「3歳牡馬ランキング」ダービーで有力視される世代最強馬のすごさとは?

「三冠」初戦のGI皐月賞(4月14日/中山・芝2000m)は、デビュー2連勝中の2番人気ジャスティンミラノ(牡3歳/父キズナ)が1分57秒1のコースレコードをマークして快勝。無敗の皐月賞馬となった。


無傷の3連勝で皐月賞を制したジャスティンミラノ photo by Kyodo News

 一方で、牝馬ながら1番人気に推されたレガレイラ(牝3歳/父スワーヴリチャード)は、後方からメンバー最速タイの上がりをマークして追い上げるも6着。歴史的な快挙達成はならなかった。

 その皐月賞のあと、続くGI日本ダービー(5月26日/東京・芝2400m)のトライアル戦では、GII青葉賞(4月27日/東京・芝2400m)をシュガークン(牡3歳/父ドゥラメンテ)が勝利し、GII京都新聞杯(5月4日/京都・芝2200m)をジューンテイク(牡3歳/父キズナ)が、リステッド競走のプリンシパルS(5月4日/東京・芝2000m)をダノンエアズロック(牡3歳/父モーリス)が勝って、それぞれ大一番への切符を手にした。

 こうしてメンバーが出そろった競馬界最高峰の舞台。今週末、いよいよ決戦の時を迎える。そこで、同舞台に臨む3歳牡馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』をここで発表したい。なお今回も、ダービーに出走予定のレガレイラは3歳牡馬ランキングの対象馬とした。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、JRAのホームページでも重賞データ分析を寄稿する競馬評論家の伊吹雅也氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、日本ダービーに挑む3歳牡馬の実力・能力を分析しランクづけ。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。

 1位は、激戦の皐月賞を制して一冠目を獲得したジャスティンミラノ。前回3位からトップへ浮上。ほぼ満点の24ポイントを得て、ダービーでも本命視されることは間違いない。

吉田順一氏(デイリー馬三郎
「キズナ産駒らしく、腹袋が大きく筋肉量の多いシルエット。ただ、父とは違ってつなぎは短めでクッションがあり、キレ味よりは持続力を生かすタイプに見えます。

 新馬戦(11月18日/東京・芝2000m)とGIII共同通信杯(2月11日/東京・芝1800m)は、スローペースを道中2番手で運んで、直線ではしっかりとギアを上げて速い上がりをマークして勝利。いずれも正味3ハロンの競馬で、皐月賞前には速い流れの競馬に対する不安が囁かれていました。

 しかし、それまでに経験していない前に引っ張られるペースとなった皐月賞でも、好位追走から快勝。勝負どころや直線前半では3着ジャンタルマンタルよりも手応えは怪しかったものの、追われて粘っこく伸びるあたりは、この馬の資質の高さでしょう。体型や走法からすれば、タフな舞台のほうがよりパフォーマンスが上がる印象を受けました。

 ダービーでもレースの流れに対して、ポジションと仕掛けるポイントを間違わなければ、崩れるシーンはなさそう。折り合いも不問で、二冠達成の可能性は比較的高いと見ます」

伊吹雅也氏(競馬評論家)
「5月5日終了時点の本賞金は2億4820万円で、JRAに所属する現3歳世代の馬としては、ジャンタルマンタル(3億1120万円)に次ぐ単独2位。ただし、一走あたりの賞金は8273万円で、2位のジャンタルマンタル(5186万円)を大きく引き離しての断然トップとなっています。出走レース数のわりに獲得賞金額が多い、伸びしろのある実績馬です。

 近年のダービーは、皐月賞、GII弥生賞(中山・芝2000m)、GIホープフルS(中山・芝2000m)で好走したことのある馬が堅実。2019年以降に限ると、中山・芝2000mのGIかGIIにおいて3着以内となった経験がある馬は、1着3回、2着5回、3着4回、着外16回で、3着内率が42.9%に達しています。この馬自身の戦績からも、コース替わりはまったく問題ないはず。これといった不安要素は見当たりません」

 2位に入ったのは、コスモキュランダ(牡3歳/父アルアイン)。皐月賞で7番人気ながら2着となって、一気に上位でのランク入りとなった。弥生賞1着→皐月賞2着というのは、昨年のダービー馬タスティエーラと同じパターンで、同馬への注目度は日に日に増している。

木南友輔氏(日刊スポーツ
「デビュー前から加藤士津八調教師の評価は高かったのですが、軌道に乗るまではなかなかレースで能力を発揮できませんでした。それが3歳春を迎えて、弥生賞(3月3日)1着、皐月賞2着。レースでのパフォーマンスをここまで上げてきたのは、厩舎の力だと思います。

 母サザンスピードは、オーストラリアの中距離GIコーフィールドC(コーフィールド・芝2400m)の覇者。血統的には、距離延長となる2400m戦は好都合でしょう」

土屋真光氏(フリーライター)
「相手なりに、というよりは、強い相手と対戦するほど真価を発揮するタイプでしょう。弥生賞の走りは奇襲のように映りましたが、最後まで脚が上がらずに押しきった内容は秀逸。それを思えば、皐月賞での走りも納得できるものでした。

 父アルアインは2000mがベストも、アルアインの全弟シャフリヤールはダービー、海外GIのドバイシーマクラシック(メイダン・芝2410m)を制覇。その血筋からして、距離延長も問題ないと見ています」

 3位は、前回1位のレガレイラ。皐月賞で6着に敗れて評価を下げた。それでも、2007年のウオッカ以来となる、牝馬によるダービー制覇なるか、注目されている。

吉田氏
「つなぎは少し短めですが、クッションが抜群。回転の速いピッチ走法で、速い脚が使えるタイプです。

 主戦のクリストフ・ルメール騎手がドバイでの落馬負傷によって、皐月賞は当週までジョッキーが決まらず、最終的には1週前の追い切りに騎乗した北村宏司騎手に決定。迎えた本番、ホープフルS(12月28日)のイメージで騎乗した印象で、慎重にレースを進めていましたが、時計の速い馬場だったため、後方からでは厳しかったようです。

 ダービーの鞍上はルメール騎手に戻りますが、ここ2走のような競馬で勝てるほどダービーは甘くなく、ポジションやコース取りなどは綿密に対策を練ってくることでしょう。それによって、馬群から一瞬の決め脚を発揮できるような乗り方ができれば、まとめて面倒を見るシーンがあっても不思議ではありません」

 4位には、アーバンシック(牡3歳/父スワーヴリチャード)が入った。皐月賞では後方から追い込んで4着と善戦。前回5位からひとつ順位を上げた。重賞勝ちこそないものの、ダービーでの下馬評は決して低くはない。

土屋氏
「ストライドの大きい走法から、中山ではどうしてもコーナーで後手に回りがち。勝負が決してから飛んでくるようなレースぶりが続いています。しかし、広い東京コースに替われば、この走法がおあつらえ向きになるのでは? と踏んでいます。

 また、ダービーでは、直線で(馬群が)内外にバラけやすいです。進路を正しく導くことができれば、一気に突き抜けるだけの力はあるはずです」

 5位は2頭。皐月賞で5着だったシンエンペラー(牡3歳/父シユーニ)と、皐月賞をスキップしてダービーに挑むシックスペンス(牡3歳/父キズナ)が入った。

本誌競馬班
「シンエンペラーは、皐月賞は5着に敗れるも、これまで大きく崩れていない点を評価しました。凱旋門賞馬を兄に持つ血統からして、東京・芝2400mという舞台は悪くないでしょう。

 シックスペンスについては、皐月賞組と未対戦という点に魅力を感じます。皐月賞でレコード勝ちしたジャスティンミラノの逆転候補は、この馬以外には考えられません。再来年で定年を迎える国枝栄調教師が悲願のダービー制覇なるか、注目です」

 世代の最強馬を決するダービー。ジャスティンミラノが無敗のまま戴冠を遂げるのか。あるいは、逆襲を期すライバルたちが頂点に立つのか。熾烈な争いから目が離せない。

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