十両復帰決めた木竜皇 火をつけた兄弟子・豊昇龍の喝「もう幕下のつもりなのか?」…大相撲担当記者コラム

九州場所は幕下で奮闘した木竜皇(右)。黒まわしを締めて稽古に励んでいた(カメラ・大西 健太)

 日本相撲協会は27日、福岡市内で大相撲初場所(来年1月12日初日・両国国技館)の番付編成会議を開き、十両昇進力士を決めた。木竜皇(きりゅうこう、立浪)は2場所ぶりの十両復帰となった。九州場所を東幕下2枚目で迎え5勝2敗。その裏には兄弟子の大関・豊昇龍の“喝”があった。

 秋場所で新十両だった木竜皇は4勝11敗と大きく負け越し、幕下転落が確実になった。大きく肩を落とし、場所後の稽古で関取(十両以上)がつける白まわしでなく、黒まわしで稽古場に現れた。その姿を見た豊昇龍に「九州場所の番付発表前なのに、もう幕下のつもりなのか? そういうのは相撲に出るんだぞ」と雷を落とされた。

 大関はさらに続けた。「すぐ十両に戻ってやるという気持ちでいけ」。木竜皇は「大関になるだけあって負けん気が強い」と目が覚めた。秋場所後の十両昇進パーティーが開かれた。お祝いの席にも関わらず、幕下転落が確実だったため後ろめたさもあった。それでも多くの出席者に励まされ「期待に応えたい、恩返しなくてはいけないと思った」。十両・琴栄峰(佐渡ケ嶽)との七番相撲では低く当たり、右四つとなり得意の寄りで5勝目。格上相手に圧巻の相撲で寄り切り。苦しんだ秋場所の姿はなかった。

 元幕内・時津海の長男。父はかつての時津風親方で、自宅が相撲部屋。自然と相撲を始め、小学生時代は元大関・正代とも一緒に生活。青森・三本木農高で主将を務めた。当初は時津風部屋に入る予定だったが、父は日本相撲協会を退職していた。色々悩み見学した末に「親方や兄弟子の雰囲気がよかった」と豊昇龍のいる立浪部屋入門。22年夏場所の初土俵から昨年夏場所で幕下優勝。豊昇龍の背中を追い順調に出世を重ねた。

 名古屋場所後の十両昇進会見では連絡をしたことを明かし「喜んでいた」と言い、父から「でもまだこれから。15日間の相撲になるし大変なことはたくさんある」と言われた。小さい頃から相撲を始めるきっかけを作ってくれ、「ずっと背中を見て育った」。新十両だった秋場所中も時折連絡をくれた。「親父を超えるのが恩返し」と話しており、再び“スタートライン”に立てたことに喜んでいるはずだ。回り道で一皮むけた22歳。兄弟子と父の思いを背負う22歳。大きな飛躍を期待したい。

(大相撲担当・山田 豊)

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