今年のセントライト記念は波乱の予感...ひと夏越して成長した素質馬2頭の一発に期待

 3歳牡牝の三冠レース最終戦に向けて、重要なステップレースが開催される今週。関東では、GI菊花賞(10月20日/京都・芝3000m)のトライアル戦となるGIIセントライト記念(9月16日/中山・芝2200m)が行なわれる。

 過去10年の成績を見ると、1番人気は3勝、2着5回。比較的安定した成績を残しており、重賞のなかでも堅いレースのひとつと言える。実際、1番人気以外の上位人気馬も大崩れが少なく、3連単の配当は過去10年の半分が1万円割れ。直近2年も1~3番人気が上位を独占し、低配当の決着となっている。

 それでも、時に波乱も起こる。2015年、2021年には人気薄の伏兵馬が勝利を飾って、3連単では60万円超え、30万円超えという高額配当が飛び出している。

 はたして、今年は「堅い」のか「荒れる」のか。スポーツ報知の坂本達洋記者は出走メンバーを見渡して、こんな見解を示す。

「GI皐月賞(4月14日/中山・芝2000m)の2着馬で、前走のGI日本ダービー(5月26日/東京・芝2400m)でも6着と健闘したコスモキュランダ(牡3歳)が人気を集めそうで、今年も王道路線組が中心といった感じでしょうか。

 過去10年の結果を振り返っても、前走ダービー組が5勝。昨年2着のソールオリエンス、3着のシャザーンもダービーからの臨戦で、2、3着馬も春のクラシック参戦組が多く、実績上位の馬は外せないと思います」

 とはいえ、今年は実績馬にも「つけ入る隙がある」と坂本記者は言う。

「コスモキュランダをはじめ、エコロヴァルツ(牡3歳)、アーバンシック(牡3歳)と、今年は前走ダービー組が3頭エントリーし、いずれも上位人気になりそうですが、これらの目標はあくまでもこの先。ここは叩き台といった印象が強いです。

 そうなると、本賞金900万以下で、ここで菊花賞出走の権利獲得を目指す馬、あるいは今後へ向けて賞金を加算したい馬に目が行きます。昨年の勝ち馬レーベンスティールも、前走のGIIIラジオNIKKEI賞(福島・芝1800m)で3着と賞金を加算できず、2勝馬の立場でしたからね。やはり、馬券的にはこの一戦での勝負度合いが強い馬を買いたいところです」

 そうして、坂本記者は激走が期待できる伏兵2頭をピックアップした。1頭目は、ヤマニンアドホック(牡3歳)だ。

「昨年の勝ち馬レーベンスティールにあやかって、ラジオNIKKEI賞(6月30日)3着馬を推すわけではないのですが、同馬のことは妙味あふれる"上り馬"として狙いたい1頭です。ここまでキャリア5戦で一度も馬券圏内(3着以内)を外したことがなく、相手なりに走れる能力の高さはもちろん、持ち前の体力を生かしたタフな走りが目を引きます。


セントライト記念での一発が期待されるヤマニンアドホック photo by Sankei Visual

 前走のラジオNIKKEI賞では、メイショウヨゾラが前半1000mを58秒4というハイペースで飛ばすなかにあって、道中行きたがる面をのぞかせるなど、折り合いに苦労していました。その分、ロスが多いように感じましたが、直線では内から脚を伸ばして、勝ち馬からコンマ2秒差の3着を確保。地力の高さを示したと思います。

 管理する辻哲英調教師も、『(前走では)力のあるところを見せてくれたと思います』と評価していました。

 この中間は、調教から折り合いを意識して取り組んできたそうで、『角馬場から坂路やウッドチップコースに向かう間もしっかり歩けるようになって、成長を感じます』と辻調教師。精神面での成長を遂げているのは頼もしい限りです。

 2走前の1勝クラス・山藤賞(4月13日/中山・芝2000m)は、確勝を期して逃げる作戦を選択したそうですが、今回は好位から中団に構えて、早めに持久力勝負に出ていく形で上位争いに加わっていく可能性は十分にあります。

 1週前追い切りに騎乗した主戦の津村明秀騎手の感触も上々だったのこと。ひと夏越して一段とパワーアップしたとなれば、波乱の使者となってもおかしくないでしょう」

 坂本記者が推奨するもう1頭は、ルカランフィースト(牡3歳)だ。

「セントライト記念の過去の勝ち馬で印象に残っているのは、2017年の覇者ミッキースワロー。菊沢隆徳調教師がデビュー前から、その素質を高く評価していた1頭です。ダービー切符を狙ったGII京都新聞杯は5着、その後の1000万下(現2勝クラス)・いわき特別も3着に終わりましたが、セントライト記念ではテン乗りでベテラン横山典弘騎手が騎乗。鮮やかな手綱さばきによって勝利し、同馬の実力を出しきっての結果だったと言えます。

 このミッキースワローのように、秘める能力は高くても春先にはその能力をうまく出しきれず出世できなかった馬が、セントライト記念で存在感を示すことが多いです。2年前の勝ち馬ガイアフォースも初勝利が3月で、春のクラシック路線には間に合いませんでしたが、セントライト記念では秘めた能力を存分に発揮して快勝しました。

 ルカランフィーストも、早くから素質の高さを評価されていた1頭。春は、GIIスプリングS(3月17日/中山・芝1800m)3着と優先出走権をつかんで皐月賞まで駒を進めましたが、同レースでは後方からの追い上げが及ばず、8着に終わりました。

 それでも、勝ったジャスティンミラノが中山・芝2000mのコースレコード(当時)となる、1分57秒1をマークした超高速決着を経験しているのは強み。昨年10月、新馬戦(東京・芝1800m)を勝った際も、メンバー最速の上がり33秒6をマークするなど、時計の速い決着には対応可能とみます。

 先週の秋華賞トライアル、GII紫苑S(9月7日/中山・芝2000m)では、皐月賞を上回るレコードタイムが飛び出し、開幕したばかりの中山は高速決着が顕著です。そうした馬場にも対応可能な素質馬が、夏の休養期間にじっくりと成長を促されて一変していれば......一発のチャンスは大いにあると思います」

 セントライト記念は春の実績馬が強いレースとはいえ、もともと期待されていた馬がその才能を開花する一戦でもある。今年は、ここに名前の挙がった2頭が真価を発揮するのか、注目である。

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