大会方式を一新したACLに、セルジオ越後「残念だけど、Jリーグ勢にとってはこれまで以上に参加するメリットを見いだしにくい大会になった」

「かつて優勝した浦和、G大阪、鹿島のように、過酷なACLを勝ち上がることでしか見えない景色はあった。でも、今回の大会方式の変更は大いに疑問だ」


「かつて優勝した浦和、G大阪、鹿島のように、過酷なACLを勝ち上がることでしか見えない景色はあった。でも、今回の大会方式の変更は大いに疑問だ」

今季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が始まった。

開幕節では前回準優勝の横浜FMが光州(韓国)3-7と大敗を喫した。アウェーでメンバーも落としていたとはいえ、さすがにちょっと情けない。

まあ、それはそれとして、そもそも今季からACLの大会方式が変わったことに気がついている人は、どれだけいるだろう。

まず、最も大きな変化は、大会をACLエリート(ACLE)、ACL2 AFCチャレンジリーグという3つのカテゴリーに分けたこと。Jリーグ勢はその最高峰であるACLEに神戸、横浜FM、川崎の3チームが出場。その下のACL2に広島が挑んでいる。

ACLEは24チームを12チームずつ東地区と西地区のリーグに分け、各リーグ内でホーム4試合、アウェー4試合を行ない、それぞれ上位8チームがノックアウトステージに進むというもの(同国チームとの対戦はナシ)

また、ノックアウトステージは、ラウンド16で同地区内でのホームアンドアウェー、準々決勝からは東西をまたいでの対戦となり、今季はサウジアラビアでのセントラル方式(集中開催)で決勝まで行なわれる。

本家の欧州チャンピオンズリーグも今季から大会方式を一新していて、ACLも一部をマネしたわけだけど、率直に言ってわかりにくいね。

そもそもヨーロッパとアジアとではサッカーの歴史、レベル、人気、地理とすべて違うのに、同じようにやろうというのは無理がある。

加えて、露骨な中東びいきだ。準々決勝からのセントラル方式はどう考えても地元のサウジが有利。一方、Jリーグ勢からすると、苦労して勝ち上がっても地元で試合ができず、ライトなファンを盛り上がりに巻き込みにくい。

また、外国人枠の完全撤廃というのも、国内リーグの外国人枠が10人もあるサウジに有利なルールだ(Jリーグは最大5)

そのうち慣れるといわれても、どうせまた中東勢にとって都合の良いようにルールが変わると思う。

中でもサウジは2034W杯を招致すべく、国を挙げてサッカーに投資している。準々決勝以降のサウジでのセントラル方式というのは、ヘタをすると来季以降も固定されるかもしれない。そして、残念なことに、日本にも韓国にも中国にも、今のサウジに対抗できるお金も政治力もない。

かつて浦和やG大阪、鹿島が優勝したときは大いに盛り上がったし、昨季も横浜FMが頑張って決勝まで進んだ。過酷なACLを勝ち上がることでしか見えない景色はあった。

でも、今回の大会方式の変更に伴い、Jリーグ勢からすれば、これまで以上に参加するメリットを見いだしにくい大会になった。グループリーグの試合数が増えたことでさらなる過密日程を強いられ、勝ち上がる難易度も高くなり、それでいて注目度は低いまま。

そういう状況をサポーターもわかっているから、ACLで負けても選手や監督への批判は少ない。横浜FMに限らず、Jリーグの試合を優先してメンバーを落とすのも当然。どちらが大事かといったら、Jリーグになるからね。出場権を獲得できなかったチームにしても、嫉妬するどころかホッとしているんじゃないかな。

アジアの頂点を決める大会に魅力がなければ、良くも悪くも、Jリーグの若手が次々とヨーロッパに渡る流れはますます加速しそうだね。

構成/渡辺達也

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