大の里の現在地、腰が浮くと引き出しに何もない……元大関・琴風の目

大栄翔(左)の寄りに後退する大の里(カメラ・今西 淳)

◆大相撲九州場所10日目(19日・福岡国際センター)

 新大関・大の里が痛恨の3敗目を喫した。関脇・大栄翔に寄り切りで完敗し、トップとは2差がついた。1場所15日制が定着した1949年夏場所以降の新大関優勝力士で、10日目までに3敗した例はない。2006年夏場所の白鵬以来、史上9人目の偉業に向け“黄信号”がともった。

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 大の里はガムシャラ過ぎたのかもしれない。立ち合いは体当たりで押し込んだ。右は差せなかったものの右のおっつけで前に出たが、腰が高かった。そこを下半身が崩れなかった大栄翔にもろ差しを許した。土俵際の突き落としも空振りに終わって3敗目を喫した。

 ポイントは肩越しに取った右上手だ。例えるなら2階から取るような形になったので深くなって余計に腰が浮いてしまった。こうなると引き出しに何もないのが大の里の現在地。右上手を浅く取り直して左からおっつければ違う風景になっていたかもしれない。これは稽古で習得できるものではない。負けて覚えてこそ瞬時に動くことができるのだ。「負けて覚える相撲かな」。いい勉強になったと気持ちを切り替えた方がいい。

 好調な豊昇龍、負けない琴桜との2差は痛い。だがチャンスがないわけではない。逆に追う立場の大の里もまた楽しみである。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)

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