年にサンディエゴ・パドレスに移籍した後も活躍を続けているのは周知の通りです。

日本での活躍も素晴らしかったですが、今ではすっかりメジャーリーガーとしての印象が強くなりましたね。メジャーでプレーを始めてから13年。38歳になった今も、プロとして圧倒的な存在感を放ち続けています。

ダルビッシュ投手がどれだけすごくて、偉大な選手なのか。みなさんもご存知かとは思いますが、あらためて登板試合のピッチングをじっくり見ると、「すごいな〜」と声を上げてしまいます。

唯一無二にして世界一なんじゃないかと思うのがスライダーとカーブ。そして、変化球の質の高さ以上に特筆すべきは、「相手打者がどうしたら嫌がるか」を熟知していることです。

かつてダルビッシュ投手は、あるインタビューで「自分のピッチングを空の上から俯瞰で見ている」という発言をしていました。"神の視点"で、お釈迦さまのように相手打者のことも手のひらの上で転がしているのかもしれません。

ダルビッシュ投手は、変幻自在なスタイルも魅力のひとつです。試合によって、速球を中心に組み立てたり、プレーオフのドジャース戦(現地時間10月11日)のように変化球主体でゴロの山を築いたりと、試合によってまったく違う投手になったかのような引き出しがあるんです。だから登板する試合は「今日はどのダルビッシュ投手かな」とワクワクするんですよね。

私の野球観戦の師匠・父親も、大の「ダルビッシュファン」のひとり。


私の野球観戦の師匠・父親も、大の「ダルビッシュファン」のひとり。

さらなる魅力は、投球がストーリーになっていることです。変化球主体だったドジャース戦でも、一球のストレートが次への布石になっていたり。自分の投球で試合を"物語"にして、その中の1場面を演じる。そうとさえ思えるのです。同じ球種でも、球速や曲がり幅なども変えて投げ分けるので、相手からしたらどんな球がくるのかまったく想像がつかないのではないでしょうか。

たくさんの日本人選手が海を渡っている今、完全にメジャーリーグは日常生活の中に定着しました。一方で、私のような熱心なファンは別として、すべての選手の活躍を追うことが難しくなったかもしれません。

ただ、そんな方にこそ、ダルビッシュ投手の投球を1試合通して見ていただきたいです。例えるならば、パワフルプロ野球ですべてがSクラスの選手。速球派でもあり、技巧派でもある。速球でストライクを取れて、変化球で相手を翻弄することもできる。

メジャーで特別な選手のひとりと認められていて、強豪パドレスの中でもリーダー格。2年前には、パドレスの選手たちが歩くダルビッシュ投手の後ろについて、その所作をマネするイタズラを仕掛けたことがSNSで話題になりましたね。ダルビッシュ投手に対するチームメイトの深いリスペクトを感じました。

私の周囲にいる熱心な野球ファンは、もれなくダルビッシュ投手が大好きです。番組でご一緒していた黒木知宏さんも、"ダルビッシュ愛"に溢れたひとり。黒木さん曰く、「変化球、まっすぐ、配球、プロとしてのありかた、すべてが超一流です」とのこと。自身も一流の投手だった黒木さんが、ダルビッシュ投手について語る時だけ少し早口で声が高くなるのを見るたび、その偉大さを痛感するのです。

大谷選手が注目を集めるのはもちろんですが、あらためてダルビッシュ投手のすごさも再確認しよう、というお話でした。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

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