九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」

連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)

 1年の納めの場所となる九州場所。NHK大相撲中継に映る向正面の溜席に、力士が着ている四股名入りの浴衣をワンピースなどに仕立てて観戦する女性がいる。しかも、15日間を通して違う四股名の浴衣地の洋服で登場すると注目されているのだ。

【写真】溜席のワンピース女性がジェラートピケの浴衣地をワンピースに仕立てて観戦。クリーム地の着物姿の「溜席の着物美人」も登場した

 話を聞けば、宮崎在住で九州場所中は博多で15日間泊まり込みだという。九州場所の向正面の溜席では、控え行司の隣で15日間、毎日違う着物で皆勤する「溜席の着物美人」が話題となるのが恒例だが、力士の四股名が入った浴衣地をワンピースに仕立てるこちらの女性もなかなか個性的だ。

 打ち出し後にこの「四股名入りワンピース女性」に話を聞いた。「私はただ、好きな力士を応援しているだけなので……」と遠慮がちだったが、質問を重ね、四股名入りの洋服を見せてほしいとお願いすると、場所前に出来上がってきた洋服の写真を見せてくれた。どのようなきっかけで四股名が入った浴衣地で作った洋服で応援するようになったのか、本人に聞いた。

「応援していた豊山関の浴衣地で洋服を仕立てて、九州場所で着たのが最初でした。

 最初の頃は手に入れた浴衣地で主人や私の浴衣を作っていたんですが、九州場所は冬なので本場所中に浴衣を着ることができない。そこで私のワンピースを浴衣地で作って重ね着して観戦しようと考えて、豊山関に“(この浴衣地で)ワンピースを作って応援に行っていいですか”と聞いたところ、“恥ずかしくなければいいですよ”と言ってくれたので、私がデザインして洋裁の先生に仕立ててもらったんです。

 基本的には相撲は着物で観戦していたのですが、ファンだった若隆景関の浴衣地を手に入れたのをきっかけに、いろんな関取の浴衣地でワンピースを作るようになった。少しずつ、浴衣地の洋服を着て観戦する回数が増えていきました。毎年、2~5着は仕立てており、今は20着以上あります。

 仕立てが上がってきたばかりですが、四股名だけでなく部屋の名前が入っている浴衣地も着ようかなと思っています。現役時代から応援している元横綱・鶴竜の音羽山部屋のワンピースで、すかいらーくのキャラクターが綱を締めたイラスト入りなんです。すごくかわいいですよ」

普段着ていても「恥ずかしくない」

 これまで、若元春、阿炎、北勝富士、遠藤、大栄翔などの四股名の洋服を着ての応援をしているし、今場所も引退した貴景勝はじめ、若元春、正代、若隆景、霧島、錦木、翔猿の洋服で登場しているが、こんな胸中を明かした。

「鶴竜関や貴景勝関のように親方になっても応援したい関取はいます。昨年も今年も初日は貴景勝関を着ましたが、来年も初日に貴景勝関の四股名を着ているかもしれません」(同前)

 同じ場所中に同じ浴衣地のワンピースを着ることはないという。

「クリーニングに出して翌年の九州場所で着ます。スーパーなどに行く時に着ることもあるし、子供の参観日に白鵬関(現・宮城野親方)のワンピースを着て行くと周りのお父さんやお母さんが驚かれていました(笑)。

 子供が“よくジェラートピケが着れるよね。恥ずかしくないの”と言うんですが、四股名が入っていると恥ずかしくないんです。特に引退された貴景勝関のジェラートピケで作った洋服は、普段も着たい。それで実用性があるデザインにしたんです。この生地は浴衣地ではなくて洋服生地で少し厚手なんですよね。仮縫いを何度もしたので時間はかかりましたが、素晴らしい洋服ができました。本場所の会場ではやさしく声を掛けてくださる方がいるなど、新たな交流があります。これも関取がつないでくださったご縁だと思って感謝しています」(同前)

 土俵では熱戦が続くが、桟敷に座る熱い女性たちも注目を集める日々が続きそうだ。

 
 

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