【「大尊時代」へ】十両優勝の尊富士に「再入幕」の可能性浮上 大の里との学生時代の実績の比較、直接対決の結果から何が見えるか

「大尊時代」の到来へ(左から大の里、尊富士。時事通信フォト)

 幕内で関脇・大の里が優勝し、十両では西11枚目の尊富士が優勝。大相撲は「大尊時代」に突入するのか。関係者の間でも注目を集めるようになってきたが、読みとしてはパワフルな吸引力の掃除機と同じ“だいそん”ではなく“たいそん”だという。角界のライバルといえば大鵬と柏戸の「柏鵬(はくほう)時代」、輪島と北の湖の「輪湖(りんこ)時代」、北の富士と玉ノ海の「北玉(きたたま)時代」、古くは栃錦と初代若乃花の「栃若(とちわか)時代」などが知られている。

【写真】秋場所の向正面に「溜席の着物美人」が…! 盛夏に着る薄物で観戦していた

 昔からライバルが出現することで高い人気や歴史的な記録が生まれてきた。令和の大相撲で注目される大の里と尊富士。2人は学生相撲出身だが、尊富士は大の里のライバルになりうるのだろうか。

貴景勝も引退して幕内の枠が空き、再入幕の可能性が

 幕内と十両との違いはあるが、秋場所はともに13勝2敗で優勝。尊富士は今年3月場所で110年ぶりとなる新入幕(幕尻)優勝を飾っている。大の里にもできなかった快挙だったが、優勝を決めた3月場所千秋楽に右足首のケガを抱えながら強行出場したことで、翌5月場所を全休。復帰をかけた7月場所前の稽古場でも左大胸筋をケガして休場したため、十両下位まで番付を下げていた。担当記者が言う。

「秋場所は十両西11枚目で13勝したことで再入幕になる可能性が出てきた。幕内から十両に転落するのは白熊、北の若、武将山、金峰山などで、貴景勝が引退したことで4~5枠は十両から上がることができそうだ。

 十両は勝ち越している力士が少なく、東筆頭の千代翔馬(10勝5敗)、2枚目の時疾風(9勝6敗)と獅司(9勝6敗)、東8枚目の朝紅龍(11勝4敗)に続くのが尊富士(13勝2敗)となる。来場所は尊富士の再入幕の可能性がでてきた」

学生時代の直接対決は尊富士に軍配

 尊富士が優勝した3月場所では、10日目に大の里と全勝同士で対戦している。ともに髪の伸びるスピードが出世に追いつかず、チョンマゲの尊富士とザンバラの大の里の一番だったが、右ハズで押し上げながらもろ差しとなった尊富士が押し出しで快勝している。相撲ジャーナリストが言う。

「鳥取城北高から日大に進んだ尊富士に対し、1学年下の大の里は海洋高から日体大に進んだ。高校時代は団体戦で対戦しているが、個人での直接対決は全日本大学選抜相撲。日大2年の尊富士が日体大1年の大の里を突き落としで破っている。

 ただ、大の里は2年連続でアマ横綱のタイトルを手にして幕下10枚目格付け出しデビューしているが、尊富士はタイトルを手にできず前相撲からスタート。序ノ口、序二段、三段目、十両とすべて1場所で通過したが、幕下では通過に4場所を要した。そのため新入幕は大の里に先を越されることになった。ただ、先に幕内最高優勝を果たしたのは苦労人の尊富士。ケガを乗り越えれば大の里を脅かす存在になることは間違いない」

 大の里と尊富士の記録で際立つのが通算成績の勝率である。史上最多の幕内優勝回数を数える横綱・白鵬(現・宮城野親方)の通算勝率は.828(121場所)、“平成の大横綱”と呼ばれた貴乃花は.752(90場所)。キャリアはまだまだ浅いが、大の里は通算9場所で.756、尊富士は13場所で.866という高い数字をマークしている。

 大の里と尊富士を中心に世代交代が進む角界。大の里と同じ2000年度生まれの力士には平戸海、阿武剋、北の若などがいて、尊富士と同じ1999年度生まれには豊昇龍、王鵬、白熊、狼雅、琴勝峰がいる。大の里のさらに下の世代には熱海富士や伯桜鵬などが控える。「大尊時代」の新たな角界の景色は、今とは大きく違ったものになりそうだ。

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